つづき
万緑や辺鄙な島の猫屋敷 幹夫
〇(ちせい)そんな噂の屋敷があるのかもしれません。無人であれば猶更。
空梅雨やつくづく湖の底あらは アネモネ
○(泉)「湖の底あらは」という光景は、本当に悲しいものです。
〇(メイ)「つくづく」に作者の声が聞こえてくる。
○(敏)水の引いた湖底は「つくづく」露わなのでしょう。
帰省する度に抜け行く島言葉 餡子
◎(瞳人)都会の色に染まらないでねぇー
◎(楊子)成長する若者をたのもしげに、そして少し寂しく詠んであります。
○(泉)島に残る人、島を出て行く人、人生いろいろです。
◎(卯平)こうして島の少女は都会の女へと変貌するか。
◎(道人)山里育ちですが、「抜け行く島言葉」に共感。
◎(アダー女)故郷の言葉が次第に自分の中から薄れていく。淋しいような、自分はもうよそ者なんだという故郷への違和感。上手い表現だと思います。
◯ (アゼリア) こうして次第に都会の人になっていくのでしょうね。
○(幹夫)太田裕美のヒット曲「木綿のハンカチーフ」を口遊む。島言葉が抜け行くのは、成長でもあり寂しくもあり。
〇(宙虫)帰省してくる人から島言葉が消えていく・・・逆に作者が帰省すると、島の人たちが島言葉を話していない・・・。という読みもあるな。
河童忌やわが町箱庭波しづか 瞳人
◎(あちゃこ)箱庭の比喩と河童忌の取り合わせがなんとも言えない。
(選外)(藤三彩)芥川龍之介の忌日1927年(昭和2年)7月24日に「や」付くが夏の季語の「箱庭」との取り合わせがよくわからない
島つなぐ橋潜り抜け夏に逢う まきえっと
○(アダー女)世界文化遺産になった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。五つの橋が本土とつながっている天草。その橋を抜けながら「あ〜夏だなあ。」と感じている味わい深い一句と読みました。
夏潮の寄する未来の遺品かな 卯平
○(泉)不思議な俳句だと思います。「未来の遺品」とは何でしょうか?
◎(まきえっと)「未来の遺品」と言われるとそうだなと思いました。
夏干潟ぶりきのひとのねじ切れて 宙虫
◎(泉)「虹の彼方に」という古い名画に、ぶりきのひとが出て来ます。
〇(メイ)小劇場の舞台になりそう。
〇(めたもん)「ぶりきのひと」という表現がユニークだと思います。流れた時への哀しみが漂います。
湧き出ずる山の一滴夏の海 アダー女
◎(仙翁)山と海は繋がっています。
◎(藤三彩)多摩川の源流の一滴は笠取山にある。水干の「水神様」の石碑から東京湾にたどり着く138キロの水の旅に思いを馳せる。そして、山と森の恵に生かされていることを知る。
◎(敏)山から滴った一滴一滴が「海」になってゆく、という壮大な時間の流れを背景に置いての作句でしょうか。
◯ (アゼリア) 上五中七の措辞が素敵です。色々なことを暗示していると思います。
〇(まきえっと)山の一滴がやがて大きな海になる。
沖待ちの船影夏至の潮満ちる 珠子
◯(アネモネ)涼しそうないい景だと思いました。
◯(道人)一連の写真は矢張り「夏潮」が主人公。こういうキチンとした写実句は中々詠めません。
〇(メイ)船の待機中の光景が、鮮明に描写されています。
遠小島振り返らずにボート漕ぐ 仙翁
〇(瞳人)地球の裏側まで行く勢い、でだ
〇(楊子)逃げなのかもしれない。そのようなこともあったかもしれないという記憶。
◯(ルカ)何かロマンを感じる一句です。
◎(餡子)藤田湘子の「愛されずして沖遠く泳ぐなり」を、思い出した。何か鬱屈した想いを持った作者なのだろう。
〇(メイ)小島に何を残してきたのか、きっぱり前だけ見ている気持ちよさを感じます。
〇(ちせい)真摯な姿勢だと思いました。
◎(幹夫)ゆっくりとボート漕ぐ。明日への旅立ちが詠まれる。
◎(宙虫)ボートを漕ぐ主人公の気持ち、息遣いが届きそう。前向きに進むボートであるように祈る。
炎帝に送電塔の武者震い メイ
○(泉)全国どこでも、送電塔があります。電気が「命」の世の中です。
〇(仙翁)送電塔の身震い、ありそうですね。
〇(藤三彩)これから溽暑の真夏日を迎える。ワクチン接種もコロナ感染も終わっていなくて身震いがする。水風呂に浸かってやり過ごそう。
○(あちゃこ)この夏の電力不足は?比喩が見事。
夏の山反射に苦悩が増加して ちせい
今月の写真について
三枚とも熊本県上天草市の天草のしまのひとつ「永浦島」からの景色。
橋は天草五橋のうちの三号橋。
★★★
次回句会告知はまきえっとさんからです。
次回もたくさんの参加をお待ちしています。
広島はいよいよ暑くなって来ました。さらに大雨が降り、いよいよ梅雨も終わるようです。今年も熱海では土砂崩れが起こりました。今後も水害が起こる可能性があります。お互いに助け合うしかありません。