隊列のごとく地を統べ冬菜畑 敏
○(幹夫)冬菜畑の景が率直に詠まれており共感です。
○(藤三彩)鋤鍬で小石や根を取り除きやわらかい畑をつくるのは代々続く作業だったのだろう。
〇(瓦すずめ)冬菜畑が隊列のように見えるということと、それが地を統べるほど、畑が広がっているということ。壮大な姿を見事に表現されていると思います。
○(あちゃこ)小さな隊列には戦いの気配はない。冬菜の緑は平和の色ですね。
◯(ルカ)隊列がいいですね。
○(春生)冬菜畑の様子を「隊列のごと」と捉えたのは手柄。
また一つ年を越せたと初美空 多実生
○(泉)実感です。最近は年を越すのも、いろいろと大変ですから。
〇(瓦すずめ)素直な喜びが伝わってくる句です。
(選外)(道人)かくありたい明るい老境ですね。
廃屋となりたる隣家軒氷柱 春生
○(泉)最近は廃屋になる家が多いことでしょう。「軒氷柱」寂しいですね。
〇(瓦すずめ)久しぶりに帰郷すれば、お付き合いのあった隣家は廃屋になっていたのでしょうか。きっとご近所づきあいも活発だったのでしょう。軒氷柱が寂しさを増幅させているように思いました。
〇 (多実生) 記憶の軒氷柱は樋のない茅葺屋根でした。
○(アネモネ)光景がしみじみと目に浮かびます。
〇(餡子)この頃は、こういう景がいたるところでみられるようになりましたね。「地方再生」はどうなっているのでしょうか。
◯(宙虫)懐かしさと淋しさが一気に。
裸木の動脈のごと分かれけり 泉
○(ちせい)季語は「裸木」。木と動脈の同等性には詩があると思いました。
住宅や大根白菜日を浴びて ちせい
心身の平穏晴れるや冬木立 藤三彩
冬木の芽声なき声を放ちけり ルカ
○(幹夫)力強い冬木の芽が佳く詠まれています。
○(泉)冬木の芽の、生命力を感じます。
○(あちゃこ)澄んだ空と空気にぴったりな句ですね。
〇 (多実生) 今に見ていろと、聞えて来そうです。
◎(春生)中七「声なき声を」を聴き取った作者の感性は素晴らしい。
○(道人)「声なき声」に真冬の木の芽の生命力を感じる。しっかりと耐えている人間もしかり。
○(ちせい)季語は「冬木の芽」。植物にもある声。耳をすませば木の精の声が。
○(敏)これから芽吹こうとする秘められた生命力を感じます。
冬青空からみんなが消える赤ボタン 宙虫
〇(餡子)この赤ボタンは何かなあとずいぶん考えさせられました。何か、奇術のイリュ—ジョンみたいな、不思議な句ですね。3枚の現場からすべての人が消えたとしたら・・・。
(選外)(道人)青と赤、空とボタンの取り合わせに不思議な魅力あり。「赤ボタン」の意味が不明なるも漠然とした孤独感と危機感が伝わって来る。
冬耕や崩れしままの秘密基地 餡子
○(春生)秘密基地で遊んだ子たちを偲んでの句か。
○(アネモネ)あるだろうな。懐かしい記憶が浮かんできます。
(選外)(藤三彩)子どもの頃の想い出が残る里があるのはいいな
落葉して古巣現る二つ三つ 多実生
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。現実に有りそうですね。
山かすめ煌めく朝日枯木立 仙翁
○(幹夫)景が佳く思い浮かんできました。
○(泉)一幅の絵画を見ている様です。
〇 (多実生) 突然出る煌めく朝日は希望の象徴です。
ふらここを残ししままに村を出る 春生
◎(珠子)それぞれいろいろな思いを残して去る故郷。私が村を出たのは18歳。世の中のことを何も知らずに出ましたが、長男以外は村を出るのが当たり前でした。あんなぶらんこあったな。
○(道人)「ふらここ」はどの世代にも共通の自分史の原点に残る、象徴としての郷愁であろう。下五に余情あり。
歳晩のふるさとどこまでも無口 珠子
○(あちゃこ)無口という一言が効いています。どこか淋しさの佇まいを見せて。
◯(ルカ)歳晩の季語がきいてます。
◎(アネモネ)身にしみます。
◎(道人)クリスマス後、誰もいない中国山脈麓の故郷に帰って、墓参りと氏神詣をして来ました。村は「どこまでも無口」でした。
〇(餡子)何処か他人めいてしまった故郷。何となくわかります。
○(敏)何も言わないけれど、故郷の持つ喪失感といったものがじわりと胸に響いてきました。
寒禽の楠の梢に菜畑に アネモネ
○(珠子)南国では、真冬でも飛び回ればどこかに餌がありますからネ。渡りをしない雀たちが、雪に閉ざされた世界でどうやって冬を乗り越えているのかずっと疑問のままです。
○(あちゃこ)寒禽に風景を転換させられました。青い空にぴったり。
小春日の父の魔法のおもちゃ箱 あちゃこ
○(珠子)ふるさとの懐かしい景色のところどころに両親や兄弟といたころのことが。私の父も器用な人で、スキーもスケートも何でも手作りでした。必要なものは自分で作るのが当然だったあのころ、父親の道具箱は魔法のおもちゃ箱でした。
◎(ちせい)季語は「小春日」。おもちゃ箱には夢が詰まって居る様な気がします。
〇(宙虫)少年時代に引き戻される。
取り戻すバランス感覚冬木立 敏
〇 (多実生) 青葉から負担の少ない冬木、バランスが良いのは当然でしょうね。
仮の世はシーソーゲーム冬菜摘む 道人
◎(藤三彩)実態は地の恵み、ゼロサムゲームのような”もし”の仮想をぶつけた二物の衝突。
〇(餡子)そうです。そうです。
○(敏)上がったり下がったり、シーソーゲームには確かに人生の浮き沈みを感じさせるものがありますね。
裸木や影にまう直ぐ人が来る ちせい
◎(敏)どのように解釈したら良いか見当のつかない作品ですが、「ゴドーを待ちながら」のような不条理な世界が想起されて、戦慄的です。
大冬木昭和の男子生き抜きて 瞳人
◎(瓦すずめ)冬木に昭和男子の自分もしくは親しい人の姿を重ねているのでしょうか。大冬木の姿と昭和の男子の姿がぴたっと重なり、納得させられました。
〇 (多実生) 大木も私達と共に昭和を生き抜きました。
裸木よ天がおちなば受け止めよ 瓦すずめ
○(藤三彩)空から降る焼夷弾で焼けた古木が遺る光景を思い出す
◎(泉)今の世の中、何が起るか分かりません。皆で受け止めるしかありません。
◯(ルカ)大胆な呼びかけがいいですね。
○(道人)大きな裸木は欅であろうか。寒晴の大景への呟きは、災害も含めた大自然への祈りのようで、作者の心の大きさを感じる。
○(ちせい)季語は「裸木」。裸木に課された過酷な課題。人間世界にも該当するような気がしました。
並びおる風冷たかろ法蓮草 仙翁
人づてに尋ね来る街冬の霧 瞳人
〇(仙翁)何を尋ねて、誰を尋ねて、いいですね。
○(道人)「冬の霧」の想像力が素晴らしい。冬晴れの山間の街の朝夕は霧が出やすい。尋ね来るのは誰なのか、興味が尽きない。
◯(宙虫)季語が心情にぴったりくる。
もう昼かふたり暮らしの冬菜畑 珠子
○(藤三彩)折り合いをつけて夫婦は生きねばや
○(ちせい)季語は「冬菜畑」。ふたりに起こる感慨。「もう昼か」が印象的でした。
〇(宙虫)くちぐせになりそう。毎日「もう昼か」と・・・・。
(選外)(道人)寂しさの中にほのぼのとした味わいあり。
白菜太るどこかの家が売りに出て 宙虫
○(幹夫)洒落た取合せで佳く詠まれていると思いました。
○(藤三彩)さて、誰が買うのだろう。邦人とは限らない。水資源の保存も危ぶまれる
○(あちゃこ)変わり行く町と変わらぬ暮らしと。どこかの、が気になります。
◯(ルカ)取り合わせの妙。
○(アネモネ)無力感と切なさが・・・。
◎(餡子)この3枚の写真から、どんな町(村)を想像するか難しかったです。3枚から、どうやって この、物語性のある句にたどりついたのかしら。
枯草に没して薄き松の影 幹夫
〇(仙翁)わびしいような、寂しいような、いい景色です。
◎ (多実生) 枯草の凹凸が影を薄めた様です。観察が見事。
○(アネモネ)これは感覚的。なるほど。
日溜まりのぎったんばっこ冬休み 道人
さよならの力蓄え冬の空 あちゃこ
◎(ルカ)言えそうで言えない一句。
鞦韆の揺れしあれこれ女の身 藤三彩
◎(仙翁)いいですね。女の人生ですか。
○(道人)ぶらんこの揺れは中々止まない。乗った人それぞれの微妙な揺れ方でもある。複雑な女心と相通ずるような......
影固き冬のぶらんこ動かざる ルカ
○(幹夫)冬のぶらんこの景が佳く写生されており共感です。
○(藤三彩)ぶらんこに”冬の”と付けたところが季語の律儀な使い方と感心した
〇(仙翁)確かに、止まったブランコは寂しいような。
○(珠子)森閑とした故郷の雰囲気をきっちりと表しています。
○(春生)上五「影固き」がこの句の眼目。
〇(餡子)ブランコはうるさく言えば春の季語。どう表現するかと思ったら、冬のブランコと、素直に表しました。勉強になりました。
○(敏)影を「固き」と形容した作品は私にとって初見です。不動のぶらんこと相俟って、印象深い一句となりました。
冬あおぞら弓を手にせし祖の記憶 瓦すずめ
○(珠子) 狩猟をして暮らしていた時代だってその前だって、青空はこうやって存在していた。どこまでも広がる青空を見ていたら、そんなことも考えそうです。
◎(あちゃこ)澄みきった青い空は時空を越え、原始へ繋がっているようです。上句を敢えてあおぞらとした所が好きです。記憶を何か具体にできないかな?と考えさせられました。
(選外)(道人)「冬あおぞら」は限りない「蒼穹」。弓矢の祖先はどの時代であろうか?空間と時間の広がりを詠って巧い。
裸木の空刺すごとく立ちにけり 泉
◎(幹夫)晴天下の裸木の景が佳く写生されており共感です。
〇(瓦すずめ)寂しげですが、それでも強さを感じさせます
〇(仙翁)確かに枯れ木は天を刺す武器かも。
○(春生)中七「空刺すごとく」が適当。
○(ちせい)季語は「裸木」。裸木の非情な姿。その屹立性を巧みに詠んで居ると思いました。
均されて冬菜青々生家跡 餡子
◯(ルカ)生家跡がいいですね。
○(春生)この句は「生家跡」で成功。
○(アネモネ)田舎に帰るとまさにこの景が飛び込んできます。
◯(宙虫)力強さと忘れ去られそうな記憶の切なさと対比がいい。
○(敏)痛々しかったはずの生家跡地が、青々とした畑に変わっていたという感慨に打たれました。
(選外)(藤三彩)生家はもう無いのか廃農しているのでしょう。寂しさが伝わります。
年とりの昼をしづかに大けやき アネモネ
○(珠子)故郷は、いつでもどこまでも静かで、時間がゆるやかに流れています。子供のころから存在感のあった欅なのでしょう。
◎(宙虫)昼・・・大晦日の昼・・・独特の手持無沙汰な感じ。いつもの喧噪とは違う昼の感覚。大ケヤキがでんとしていていい。
寒天の真中貫く故郷の木 幹夫
〇(瓦すずめ)貫いているように見えるほど立派な木だと分かります。また、ふるさとには、大きな建物がなく、空の広がっているさまが見えるのでしょう
★お待たせしました。
新年第一回目の句会も無事に結果発表にたどりつきました。
皆さんありがとうございます。
次の句会告知ももうすぐ。
次々締切が来ますが、がんばって参加してくださいね。
では、次の当番はまきえっとさんです。
よろしく。
連休なのに、広島は寒く雨が降っています。今日は成人の日ですが、若い人たちには、青春を楽しんで欲しいものです。若い人たちが、年金の心配をする様では、世も末です。
おまとめありがとうございました
温かい日が続いたのか夕闇に冬桜ではなく白梅が咲いていました。梅見の居酒屋の予約日が微妙な感じ
”冬のぶらんこ”うまい季語つかいでした
冬から春へ体感を置いて季語の早そうな時のながれ