立川です。
私には21歳の甥っ子がいます。
去年まで、東京郊外の美容院でアシスタントとして働いていました。
その美容院はその地域で50年も続いている優良美容院で、
お客様は主に中高年。
甥っ子は、自分の母親やおばあちゃんぐらいの年齢の
お客さんの髪をひたすらシャンプーしたり、カラーリングしながら、
話相手になったりとそれなりに忙しく充実した日々を過ごしていました。
しかし、1年もすると、自分の中で、なにか違和感を感じるようになり、
「ここは、オレの目指している職場ではない。
もっと原宿、表参道、青山といった激戦区でしのぎを削りながら、
カリスマ美容師と言われるよう成長したい」
そう思ったら、もう、いてもたってもいられず、後先考えずに、
その安定企業の美容院を辞め、その美容院の寮も出て、
なんと私のところに転がりこんできたのです
まあ、私としても彼の意気込みを認めながらも、
もう少し技術を身につけてからにして欲しく、
もったいない話だなあと思いつつ、まっ!すぐに仕事は見つかるでしょ
と軽く考えておりました。
しかし、しかし、現実は思い切りきびしく・・・
そんな激戦区でなんの技術も持っていない若者を受け入れてくれる美容院はなく、
山のように履歴書を出して、何とか面接までこぎつけても、
受け入れてくれる美容院は皆無でした。
むなしい日々が続き、甥っ子も私も閉塞感でいっぱいでした。
すぐに見つかると思っていたので、特に仕事もせずに、
私の家でごろごろしているしかなく、私もストレスがたまり、
なんでもいいから、バイトでもして、働くように言ったものの
仕事が決まったら、すぐバイトは辞めなくてはならないので、
それも迷惑をかけてしまうし・・・と本当に複雑でした。
そして、仕事を辞めて3カ月以上経ったころには、甥っ子もさすがに落ち込み
辞めたことを後悔し始めたものの、もう後には戻れないし、
とにかくこれ以上伯母(私)にも迷惑をかけられないと思い、
近所の宅配ピザの店で働くことになりました
毎日毎日バイクでピザを配達しながらも、時々面接に行ってそして落とされ・・・
そんな日々が続き、なんと半年が過ぎていました。
いつの間にか、私も半分あきらめかかった頃に、原宿と表参道に店舗を構える
美容院から採用通知をもらい、本人も私も本当にうれしかったですよお
そして、5日前から、表参道に出勤するようになりました。
毎日、立ちっぱなしで、終電にも間に合わず、タクシーで帰ってくることも
あるほどハードな職場ですが、そこのオーナーのカリスマ美容師の技術だけでなく
彼の人生に対する哲学に甥っ子は完璧に魅了され、1分でも1秒でも長く彼のそばで
彼のオーラを感じていたいようです。
職場のスタッフも全員同じ気持ちらしく、誰一人、愚痴を言う人はいなく
皆オーナーを目標に自分の成長に全エネルギーを傾けているそうです。
愚痴を言うひまがあったら、ちよっとでも技術を磨き自分を高めていく。
そんな空気で満たされている職場で、その中にいるだけで、
成長できると実感できるそうです。
「このオーナーとの出会いのためにオレは半年以上苦しんできた気がする」
とも言ってました。
夜中によれよれになって帰ってきて、本当にうれしそうに、
そして目を輝かせながら毎日、自分がどんどん変化していく喜びを私に話してくれます。
それを聞きながら、私も影響を受け、なんだか興奮してすごく楽しくなるのです。
昨日、甥っ子は私の所から巣立っていきました。
やっと一人暮らしを始めるのです。
淋しさはありますが、こんな形で彼を送り出せたことにとても満足しています
彼が大きく羽ばたいて人間的にもすばらしい美容師になれますように
がんばれー