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当場では、血統面なども考慮に入れながら配合に努めていますが、当場を代表する配合パターンにキングヘイロー×モガミヒメ牝系があります。
ご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、最たる例はG1馬で現在は種牡馬になっているローレルゲレイロです。
このブログでは計3回に分けて、血統的見地からキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合をご紹介したいと思います。
まず最初に取り上げるのは、種牡馬キングヘイローです。
今年で22歳になり、繋養されている優駿スタリオンステーションでは最古老のベテラン種牡馬です。
キングヘイローは通算27戦6勝、主な勝ち鞍にG1高松宮記念、G2中山記念など重賞4勝という競走成績でした。
彼の血統的特徴は父が80年代の欧州最強馬と謳われたダンシングブレーヴ、母がCCAオークスなど米G1を7勝したグッバイヘイローという抜群の血統背景でしょう。
しかし、名種牡馬に名牝を交配したからと言って、いつも良い結果が生まれるとは限りません。
どんな名馬であっても、名種牡馬・名繁殖牝馬になるためには自身の能力を産駒にうまく伝えられる配合が求められますが、キングヘイローはその条件を満たした配合の結果だと言えます。
キングヘイローの血統パターンで注目すべきは、Drone≒Halo≒Sir Ivorによる相似な血の関係でしょう。
この相似クロスは、まずキングヘイローの母グッバイヘイローが持つHalo≒Sir Ivorに端を発します。
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HaloとSir Ivorはいずれも2代父がTurn-toであり、それぞれの母はPharamond系×Mahmoud系の組み合わせです。
また、いずれ血脈もSir Gallahadを持つ点で共通しています。
グッバイヘイローは、牝馬の米国ダート中距離路線で2~3歳時に活躍した名牝でしたが、その優れた中距離スピードはこのHalo≒Sir Ivorに起因するかもしれません。
息子キングヘイローの代では、そこにDroneを加えることで、母の持つHalo≒Sir Ivorによる相似クロスを継続する形になりました。
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Droneも2代父がTurn-toであり、母がPharamond系×Mahmoud系の配合という、HaloやSir Ivorとまったく同じ血統パターンです。
また、Droneは母父Tom Foolを通じてBull Dogの血を持ちますが、これはHaloやSir Ivorが持つSir Gallahadと全きょうだいにあたる血脈であり、この点も含めてDrone≒Halo≒Sir Ivorという相似クロスが成り立つわけです。
ちなみにダンシングブレーヴがHaloと相性の良いDroneを持っている関係で、ダンシングブレーヴを父に持つ繁殖牝馬は、Halo系であるサンデーサイレンス系種牡馬と相性が良い傾向にあります。
これは、サンデーサイレンスが4×5で持つMahmoudクロスをダンシングブレーヴも5×5で持つという点以外にも、Halo≒Droneという相似クロスができることが要因の一つだと考えられます。
中央では200頭以上の勝ち馬を送り出しているキングヘイローですが、頻繁に配合する種牡馬なので、以前彼らの血統パターンを調べたことがあります。
中央勝ち馬となったキングヘイロー産駒の血統的特徴として、①Northern Dancerクロスを持つ、②母がNasrullahの血脈を持つ、③母がNasrullah/Princequillo(あるいはそれぞれの父であるNearco/Prince Rose)のニックスから成る血脈を持つ、のいずれかの血統パターンに属することが多いとわかりました。
①のNorthern Dancerクロスに関しては、キングヘイローがAlmahmoudの牝馬クロスを持つことに関係があると思います。
キングヘイローは父がNorthern Dancer系、母父がHaloなので、Almahmoudクロスを持つことになりました。
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Northern Dancerクロスを持つキングヘイロー産駒は、父の持つAlmahmoudクロスを継続強化することができます。
この牝馬クロスは非常に優れた瞬発力を伝える傾向にあるので、競走能力の強化という点でも好ましい配合手法だと言えるでしょう。
②のNasrullahクロスの場合、Nasrullahがキングヘイローの血統内に複数存在するMahmoudと牝系が同じという近親関係にあります。
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このNasrullahとMahmoudが出会うことで、爆発的な短距離スピードが伝わります。
Mahmoudに関しては、①で指摘したAlmahmoudの父であるという点にも意味があるように思えます。
③のNearco/Prince Roseのニックスを持つ繁殖牝馬とキングヘイローとの相性については、キングヘイローがSir Gaylord4×4を持っていることが最大の理由でしょう。
このSir GaylordこそがNearco/Prince Roseのニックスから成る血脈であり、繁殖牝馬側が同様のニックスから成る血脈を有することで、そこに相似クロスが継続されることになります。
モガミヒメの血統においては、彼女の2代母の父がボールドラッドなので、Sir Gaylordの血を活かすことができます。
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キングヘイローがこのような血統傾向を持つ一方で、モガミヒメはどのような血統パターンを持つのか。
次回はそのモガミヒメの血統を考察して、その後の最終回としてキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合に焦点を当てたいと思います。
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