真つ白な猿の腰掛け秋黴雨 アネモネ
〇 (多実生) 真っ白はともかく欅の大木などで猿の腰掛を見かけ、取って持ち帰ると意外に早く復元するものです。
〇(楊子)雨の中ひときわ大きな白い茸が秋を主張している。
〇(珠子)確かに白いものも見たことがあります。季語をぽんと置いただけのすっきりした形。
秋黴雨案内板に鳥の糞 ちせい
◯(アゼリア)本当に思わぬ所にー困ってます。
〇(楊子)何気ない描写だが俳味がある。秋の行楽を鳥に笑われているような。
八月の傘の向こうの遠き空 ルカ
〇(まきえっと)八月と遠き空が合っています。
秋霖や同じ間取りの安堵感 まきえっと
○(餡子)団地やマンションに住んだことがないので、同じ間取りは分かりませんが、安堵感には中流の上的な幸福を感じます。
◯(卯平)この安堵感は何だろう。単に引越し先の間取りが一緒だっただけではない。心の平穏さが同じ「間」であったのか。季語が微妙にこの心情を表現している。
黄落の中を別れる男女かな 泉
銀漢やカンパネルラは赤を着て 楊子
○(ちせい)季語は「銀漢」。いかにも天の川空高しと思いました。
◯( 道人)「カンパネルラ」が効いています。
○(敏)カンパネルラが赤い服なら、ジョバンニは青でしょうね。秋の夜空を幻視しての一句でしょう。
〇(珠子)アニメ版のカンパネルラは確かに赤っぽかった。この潔い省略には惹かれます。自信がなくてついつい説明を追加してしまいますから。
◯(卯平)少々季語と措辞が近すぎる感は否めない。賢治は服装の事は記していない。だからこの句が鑑賞できる。
○(幹夫)美しい銀河鉄道の夜、青い猫がジョバンニ、赤いのがカムパネルラ・・・一番の幸せは、他人の幸せを願うことなのでしょう。
小児科はB棟向かいコスモス揺るる アゼリア
〇(藤三彩)電柱の小児科の看板への気づき。秋桜が真っ盛り。
○(アネモネ)「B棟向かい」がなかなか。
〇(宙虫)コスモスがいい雰囲気です。向かいにあるのがいいです。
手鏡の作り笑顔や秋黴雨 幹夫
〇(道人)ちょっと怖い展開ですが不思議な魅力あり。
◎ (多実生) 笑顔の作り方を練習する、微笑ましい少女の姿を思い浮かべました。
病葉が散って終活考える 多実生
◎(道人)彼方此方で見かける今の時期の落葉をどう詠めばいいかというお手本です。
公園を抜ける近道秋時雨 餡子
◎(まきえっと)確かに。特に雨だと目的地に一歩でも早く到着したいです。
○(仙翁)雨の時、公園は近道になるでしょうね。
〇 (多実生) 公園、寺や神社を抜ける近道は季節の移りを感じ取れます。
〇(藤三彩)ありそうな小径の発見、生活感があります。
○(アネモネ)いいとこ見ていると思いました。
〇(宙虫)普段使わない近道。まわりにいくつもありそうです。
八月の地雨晒されて三輪車 あちゃこ
○(仙翁)三輪車が、ほったらかしですか。
雨雲を砂漠にあげたい野分かな 藤三彩
◎(ちせい)季語は「野分」。発想がユーモラスだと思いました。
(選外)(道人)砂漠まで飛躍できるのが素晴らしい。
ひきこもる定年前の枯葉かな 卯平
(選外)(藤三彩)定年が延長され人により定かではない。前向きには早く定年して次の世界をと愉しみにしていたいものだ。
秋霖や流れる時に立ち止まる 仙翁
○(あちゃこ)ハッとさせれる一句です。自覚しないまま、人は迷いの中で立ち止まる。
◎(アゼリア)残り少なくなった人生にやり残したことが多く、焦りを感じますが、時に立ち止まって考える時間が必要だと反省しています。
○(敏)秋はもの思いの季節。ふと立ち止まった「時」に思いを馳せる。
〇(宙虫)立ち止まる機会が必要ですね。
秋来ぬと天幕青く張り替える 敏
水槽の気泡の行方台風圏 珠子
○(敏)水面を飛び出した気泡は台風に取り込まれていくのでしょうね。
◎(藤三彩)図の下の南から北へと台風の渦が上りくる。水槽の気泡への例えが絶妙。
◎(卯平)経験的に言えば台風直撃で「台風の目」に入った時、奇妙な静寂さを何時も感じ、その時何となく心の平常心を覚えるのは私だけだろうか。その経験を句として表現すればこの句の通りだろうか。
◎(幹夫)上空に広がる台風圏と家に置かれた水槽との大小対比に大いに共感、就中、中句の目のつけどころが良いと思いました。
◎(宙虫)台風ととりあわせたところが面白い。
病葉の語らず落ちる雨の撃つ 仙翁
○(あちゃこ)痛々しく悲しい。
◯(道人)この「病葉」の詠み方、中七下五の動詞のリズムも中々です。
傘ゆれて月へ届けとホームラン 泉
○(ちせい)季語は「月」。ヤクルト戦でしょうか。
〇 (多実生) 月に向かって打てと言ったある打撃コーチや傘を開いて応援のプロ野球風景が浮びました。
(選外)(幹夫)上句「傘ゆれて」を受けて、別件2014年雨傘運動如き、今日の香港のデモを連想しました。
秋霖や母に寄り添う転校生 道人
台風圏決めた時刻に飯が噴く 珠子
○(あちゃこ)飯が噴くという日常の切り取りが上手いですね。
◯(アゼリア)腹が減っては戦さは出来ませんもの。
◯(卯平)最後まで迷った句。それでも残ったのは取り合わせの妙技だろう。しかし、秀句とは言い難い。
地を叩く雨粒秋を加速する まきえっと
○(あちゃこ)一雨ごとに秋が深まります。最近の降りかたはまさに加速するがぴったり。
◎(敏)「秋を加速する」雨粒を凝視している作者の姿が見えます。
〇 (多実生) 雨が降るたび秋は深まります。
〇(珠子)あれだけ暑かった夏ですが、ひと雨ごとに秋が深まっていきます。
〇(藤三彩)これまで知らなかった「記録的短時間大雨情報」が頻繁に発せられる。洗濯物を取り込まなければ・・
○(ルカ)今年の秋の豪雨はまさにそんな感じです。
雨音を片耳で聴く夫の秋 あちゃこ
○(仙翁)片耳は聞こえなくなっているのでしょうか。
〇(楊子)画が見える。片耳が悪いと読んでもいいし、もう片方は妻の愚痴を聞いていると読んでもおもしろい。
○(ルカ)片耳が、秋を感じます。
〇(宙虫)まったくそのとおり、僕の耳も同じ機能をもっている。
傘立てに傘がいくつも休暇明 アネモネ
〇(まきえっと)「傘がいくつも」からざわついた感じがします。
○(幹夫)生憎雨の新2学期ではありますが、久しぶりに児童たちの活気を取り戻した校舎の様子が存分に詠まれていると思いました。
○(ルカ)よく観察されています。
人待ちの赤きポルシェや台風来 敏
秋の雨無言で語る母娘かな ルカ
◯(アゼリア)何も言わなくも解ってくれる、温かい空気が通い合うのが母娘ですよね。
○(ちせい)季語は「秋の雨」。無言が百言にも値(あたい)し。
〇(まきえっと)雨で会話も聞き取りにくいからつい無言になるということありますね。
○(仙翁)無言で語る、いい風景ですね。
夏の思い出小児科の老先生 藤三彩
◎(珠子)実は私も「小児科の老医師」で作ってみたのでした。「夏の思い出」という季語の斡旋に脱帽です。
〇(楊子)白髪に白衣に聴診器に眼鏡。夏風邪は近くの町医者に行くとすぐ治った。
◎(アネモネ)リズムがぶっきら棒だけれど得心。
結界は児童公園みみず鳴く 楊子
○(あちゃこ)この場合の結界の意味するものは?と少し悩みました。季語との呼応がいいですね。
○(ちせい)季語は「みみず鳴く」。結界と言う発想が面白い。
○(敏)「この鳴き声のような音は、児童公園という結界によって守られている蚯蚓のものに違いない」という、俳人ならではの作品。
◎(仙翁)児童公園は、確かに結界かもしれません。
〇(珠子)この場合の結界はゲームの結界?ゲームのことはわかりませんが、我が家の近くのベンチと水道の蛇口しかない小さな公園に、スマホを覗きながら怪しげな動きをするオトナがたくさん出入りしていました。中年が多く老年も女性も結構おりましてお互いに無言。そういう場面なのかなあ?
◯(卯平)真夜中の公園は結界という発見に共感。景(単なる写生だけでなくその映像の立ち上がり)からの自己物語は幾重にも広がるだろう。季語の位置から少々のおどろしい公園が。
○(ルカ)結界と児童公園が結びつかないのが、面白いです。季語が効いてます。
〇(宙虫)みみずがいいところをおさえている。
喋れること忘れ秋雨に煙る街 宙虫
〇(まきえっと)こういう雨って鬱陶しいですね。
(選外)(道人)意味は求めず、言葉の持つ魅力を追いかけたくなる句です。
ふるさとはA棟II号桐の秋 道人
◎(あちゃこ)桐の実を結び、秋となって大きな葉を落とす桐。桐の四季が故郷を離れてからの半生を語っているよう。かつての団地は?
◯(アゼリア)ふるさとは自然豊かな郷とは限りませんもの。
○(敏)都会のマンションで生まれ育った人たちにとっての「ふるさとナンバー」といったらよいでしょうか。「桐の秋」にやるせない想いが漂います。
◎(餡子)大きな団地にはそれぞれの棟に、○棟△号とかいてありますね。よく酔って間違えてよそのお宅に帰宅したなどと言う話もありましたね。
〇(珠子)集合住宅がふるさとという方はどんどん増えているのでしょう。「桐の秋」ですから駅からバスに乗って10分ぐらいでしょうか。
〇(楊子)桐の花がいいかどうかはわからない。もっといい季語があるかもしれない。しかし作者は桐の秋としたという覚悟がいい。
〇(藤三彩)庭に築島があるようなお家に誰もが住んでいるわけじゃない。小さくてもわが家
◯(卯平)既に捨てた故郷。何時も帰るのは3LDKの公営住宅。若干の寂しさは感じているのか。季語の位置が微妙なここもちを表しているのか。
○(幹夫)所謂「桐一葉」の季語に、古里を団地という狭き空間に設定したところに共感です。
○(ルカ)具体的なところがいいです、
○(アネモネ)「ふるさとはA棟Ⅱ号」にやられました。
ランドセルに秋思しのばせ下校の子 アゼリア
◯(道人)2学期初めには心模様が色々変化する。「愁思しのばせ」が巧い。
○(餡子)夏休みが終わりの日には、憂鬱で、登校したくなる子が多いようです。まさに「秋思」ですね。無理をせずにね。
○(幹夫)ランドセルしょってしょわれて・・・一人の下校は一寸切ない。
○(アネモネ)この発想なかなかです。上手い!
蓋のある瓶をさがして秋黴入 宙虫
◯(アゼリア)本当に降れば土砂降りで蓋が欲しいです。
◯(道人)秋黴入に焦点を絞った抒情が佳いですね。
◎(楊子)仕舞わなきゃ、あの夏もこの夏も。ちょっと大きめの瓶がいいんですけどなかなか見つからない。
秋出水市の広報が破られて ちせい
「団地族」今は死語なり秋の雨 多実生
○(餡子)団地族・・・1950年代からでしたかね。わが町の隣にも常盤平団地という当時は見学者が来るほどの有名な団地があります。今は高齢化が進み、孤独死なども増えて来ています。2DKの当時そのままのモデルルームが博物館に残してあります。死語ですか・・・。秋雨が冷たい。
〇(藤三彩)高度経済成長期も死語なのですね。
○(アネモネ)「団地族」も「バブル」もほんともう死語。
(選外)(幹夫)嘗ては、秋篠宮文仁親王妃紀子さまの川嶋一家がそうでした。いみじくも、お二人の婚約記者会見は、平成元年9月12日の慶事でした。
(選外)(ちせい)季語は「秋の雨」。団地族、ああ、そんな言い方ありました。
いつの間にか母の背を超し休暇明け 餡子
〇(まきえっと)夏休みって大きく成長します。いろいろと。
○(幹夫)上8が奏功。まるで竜宮城の浦島太郎風に長かった夏休みの特性が、素直に詠まれており共感です。
一葉落つ雨の鳴りたる石畳 幹夫
○(ちせい)季語は「一葉」。霧の葉の落ちる音と雨の音の合奏だと思いました。
○(仙翁)雨の鳴る、面白い表現ですね。
〇 (多実生) 濡れた石畳、貼り付いた落葉は意外に取れぬものです。
◎(ルカ)詩的表現に惹かれました。
裏窓に手を振る訣れ九月尽 卯平
○(餡子)映画の1シーンみたいですね。こんな経験が有ったような無かったような・・・。青春の1ページ。
広島は、まだまだ暑い日々が続いています。広島カープは頑張っていますが、何とかAクラスに入って欲しいものです。今まで三連覇して来たので、来季から新たなスタートです。とにかく、選手を育てるしかありません。