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今回は、当場生産馬でターファイトクラブ提供馬のクロワラモーの2016を紹介させて頂きます。
本馬は、10月中旬に育成場のフジワラファームへ移動しました。
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10月末時点の報告では放牧しながら環境に慣れさせていくということでしたが、10月上旬に募集馬ツアーで静内の北海道市場へ行ったときもそれほど戸惑ってはいなかったので、早い段階で育成場に慣れてくれるかもしれません。
募集馬ツアーの際に、市場内に設置されている馬体重計に乗せたところ512kgありましたが、この時期の牝馬としては十分な馬格だと言えるでしょう。
父のダンカークも馬格のある種牡馬で、その本邦初年度産駒である現1歳馬たちがセールで高く評価されていたように、産駒はクロワラモーの2016に限らず全体に立派な馬が多い印象です。
クロワラモーの2016に関して言えば、首や胴あるいは脚の長さや比率から父似の印象を与えます。
幼少時は当歳とはいえ脚長の雰囲気で、もしかすると母父のスペシャルウィークの馬体が出たのかなとも思いましたが、周囲から聞いたところではダンカーク産駒はそういう感じが多いとのことでした。
1歳になってからの成長ぶりを見て最近思うのは、こういう風に馬格のある馬に成長するから当歳時から脚長だったのかなと感じています。
母のクロワラモーはスペシャルウィーク産駒であるものの、スペシャルウィークの馬体の伸びというよりはマイラー体型に近い印象。
クロワラモーの2016に関しては毛色こそ母や母父と同じですが、母とはまた違ったタイプの馬体なので、やはり父似なのでしょう。
初めて試した配合なので、この先どのような成長を見せるかはまだわかりませんが、現時点の馬格だけ見ても競走馬として楽しみな馬です。
ここからは、クロワラモーの2016の血統について触れていきます。
父のダンカークは、血統的にはサンデーサイレンスはもちろんNorthern Dancerも持たないという種牡馬です。
一方で、Mr.Prospector≒Alydarの相似クロスを持っているのが特徴的です。
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この2つの血は、父がRaise a Nativeであり、母父がNasrullah系である点で共通しています。
ダンカークは米国で種牡馬入りして新種牡馬チャンピオンを獲得した後、現在は浦河のイーストスタッドで供用中です。
米国ではG1勝ち馬Havanaをはじめステークス勝ち馬を複数送り出していますが、日本でもフォンタネットポーとキープアットベイが中央で勝ち上がっています。
産駒の血統傾向としては、Mr.Prospectorクロスを持つことでダンカークのMr.Prospector≒Alydarを活かす配合か、もしくはダンカークの母父A.P.Indyが強く持つNasrullah/Princequilloのニックスを活かす配合が成功している印象です。
フォンタネットポーとキープアットベイに関しては、どちらも母父がMr.Greeleyですが、この血にはMr.ProspectorとSecretariatが含まれています。
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Secretariatは、Nasrullah/Princequilloのニックスから成る血統なので、Mr.Greeleyの血が入るだけで血統的にダンカークと相性が良くなる可能性があります。
母のクロワラモーは中央で3勝して、そのうち特別を2勝してくれました。
芝1200~1700を得意としたように、馬体的にも成績的にも芝のマイラータイプだったと思います。
クロワラモーの血統では、Nijinsky≒Storm Birdを意識して配合しました。
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どちらも父がNorthern Dancerであり、母父はBull Page系という点で共通しています。
この血統パターンは個人的に好きで、ターファイトクラブ提供馬の本馬やアルレガーロの2017、あるいはローレルクラブ提供馬のダンケシェーンやオーシャンフリートの2016にも用いている配合手法です。
スペシャルウィークに関しては種牡馬シンジケートに参加していましたが、馬体的にも血統的にも気に入っていて、特に彼が持つHyperion×Nearco(あるいはその父Pharos)の組み合わせから成る血は上手く活かしたいと思っていました。
具体的にはNearcticやセントクレスピン、あるいはGulf Streamといった血脈です。
Hyperion×Nearcoの組み合わせを持つ血と言えば、Northern Dancerの父であるNearcticやトニービンの母父Hornbeam、そして名牝Specialの名前が真っ先に浮かびます。
そういう観点からすると、スペシャルウィークはNorthern Dancer×Specialの組み合わせを持つNureyevやSadler's Wellsの血が入っている繁殖牝馬と血統的に相性が良いはずだと思っていました。
Nureyevの血を持つメジェールにスペシャルウィークを配合したのには、そういう経緯もあります。
実際、スペシャルウィークはNureyevを持つ牝馬との配合から菊花賞馬トーホウジャッカルを、またSadler's Wells牝馬との配合からは名牝シーザリオを送り出しています。
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クロワラモー自身は、Northern Dancerを3本持っていますが、そこにあえてNorthern Dancerをまったく持たないダンカークを配合して生まれたのが、クロワラモーの2016でした。
Northern Dancerから一度離れて雑種強勢的な爆発力を期待するという観点で考えると、ダンカークはクロワラモーにとって都合のよい種牡馬だと言えるでしょう。
また、ダンカークがサンデーサイレンスの血も持っていない点も、サンデーの血を引くクロワラモーにとって良い配合相手でした。
Mr.Prospectorクロスを持つダンカーク産駒は活躍傾向にある点は既述しましたが、クロワラモーの2016はMr.Prospectorクロスを5×5で持っています。
ダンカークの母父A.P.Indyが強く持つNasrullah/Princequilloのニックスを活かす配合という点では、クロワラモーの2016はSecretariatを5×6で持っていて、Nasrullah/Princequilloのニックスから成る血を継続強化する配合になっています。
さらに、5代表には登場しませんが、Buckpasser6・7×6・6も重要なクロスだと考えます。
このクロスに関しては、クロワラモーの代で多少こだわったところがありまして、特にBuckpasserのクロスする位置がポイントだと考えています。
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当場がこだわってきたキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合でもBuckpasserクロスが派生しますが、この場合でも良い位置でクロスするというのが個人的見解です。
クロワラモーの代で良い位置でクロスしていたBuckpasserクロスを継続強化できたのも、クロワラモーの2016の血統的長所だと考えています。
クロワラモーの2016には、このような血統背景があります。
クロワラモーがお世話になったターファイトクラブにその産駒を提供したいと思いながら、やっと納得できる馬が生まれて、提供できることになったのが本馬です。
当場としても、育成場での彼女の成長ぶりを楽しみに見守りながら、立派な競走馬になることを期待したいと思います。