もうすぐ３月１０日がやってくる

　古い写真のアルバムにお雛様の７段飾りをバックにしたセピア色した姉の写真がある。
　あの３月１０日未明に襲った東京大空襲は、戦地に引っ張られていた父のいない留守を襲った。
　東京都江東区亀戸、一番被害がひどかったところに住んでいたのだということが、資料で分かる。そこから祖父母と母と３歳にならんとしていた姉と、叔母が一緒に逃げたという。残念ながら、叔母は行方不明になってしまった。
　荒川区にいた親類を頼って逃げたというが、今でもその距離を歩いたとすると、優に半日はかかるのではないかと思ってしまう。
まして空襲の中を、想像しただけでも恐ろしくなる。
　今は亡き母があのとき死んでいたら、シベリアに抑留されていた今は亡き父が、帰還していなかったら、今の私はなかった。
　「平和」とはなんだろうと考えている自分がいる。*(いっぷく)*