お待たせしました。
結果発表です。
梅雨も末期。
この句会の兼題写真を出題した時点では、空梅雨同然で、久しぶりの雨模様だったのですが、いきなりの台風、そして豪雨。
被災地の状況が心配ですが、まだまだ雨は続きそうです。
皆さんのお住いの地域でも十分におきをつけください。
★★★
梅雨しとど後継ぎのない田を濡らす まきえっと
○(敏)私の周りでも後継ぎの無くなった田畑が増えています。都会の中に取り残されたこの田も、やがて更地となってしまう運命にあるのでしょう。梅雨に濡れた田のせつなさが伝わります。
◯ (アゼリア)地方では農業も他の事業も後継者がなく困っています。我が家も後継者がなく主人が老体に鞭打って(?)働いています。共感の句です。
○(幹夫)情感が佳く詠まれており共感です。
○(泉)恐らく後継ぎは居ないでしょう。将来、田にビルが建つかも知れません。
〇(瞳人)そういうことなのですね
○(餡子)我が家の母の実家もとうとう田んぼを継ぐ者がいなくなり、従兄弟は売ったり(安値だそう)豆畑にすると言っていました。深刻です。
〇(春生)毎年訪れる梅雨もなんだか、寂しいですね。
植田径けんけんぱつぱけんぱつぱ 幹夫
◯(道人)懐かしい景。童心に帰ったようです。
○(ちせい)季語は「植田径」。フルーツバスケットなども思い浮かびますが、子供の遊びの風景が思い浮かびました。
田主の雨の水田を見てまはる アネモネ
○(ルカ)ビニール傘の人を田主と見立てた所が、秀逸。
(選外)(藤三彩)田主とは田んぼの所有者(主)のことか、毎朝軽四輪で来て水温管理をしている様子です
ひとの影見えぬ村史に田を植える 宙虫
(選外)(ちせい)季語は「田植」。村史に少し注目しました。
(選外)(道人)かつては村だった街中の田に稲を植える、という感慨でしょうか。共感します。
街中に取り残された植田かな 泉
○(まきえっと)自分の家で食べる分とかでしょうか?取り残されたのか、街が変わりすぎたのか。
〇 (多実生) 休耕田の時節柄珍しい光景ですが直に消える運命です。
夏燕記憶に変わらぬ瓦屋根 藤三彩
○(敏)瓦屋根以外の景色は、年々姿を変えているのでしょう。「私」同様、営巣にやってくる燕も、変わらぬ景色の瓦屋根が、記憶に強くインプットされているのです。
◯ (アゼリア) 本当に記憶があてにならなくなって、記憶どうりのものに出会うと嬉しくなります。
〇(珠子)渡りの鳥たちは体内に磁針を持っているのでしょうが、燕は屋根や軒まで探しあてるのですからその正確さには驚くばかりです。今、二番子を育てています。
○(ちせい)季語は「夏燕」。記憶に沿った瓦屋根。句心を呼び起こす。
雷熄めば己が天下を雨蛙 瞳人
◎(道人)容と音の大小、雷と雨蛙の取合せの妙。小さな雨蛙が異様に大きく見える。
◯(アゼリア)雨蛙の鳴き声は心が癒されます。当方では街中でも鳴いています。
〇(珠子)雨蛙のだみ声とその大きさにはほんとうにビックリします。まさに己が天下。
〇 (多実生) 雷は雨が降る前に落雷など多く、雷が終わると雨が一般的で雨蛙の天下となります。
早苗田も豪雨に耐える根付きかな 多実生
○(敏)激しい雨にもしっかり根付いた早苗の有様が見えてきました。秋の収穫が期待されます。
◎(春生)これで一安心です。万歳。
○(藤三彩)自家保温・発芽させた種籾だもの、しっかり育って欲しいという願いが伝わります。
五月雨やビルの谷間の小さき田 仙翁
○(幹夫)景が佳く見えてきます。
○(餡子)これもまた、気になる田んぼですね。
◎(泉)未だに、この様な田が有るのに驚きました。正に「ビルの谷間」です。
植田ゆく子の結ひくれし鈴の音 春生
〇(珠子)どんな子がどこにつけてくれたのでしょう。気になります。
○(幹夫)熊除けの鈴でしょうか?リズムも佳いですね。
植田水空の雫を付け足しぬ 敏
〇(仙翁)雫を付け足す、面白い表現ですね。
(選外)(ちせい)季語は「植田」。私的には入選かとも思いましたが、詩的な表現に突飛かと思い、選外としました。
彷徨の街の海月となりにけり ルカ
◯(道人)「海月」が巧い。梅雨の「海」をゆらゆらと彷徨っている感じ。
◎(敏)街中をうろつく透明なビニール傘を、彷徨う海月と見立てたところ、実にユニークな発想です。シチュエーションは違うのに、なぜか金子兜太の「梅咲いて庭中に青鮫が来ている」が頭をよぎりました。共に印象的です。
◎(珠子)毎日雨だと、確かに水母になった気分にもなります。
〇(春生)不思議な世界を作り出していますね。
◎(餡子)知らない梅雨の町をふらふらと目的もなく歩くのもいいですね。ビニール傘がちょうど海月の様で、なるほどと思いました。
青梅雨の当て所なき街あてどなく 道人
〇(珠子)この透明傘の主はこういう感じであてもなく歩いていたのでしょう。
余り苗放置をされて枯れ尽くす ちせい
○(まきえっと)そこまでの発想に脱帽。
〇(仙翁)余り苗は、苗がちゃんと付かなかったりしたとき、手で植えるためのものです。
周辺の建物入るる植田かな アゼリア
〇 (多実生) 青田になる前の束の間の植田(早苗田)の風景です。
○(泉)ビルの影が植田に映る。何とも不思議な光景だと思います。
梅雨しとど傘立てにまた増やす傘 餡子
◎(ちせい)季語「梅雨しとど」。傘が増えて行く様に俳句があると思いました。
○(幹夫)梅雨しとどの景が佳く詠まれており共感です。
(選外)(道人)この時季、本当に傘は幾つあっても足りないですね。三枚の写真詠として分かりやすい実感。
青時雨置いてけぼりの羽根一つ アゼリア
〇(瞳人)さみし、ですね
○(泉)青時雨の寂しい雰囲気が、良く表現されています。
○(ちせい)季語は「青時雨」。「置いてけぼり」から哀れを少し催しました。俳句的かと。
梅雨の蝶掃い金原まさ子逝く 珠子
◎(まきえっと)梅雨の蝶がよいですね。
○(ルカ)新聞の訃報欄に、ひっそりとありましたね。梅雨の蝶。季語が響いています。
〇(瞳人)すごい句をお詠みの人で
○(藤三彩)旧約聖書に出てくるような百歳を超える長寿を全うした俳人とか。句集『カルナヴァル』(謝肉祭)なんて長寿は食にありということなのでしょう。「エスカルゴ三匹食べて三匹嘔く」金原まさ子 エスカルゴの缶詰をそのまま食べてお腹をこわしたことがあったっけ
○(アネモネ)亡くなるまでお元気でしたね。
◯(道人)いつまでも若々しかった晩成の俳人金原まさ子への追悼句。「蝶掃い」の措辞が佳い。合掌。
銀色の雨をまといて実梅落つ 道人
◎ (アゼリア) 銀色の雨ー素敵な表現ですね。季語も今の時期にぴったりです。
◎(幹夫)美しい景です。
〇(春生)「 銀色の雨 」上手いです。
紫陽花や雨の匂いに噎せる街 餡子
○(まきえっと)最近の飴は豪雨で危険なだけですね。雨の匂いを感じる降り方になって欲しいです。
◯ (アゼリア) 紫陽花が雨に生き返りますね。
〇(春生)雨の匂いに噎せる街」感じが出ています。
約束の時間は過ぎて梅雨寒し 泉
〇(道人)約束の時間も時計の針も梅雨に濡れて曖昧模糊として来ます。どれ位待たれたのでしょうか。
〇(仙翁)約束通り、来てくれたでしょうか。
〇(餡子)約束の時間をどの位過ぎたのでしょうか。携帯もない時代にはこんなことがよくありましたね。待っているはずの人のいないベンチ。
◎(アネモネ)梅雨の寒さはこころの寒さ。
六月の地上の羽根の忘れもの ルカ
五月雨れてベンチに残る羽球かな 仙翁
〇(瞳人)これもさみし、です
青葉雨君に会えない傘がない 藤三彩
〇(仙翁)こんな歌がありましたね。傘がなくても会いに行きましょう。
○(アネモネ)陽水!懐かしい。
突き合ったシャトルコックも梅雨に濡れ 多実生
○(ちせい)季語は「梅雨」。バドミントンの羽根のシャトルコック。思い出が句に。
捨苗の雀隠るるほどの丈 アネモネ
○(まきえっと)雀隠れるほどの丈に気に入りました。
○(敏)捨て置かれて、初めて苗の全長が見えてきたようです。雀が隠れるほどですから、いかにも早苗のかわいらしさが窺えます。
◯ (アゼリア)雀隠るるほどの丈ー優しく素敵な表現です。
◎ (多実生) 手植え、機械植え共に根付きの悪い株は植え替える。余り苗(捨苗)は植田が根付けば予備苗の大きな役割が終ります。
◎(ルカ)捨苗をとらえて、景が見事に見える一句。
○(藤三彩)稲苗を捨てるくらいあるのなら少し分けて欲しいような。「捨苗」の意味が微妙。
(選外)(ちせい)季語は「捨苗」。春の季語の「雀隠れ」が想起され、句全体の印象が弱まって居ると思いました。
梅雨寒や羽根を休めているシャトル 敏
〇 (多実生) シャトルの句の中では羽根を休めているの表現が良かった。
◎(瞳人)休んでいるのがいいですね
○(泉)「羽根を休めている」という見方が、面白いと思います。
門前の今日の格言さみだるる 珠子
〇 (多実生) 寺の境内を通ると近道できる事を承知の寺は「礼をしてお通り下さい」との表示があり、礼をしてふと見ると格言の表記 “お陰様、日向にいてもお陰様”
○(アネモネ)上手い!でも門前かな?
遠雷や村の時計がゆるくなる 宙虫
○(まきえっと)「時計がゆるくなる」っていろいろに想像できますね。
〇(珠子)今の時計は全く狂いませんが、村の時計は「あれ?最近ちょっと狂った?」と思わせてくれてもいいですね。狂わないものばかりの中から詩は生まれません。ゆるんだ頭からも生まれませんが・・・。
○(幹夫)取合せが好きです。
〇(ルカ)ゆるくなり、がいいと思いますが、着眼点がいいですね。
○(藤三彩)雷鳴の音速は1秒間に約300m、稲光から何秒で音が聞こえるのか測って、おらが村はまだ大丈夫と安堵する。
透明な傘や植田は静もりぬ ちせい
◎(藤三彩)今年の5−6月は空梅雨の様子で心配でしたが、ようやく新鮮な雨が入り
ました、あとは夏の日照がどうなのか
○(アネモネ)雰囲気伝わってきます。
梅雨ごもり釘一本だけを打つ 幹夫
◯(道人)梅雨時の鬱陶しい生活感を一掃する「釘一本」の響きが佳いですね。
○(敏)長引く梅雨の無聊に、たわむれに釘を一本だけ打ったというのでしょう。やりきれなさが伝わってきます。
◎(仙翁)何となく面白い、何のために釘を打つのでしょうか。
○(餡子)こんな梅雨の日は、家の中のこと、やっておこうか。と思ったが、結局はたいしたことできなかった・・・。
◯(ルカ)どこに打たれた釘か。想像が膨らみます。
○(藤三彩)雨漏りに釘一本で足りるのかな
○(泉)何だか分かる様な気がします。倦怠感でしょうか。
○(アネモネ)いかにも俳味。
軽薄とわかつて競ふ七変化 瞳人
○(ちせい)季語は「七変化」。そんなときもあるのでしょう。意外と愉快なシチュエーションが句に成って居るのかとも思いました。
仁王像植田の風を胸に受く 春生
◯(ルカ)古今から、仁王像は、植田の清々しい風を身に受けてきたことでしょう。
夏至の日のベンチにひとつ忘れ物 まきえっと
〇(仙翁)夏至の日の忘れ物、意味がありそうで、なさそうで。
〇(春生)情景がうまく捉えられています。
最近になって、梅雨らしくなって来ました。九州では豪雨被害が起きています。広島でも雨が激しく、災害が起こらない様に願っています。