「土用の丑の日」ですね。元気に過ごせるように鰻を食べました。
兼題:水
水溶性の殺意が蓮の花影に 宙虫
○(敏)「水溶性の殺意」って一体何でしょう? わかるようでわかりません。そこになんとも見逃しがたい俳味があるようです。
選外(吾郎)水溶性の殺意…が凄すぎて──もったいない
(選外)(道人)蓮の花の裏に隠された世界が見えるようだ。
初恋の記憶あおあおソーダ水 楊子
〇(珠子)「あおあお」が何とも素敵です。あおくてちょっと渋みがあって。
(選外)(卯平)初恋の記憶とソーダ水は同心円で緩いのでは。
歓迎す真夏満つ生水源か 吾郎
○(泉)いかにも涼しげな俳句(回文)だと思います。
◯ (アゼリア) 水源の湧水冷たくて美味しいでしょうね。盛夏ですね。
公園の子ら誰れ憚る水あそび 瞳人
飲む水を買う世となりて熱帯夜 泉
○(ちせい)必ずしも非難がましい論調ではないと思うのですが。
◯(ルカ)生きるための水も買わねばならぬ。
(選外)(卯平)「世となりて」では理。「世となるや」であれば選を検討した。但し熱帯夜では理が先行。他の季語が十分考えられるのでは。
水を打つ娑婆は未練の鉄格子 幹夫
○(卯平)未練はここでは不問。水を打つ娑婆(現し世)が鉄格子であると言う景は面白い。酷暑は鉄格子の現し世。未練は削りたい。
噴水の声の届かぬ高さまで ルカ
○(卯平)噴水の景が明確。このような噴水はヨーロッパの街だろうか。
◯(道人)何でもないことを新しい発見のように詠んだ句。詠めそうで詠めないだけに惹かれる。
〇(あき子)止まっていた噴水が、いきなり吹き上がった驚きを思いだしました。
真昼間の天水桶に螢の死 敏
〇(春生)昨夜の蛍の乱舞が目に浮かんできます。
○(アダー女)天水桶とは懐かしい。そこに昨夜は光を放っていた蛍の骸が浮かんでいるというなんとも切ない情景が美しくも儚いです。
〇(めたもん)上五・中七から突然暗転する下五。景の対比・違和感が深い味わいになっています。
水馬逃げろや逃げろ鯉の口 藤三彩
○(幹夫)「挙げ句の果てに鯉の口」かあ。・・・なさそうでありそうで面白い。
三伏の水に晒して草木染め アネモネ
〇(藤三彩)草木染には藍、朝顔はもちろん茄子や筍の皮、アボカドなどでもできるそうだ。夏至から立秋の間せっせと染色に励む姿が見えそう。
〇(あき子)草木染めは季節によって染まる色が変わってくるようで、自然の中の確かな営みが伝わってきます。
○(宙虫)清らかな水の流れが見える。
〇(まきえっと)涼を感じますね。
水撒くと飛び込んでくる小さきひと あき子
水中に拾ふ小石や晩夏光 卯平
〇(仙翁)よくある景色ですが、きれいに見えます。
○(宙虫)なんでもないが、やわらかな光を感じる。
畔草を刈り釣瓶より水を汲む 仙翁
古寺に水の精やも未草 アダー女
堕天使の一人となりてソーダ水 あちゃこ
〇(楊子)堕天使を詠んであっけらかんとしているのがいいです。
○(卯平)堕天使とソーダ水の間は様々な物語。但し「一人となりて」では堕天使=詠み手を説明している。ここを推敲すれば特選候補。
〇(珠子)確かにそう思うことはありますね。堕天使と天使は紙一重かもしれません。
◯(道人)どんな堕天使か興味津々。ソーダ水なのでアザエル?
○(宙虫)堕天使とソーダ水の取り合わせが面白い。
(選外)(藤三彩)堕天使が堕落して神から離反した天使とは解釈できるのだが本句のソーダ水との取り合わせは不可解な。何を犯したのだろうか
あっかんべし合う関係氷水 めたもん
〇(楊子)赤い舌や青い舌を出し合う関係はいいですね。笑い声も聞こえます。
○(あちゃこ)女の子同士かな?遠慮なく素顔を見せ合う明るさがいいですね。
○(餡子)私の思い出の中にこういう男の子がいました。あっかんべーをした舌は氷メロンの緑・・・。あの子はどうしているのでしょう。
○(吾郎)幼馴染の思い出は~♪
〇(まきえっと)なんか性別関係なく、可愛い。
河鹿聴く美濃は山国水の国 道人
〇(藤三彩)美濃といえば斎藤道三の山の国という印象がるのだが水の国でもあるという。
◎(春生)美濃の自然を格調高く詠いました。
◎(幹夫)美濃(岐阜県)と言えば、戦国時代の斎藤道三が思い浮かぶ中、季語「河鹿(鳴く)」が「美濃のマムシ」と呼ばれた道三に適っています。
◯ (アゼリア) そこで美濃紙が作られているのですね。
水中花窮屈さうに開きたる 春生
〇(楊子)せまい瓶の中の様子をよく観察しています。花は死んでいるのでしょうか生きているのでしょうか。某女性俳人の論争を思い出しました。
◯(アネモネ)いかにもです。
○(ちせい)魚などの生き物が多く入って居たのかもしれません。
水滴の逆さまの夏映し出す まきえっと
〇(仙翁)水滴の逆さま、何となく面白いですね。
○(アダー女)シャボン玉ではなく水滴という小さな水玉に夏の空や家や木々が逆さまに映っているという観察の鋭さが見事です。
◎(宙虫)逆さまの夏を実感する。今年の夏。
◎(ルカ)極小の世界の中に宇宙。
水打って景の整う神楽坂 餡子
◎(吾郎)粋な黒塀見越しの松に…打ち水。いいですねぇ
○(アダー女)確かに神楽坂の街は打ち水の似合う街です。「景の整う」という措辞がピタリときます。
○(敏)地名の斡旋が素晴しい。粋な江戸を思わせる商家と町並みの「景」そのものが見えてきました。
◯(道人)固有名詞の句は難しいが、「神楽坂」がピタリと嵌まった。
〇(あき子)調べが美しい。涼し気な神楽坂が伝わってきます。
〇(めたもん)花街・路地・石畳といった神楽坂の雰囲気を伝える句。かっこよくきまっています。
〇(まきえっと)まさしくですね。
◯ (アゼリア) 神楽坂は習い事に通った懐かしいところです。習い事の後皆で甘味処へ寄り道をしたり、楽しい街でした。
ゼラチンと水の割合梅雨明ける 珠子
○(泉)この割合が難しい。
〇(あき子)取り合わせの面白さが、梅雨明けの気分に通じているような。
水の音夏の燕を惹き付ける ちせい
ジョッキ干す夜半まで続く水掛け論 アゼリア
○(餡子)今では良い思い出ですね。コロナでこんなことも遠のいています。さっと飲んでさっと引き上げています。
○(吾郎)潤滑油となるか発火材となるか(笑)
テーマ:鳴く
ごつごつの指鳴らし来る日の盛り まきえっと
○(吾郎)何かが起きる気配
○(宙虫)人生を見せている。
◯(ルカ)オノマトペが効いてます。
夏燕鳴けば田んぼに王が居る ちせい
○(泉)意味不明ですが、何となく魅力的な俳句だと思います。
郭公の森や幼き日の匂う あちゃこ
〇(珠子)私の幼き日の記憶は茫洋としていますが、匂いのようなものは残っている気がします。
○(幹夫)詩的に詠まれ共感です。
○(敏)蘇った幼かった頃。それを「日の匂う」としたところが見事。
○(ちせい)郷愁の匂いは空想の余地が有ると思いました。
亀鳴いて日光街道沿ひの家 アネモネ
熊蝉鳴ク炎夏覚悟イヨヨ決メ 瞳人
老人に長い朝あり郭公鳴く めたもん
○(餡子)私も立派な老人の仲間。朝早く目が覚めます。起きて何かしようかなとも思うのですがもう少し布団にいようなどと思う毎朝。季語がいいですね。
○(卯平)年齢的に共感。郭公でそのような朝を楽しんでいる作者に敬意を表す。
〇(春生)目覚めが無性に早く時間を持て余しているのが伺えます。
〇(仙翁)早起きの老人には、朝は、長いものですね。
◎(道人)老人の早朝の時間軸と郭公の取合せが巧い。
交番に女性警官夏つばめ 珠子
○(瞳人)いっそ、SPも女性に頼んだら
◯(アネモネ)そういえば交番の女性警官見たことがなかったような。
○(泉)大変でしょうが、頑張って下さい。
(選外)(卯平)類似類句があるだろう。
国葬のニュース速報守宮鳴く 道人
○(瞳人)何でも反対の人多いけど、家守はどっち?
◯(アネモネ)「守宮鳴く」が俳味。
選外(吾郎)国葬でやるんなら、ゼレンスキー、プーチン他揃えて紛争解決の糸口にするくらいのプランがないと守宮に笑われる
歳時記にうつらうつらの蝉時雨 アゼリア
○(アダー女)今年春に出た角川俳句「大歳時記」は例句も多く読み応えありますね。読みふけっていると私も睡魔に襲われます。蝉時雨にはっと起されるような気分。よくわかります。
鳴く虫の図鑑蛍はどうするの 藤三彩
◎(泉)蛍は鳴きますかね。私には分かりません。意表を突かれました。
選外(吾郎)SDGSに反するか──
昨夜の雨山の向ふへ蟬の鳴く 幹夫
初鰹猫の鳴き声一変し 泉
吹鳴のトランペットや夏逝けり 卯平
◯ トランペットの音色は晩夏にぴったりと思います。
青栗の雨にひと呼ぶクラクション 宙虫
川端のゆかりの宿や河鹿鳴く 春生
◯ (アゼリア) ここで伊豆の踊り子などなど名作が生まれたのですね。
◎(ちせい)そこで執筆して居たのでしょうね。思い浮かぶようです。
窓越しに立てる聞き耳遠蛙 敏
◯(アネモネ)「遠蛙」で安心しました。
〇(仙翁)窓を開けると、蛙の声はとても大きく聞こえます。
風鈴のかそけき音色ゲリラ雨 アダー女
鳴き真似のうまい鳥いて山滴る 餡子
〇(楊子)中にはそんな鳥もきっといるはずと思わせるところがおもしろい。緑深い夏の山に耳をそばだててみたくなります。
○(瞳人)人の世界だけではないのですね
まくなぎの声なきこえを打ち払ふ ルカ
◎(楊子)鳴かないのかもしれませんが、鳴くような気もする。打ち払うのはその声だというところが新しい詠み。
〇(春生)「声なきこえ」がぴったりです。
〇(珠子)まくなぎを「声なき声」とは、言い得て妙。
○(幹夫)田んぼには、厄介な御仁「蠛蠓(まくなぎ)」です。
○(敏)気配に「鳴き(泣き)」を感じたのでしょうね。
〇(めたもん)全体のリズムがよく軽快。「声なきこえ」の使い方が新鮮で上手いと思います。
冷蔵庫コトリと鳴きぬ午前二時 あき子
○(餡子)我が家でもよくあります。製氷の氷が落ちる音なのですが、びくっと させられます。静かな夜です・・・。
〇(藤三彩)製氷機の氷が落ちる音がします。ハイボールラスを傾けて録画の映画など見ているのです。
〇(めたもん)「鳴く」のが冷蔵庫という意外性。谷川俊太郎の詩の一節「電気冷蔵庫の中にはせせらぎが・・」を思い起こしました。
〇(まきえっと)氷の落ちる音と、ぶーんという音がする時があります。
恋かしら鳴いているのは瑠璃とかげ 楊子
露涼し朝の空にカラス鳴く 仙翁
話す気な揉み瓜海も鳴き砂は 吾郎
雑詠
蝸牛選挙前日立ち止まる ちせい
〇(幹夫)無党派層はどの主張に賛同すべきか。参院選は自民党圧勝でした。
サンダルの片方ばかり風の浜 あちゃこ
〇(楊子)寂しげな景色ですね。失恋の海はそんなちょっとしたことが気になります。
○(卯平)海辺に転がっているサンダルは片方ばかりと言う景は実景だろう。風の浜では少々甘いが悪くはない。
〇(めたもん)確かに落ちているサンダルはいつも片方。「あるものがない」ことが心を揺らします。
◯(ルカ)片方に詩情。
せっかちに逝った江戸っ子貝風鈴 珠子
○(あちゃこ)貝風鈴の乾いた音が悲しさを誘います。
◯(道人)言葉の斡旋とリズムが江戸っ子とピッタリ。
丁寧語飛び交う夏の百貨店 まきえっと
(選外)(卯平)冬の百貨店も丁寧語は飛び交うだろう。何方も「お中元」と「お歳暮」の景。
反りかへる竹の弾力青嵐 ルカ
◎(アネモネ)「反りかへる竹の弾力」いいですねえ!
◎(敏)一読眼前に景が顕れました。心に残る作品です。
永遠の愛とは桔梗の花言葉 藤三彩
花とうきびとくとく村は脈を打つ 宙虫
◎(あちゃこ)季語がいい。村の脈動はとくとくでないといけません。言葉の選択が巧み。
◎(餡子)村が脈を打つの措辞に、驚かされました。
○(吾郎)なんか美しくうれしい。頑張れ
◎(珠子)とうもろこし畑は望郷のひとつ。「花とうきび」という表記がやさしくて、「とくとく」がさらに優しくて泣けてきます。私のふるさとの村にもたくさんの「生」が静かに息づいています。
◎(まきえっと)「花とうきび」がいいですね。また「村は脈を打つ」もいいと思います。
◎ (アゼリア) 季語が素敵です。村が脈を打つーいいですね。村も生きてます。
(選外)(道人)音韻の遊び心がいい。
国を攻め政治家を撃つ旱かな 泉
山の蛾の貼りついてゐる大樹かな 春生
〇(春生)「 貼りついてゐる」がうまいです。
◎(仙翁)山に生きる蛾の、生き様でしょうか、面白い。
○(ちせい)見たままがかえっていい感じの写実になっていると思いました。
◯(ルカ)張りつくに納得。
楯突きし父はもうゐず杜若 敏
○(瞳人)そうして気付くことって多いね
前略も拝復もなし梅雨の明 道人
○(あちゃこ)さらりと寂しい日々を描写して、共感の一句です。
○(瞳人)で、また挨拶ナシの酷いもどり梅雨だ
○(幹夫)今夏、異常に早い梅雨明けとそれに続くすさまじい猛暑!
〇(あき子)今年の梅雨明けは、いきなりな感じでした。
(選外)(卯平)上五中七は面白い。がこの季語でこの措辞を説明していないか。
茶席への飛び石ふさぐ苔の花 アダー女
○(あちゃこ)草取りをしながら、苔の花に見入ってしまいます。茶席との取り合わせもいいですね。
〇(藤三彩)境界石(関守石)からの露地を入る。苔がびっしりと生えている。ゼニコケが入ると根を伸ばすので大変。手があまり入っていないのかもしれない。
〇(春生)風格のある茶室ですね。こころが落ち着いてきます。
○(吾郎)俳味満載
濃い染みさ盛夏赤い背寂しい子 吾郎
〇(藤三彩)今夏は梅雨明けが早く、酷暑、極暑、蒸暑、溽暑などのオンパレード、そこに赤い唐辛子を背に塗られる戦争の子もゐるような回文。
〇(仙翁)夏の盛りの中の寂しい子、上手いですね。
◯(道人)この寂しさは、鍵っ子が日盛りの公園かどこかで独り遊びしているような気配。「赤い背」が「染み」と「盛夏」を背負っているようだ。
○(宙虫)これからの子の人生に背負うものがある。
〇(まきえっと)夏ってこの子だけでなく何か寂しさがまとわりついている感じ。きっと楽しいからその後の寂しさかも。
買い置きの絵の具干からび青蛙 楊子
○(あちゃこ)買い置きの絵の具は、我が家にも眠っています。生活感がいきていますね。
○(敏)青蛙とくると、すぐに芥川の一句が浮かびます。或いはそのパロディ版と言ったら良いでしょうか。
白き蛾の朝の窓辺の骸かな 仙翁
○(アダー女)志賀直哉の「城之崎にて」を連想する句。あちらは蜂の骸でしたね。
反あべと煽ふりし紙紙よ夏寒し 瞳人
○(ちせい)今年は梅雨明け宣言後に雨が多かったような。
万緑や列の端っこにいる不安 餡子
◎(卯平)似たような句は読んだ記憶がある。ここでは万緑の位置。不安と万緑の相反する世界の断絶を列の端で甘受している詠み手。一行詩として悪くはない。
○(泉)列の真ん中にいるか、端にいるか。性格が分かりそうです。
◎(あき子)横一列の端っこを想像すると、崖っぷちかもしれない。季語との対比が新鮮。
夜の蝉実力主義の似合う都市(まち) めたもん
矢を番ふ弦は極太旱梅雨 卯平
◯(アネモネ)矢を放ったときの弓弦の音が聞こえてきます。
(選外)(道人)上手すぎて選びにくい句の典型かも。
用水の水音弾み青田風 アゼリア
◎(アダー女)毎年、神奈川県の開成町に紫陽花祭りの頃行きます。正に用水路の水は勢いがよく、弾んでいるようで、青田を渡り来る風は極上の気分にしてくれます。素直なこんな句が詠めたらいいな。
涼しさや解散近き同窓会 あき子
◎(瞳人)もう、みな、90歳だよ、いいじゃあないですか
○(餡子)よく分かります。年齢的にも続行がむずかしくなっていますね。間遠になっていく繋がり、寂しいですが人生の一齣。
◯(ルカ)それもまた自然なこと。季語が清々しい。
(選外)(卯平)と言う事は同窓会もお互いが歳で解散するのか。それをやれやれ(涼しさ)と言う事か。それともやっと今回の同窓会もお開きになりホッとしている詠み手か。どちらにしてもそれが詩情としては共有出来ないのでは。
蜥蜴這ふ渋谷人間交差点 幹夫
◎(めたもん)人混みの中にある疎外感とか違和感とかを肌触りのように感じさせる季語が絶妙。
このあたり昔味噌蔵草茂る アネモネ
〇(藤三彩)味噌や酒蔵があるのは豊穣な土地。なのに昔ながらの裕福な商いは難しい時代と感じます。
☆☆次回をお楽しみに。
広島は暑い日々が続いています。しかし、急な雨も降るので、一時的な涼しさも感じます。今日は大相撲名古屋場所の千秋楽。逸ノ城が見事に優勝しました。彼も29歳になったようです。大器晩成のタイプなのでしょう。