つづき
遠青嶺過去と未来を断つ国道 餡子
〇(仙翁)青い山と麓の人の営みの境でしょうか。
〇(まきえっと)今ですね。
○(あちゃこ)一瞬で変わる過去と未来。国道は生死を分かつ所でもありますね。
○ (敏)では国道は現在? 遠青嶺を見詰めながらのアイデンティティーの確認なのでしょう。
◎(珠子)国道の片側は発掘された昔の生活、もう片側は現代を生きる町並み。その境を現代を支える国道という太いパイプが。写真がなければ理解できなかったかもしれませんが。
古代ロマン旅する真夏の大冒険 藤三彩
未だ若き皇子の古墳苔の花 アゼリア
〇(楊子)季語で迷う句でしょう。なんだか納得しました。
〇(藤三彩)「未だ若き皇子」の発想がよく出てきたものと感心。厩戸皇子に因む古墳などとなるとすごい発見
◎(アダー女)「塚原古墳群」のことちょっと調べてみました。どんな方々が埋葬されているのかはよくわかりませんが、夭折の皇子の墓もあるのでしょう。「苔の花」のように花ではないが花のように見える小さな植物が「若き皇子」の古墳に張り付いて、一層の哀れと切なさが感じられます。
〇(珠子)揺るぎがありません。王道の俳句には惹かれます。
○(幹夫)季語「苔の花」との取り合わせがいいですね。
◎(めたもん)上五、中七と下五の季語「苔の花」との取り合わせが絶妙。古墳の景とその背景へのしっとりした共感が伝わります。
○(宙虫)苔の花で落ち着いた世界観となった。
鬼やんま風の通り道は秘密 めたもん
○(あちゃこ)ちょっと悪戯心が見え隠れしている一句。
◯(アネモネ)ほんと鬼やんまの通り道は見事に決まってますね。
◎(敏)鬼やんまの困惑した顔付き?が目に浮かびます。子供心が横溢。
(選外)(道人)破調が「秘密」を際立たせている。
帰省子の屯している学舎跡 道人
○(あちゃこ)ありふれた光景ですが、郷愁を誘います。
◯(アネモネ)何だろう、何でだろう。のぞいて見たい気がします。
緑蔭にロングホールの大叩き 幹夫
〇(楊子)ゴルフ句も楽しいです。球が見つかればいいですね。
○(泉)古墳群をゴルフ場と解釈したのに驚きました。
まほろばの青垣幾世の蝉時雨 藤三彩
〇(仙翁)蝉時雨は昔からずっと続いているのでしょうね。
〇(まきえっと)私もまほろばを想像しました。
(選外)(ちせい)悠久の時と蝉時雨を構成する蝉の短命とのコントラストは買うのですが、上5中7はもう少し工夫できると思いました。
石人が街へ蝙蝠送り出す 宙虫
○(泉)石像群は中国人の様に見えます。新型コロナの関係でしょうか?
◎(卯平)石人は我がふる里では珍しくない。周辺は古墳だらけ。その石人が街に向かって蝙蝠を送り出すとは面白い。古墳がある場所と街の対比で面白い句になった。
◎(藤三彩)コロナの元凶は蝙蝠ではないかと・・人から人へと感染する有様は古代にもあったのであろうよ
◯(道人)句意を紐解くのは難しいが、古墳時代と現代を「蝙蝠」で交錯させているのが面白い。
石像の楽器鳴り出す野は晩夏 餡子
〇(まきえっと)どんな音でしょう。
○(卯平)「石像の楽器」は何処か西洋的。晩夏の野原に響く石像の楽器(例えば、「楽器エンゼル石像」など)はそれなりに余情がある。
〇(藤三彩)逝く夏はどことなく悲しげ
笛の音を石像たちの敗戦忌 メイ
〇(楊子)笛の音が聞こえてきそうです。
◎(幹夫)西村寿行著「滅びの笛」には、大量発生した鼠と人間たちとの闘いが描かれています。戦争の原因も同じように全て人間にあるのでしょう。
◎(ちせい)ユーモラスな雰囲気が有ると思いました。
青草やコーヒー党が一人減り ちせい
あをあをと四万六千日の雨 アネモネ
◎(メイ)並んだ文字の美しさ。気持ちのよい雨に、四万六千日が更に伸びそう。
銅像に洞あり夏に果てのあり 楊子
〇(メイ)銅像の空洞をイメージして、同時に夏をイメージすると、どこか不思議。「果てのあり」の悠然とした感じがいい。
〇(珠子)銅像の洞はイメージしにくいですが、この極暑には「果て」があると思わないと我慢できません。
◎(道人)「洞」と「果て」の言葉の取合せがとても良い。人生の奥深さを感じる。「銅像」は「石像」もありかも。
緑蔭の石像達は背を向けて ルカ
麦笛や時空を超える王の魂 あちゃこ
〇(まきえっと)「時空を超える」がいいと思います。
◎(餡子)あの三枚のしゃしんから、やはり時空、王、魂などの言葉が浮かびますね。どんな王が眠っているのか分かりませんが、悠久を感じます。
〇(ちせい)キングの魂は個性的なのでしょう。
晩夏光石の武人の石の笛 珠子
〇(楊子)武人とはいえ寂しげな音が聞こえます。
○(餡子)どんな音色がしているのでしょうか。石ですが優しい音が聞えてきそうです。
◯(ルカ)季語が効いています。
〇(藤三彩)兵共が夢の跡のようなもの悲しい音色が聞こえそうです
○(敏)古代のひかりと音の交響。
〇(メイ)晩夏光に包まれて、石の武人が統率する世界が見える。
○(幹夫)リズミカルに写真の景が詠まれている。
〇(めたもん)中七、下五の、「石」を繰り返しながらズームアップしていく表現が効果的。季語「晩夏光」と響き合い、昔に戻るような感覚があります。
○(宙虫)石の笛を下五に置いたのがいいなと思う。
(選外)(ちせい)いいと思いました。無難にいいのでもう少し工夫できると思いました。
緑蔭を抜け笛の音に辿り着く まきえっと
〇(仙翁)笛の音にたどり着く、いいですね。
○(餡子)笛を吹く石像には、凄い魅力がありますね。広い公園(古墳群?)を笛の音に引き寄せられていく作者。 辿り着いた時の安堵感。
◎(ルカ)ドラマがあります。
○(アダー女)私など石像の笛の音を緑陰の外側から感じました。しかし揚句の作者は笛の音を頼りに近づいて行き、緑陰の中に入ったら笛の音の正体に辿り着いたという。面白い発想というか感性に感心しました。
〇(珠子)そこには古代の人々の穏やかな姿が・生活がありました…。
○(幹夫)ロマンチックに詠まれている。
颱風や北へ北へと追ひかけて 卯平
千年を経ての祭りや無言劇 敏
◎(あちゃこ)写真から引き出した発想と言葉の選択が見事にハマっています。
◎(泉)長い年月を経て、石像群の無言劇を見ている様です。
〇(藤三彩)千年よりもっと前の言い伝えかもしれないが歴史ロマンが感じられる。
◯(ルカ)無言劇がよい。
〇(メイ)千年を経ての世界に、無言劇がはまります。
(選外)(卯平)「千年を経ての祭」は千年も続く古来からの祭(下五からすればここでは「神楽」だろうか)の事だろう。だとすると「経ての」が説明に過ぎない。句材としては共感出来る。
夏山に七賢集ひ睥睨す 仙翁
メロンに活魚積み豊洲へと直行便 アゼリア
○(泉)東京一極集中にも、問題点が多いですね。
〇(ちせい)若干字余りですが、景気がいい句だと思いました。
※今月の写真は熊本市にある「塚原古墳公園」。この古墳群の真下を九州道のトンネルがくぐっている。
https://kumamoto-guide.jp/spots/detail/193
それでは、次回句会の告知までこゆっくり。
オリンピックは無事に終わりました。いろいろな意見はあるものの、やはりオリンピックには感動しました。今の様な暗い時代に、世界に勇気と希望を与えたのは事実だと思います。