やはり梅雨の末期。
熱海の土石流、心痛みます。
人災の可能性も大きく、あちこち開発が進む地域には同じような危険性をはらむ箇所がありそうで、考えてしまいます。
コロナ、終わりの見えないループにはまりこんで・・・・。
七月、もうじき梅雨が明けるでしょう。
少しでも明るい夏がくるように願っています。
結果発表、今回も二回に分けて。
結果発表
万緑の汀に思ひ出拾ひをり アゼリア
○(敏)汀で拾うといえば貝殻でしょう。それを「思ひ出」としたところが一句の眼目。
○(あちゃこ)遠い日の良き思い出。万緑が効いている。
天蓋のこの木なんの木蝉鳴く木 珠子
◯(ルカ)小林亜星追悼句。
〇(春生)リズムの良い句です。ハワイにある木?
思い出を探す海岸遠く雷 まきえっと
〇(瞳人)どんな? それ、知りたいな
◯(道人)遠雷がいいですね。「遠き雷」もありかも。
○(餡子)全く同じような発想の句を私も作りました。意気投合!で、戴きました。
夏の海孤独なままに浜を掘る ちせい
○(卯平)石原裕次郎の世界。錆びたナイフは出てきたか。
夕焼けに染まりたくない潮目どき 宙虫
〇(春生)海一面夕焼けに染まっていくのに、潮目は白さを残しているのですね。
〇(まきえっと)気持ちわかります。
ダム湖にも龍は棲むのか霹靂神 めたもん
〇(楊子)きっと棲むとおもう。出水はきっと龍の怒りかもしれない。意外な視点です。
宇宙へと戻りゆく水半夏生 あちゃこ
〇(楊子)水の地球ではないのかもしれないという視点が新しい。半夏生という季語が不安を含む。
◎(珠子)海と雲の距離では収まらぬ水の世界。でっかいなあ!
〇(仙翁)なかなか雄大で、面白いですね。
○(敏)白くなった葉の半分は、水分が抜けて天空に還っていったと見たのでしょうか。
○(アダー女)山の一滴が大河へ。そして海に注ぐ水はやがて気化して空へ。循環しているんですよね。宇宙と水、半夏生の取り合わせが詩的。
◯ (アゼリア) スケールの大きさに惹かれました。半夏生の季語が効いていると思います。
〇(まきえっと)壮大な景ですね。
○(宙虫)半夏生が大河ドラマの結末によく合う。
出水跡河口まで追う漢の背 道人
◎(ちせい)海に遊びに行ったのかもしれませんが、意味深な。
炎天や入江の浜の逸れ犬 仙翁
〇(めたもん)暑い中、浜辺をさまよう犬。いつかどこかで出会ったような不思議な気持ちになります。
(選外)(道人)逸れ犬は作者の暗喩でしょうか。
鉄塔の荒ぶる風よ青岬 ルカ
◯ (アゼリア) 鉄塔が印象的で私も作りたいと思いましたができませんでした。目も開けていられないような強い風を感じます。
遠き日の欠片を探す夏の海 餡子
◯(ルカ)青春を感じます。
〇(仙翁)何を探しているのでしょう。
〇(藤三彩)昔日の思い出や記憶、またしなかった事ややっていたならば等々ありますね。
○(敏)若かった頃の自分の「欠片」を探すという。「欠片」は思い出。良いことも悪かったこともすべては自分の欠片、分身だったのでしょうね。
○(アダー女)矢張り昨夏の豪雨災害の記憶なのでしょうか。本来なら青春時代の甘酸っぱい記憶の欠片と読みたいのですが・・・
橋桁は谷の廻廊旱星 メイ
○(卯平)写俳として成功。
対岸は夏の装い橋渡る 敏
〇(瞳人)行ってみたら、さあ、どんな風景かなあ
◯(アネモネ)橋渡る、が楽しそうです。
〇(ちせい)山の彼方見たいなうきうき感なのかもしれません。
○(幹夫)万緑の対岸、写真の景が率直に詠まれており共感です。
鮎の影探す逍遥男の背 藤三彩
暴れ川記憶そのまま夏がまた アダー女
○(あちゃこ)人の記憶は消えても自然は覚えているのかも知れない。
◯(道人)水害列島日本、今年もまた。
〇(藤三彩)日本各地での大雨による被害が報じられる。熱海の土石流の家々が押し流される映像も!
〇(春生)水害の記憶が生々しいのに、また今年も…。
○(宙虫)インタビューで「生まれて初めて」と口にする自然災害。そのまま・・・で良かったのかもしれない。
夏浜を探すをとこの破片かな 卯平
白南風の汀に独りぼつちかな 幹夫
〇(春生)孤独に耐えなければなりませんからね。啄木を思いだしました。
(選外)(道人)梅雨明けの誰もいない汀。臨場感あり。
ラインOFF夏の海峡ひとっとび 楊子
〇(珠子)自由!自由!便利なものは縛りもする。
◯(道人)ITに疲れた現代人のひと時のささやかな夢想。
○(餡子)いっそ、無人島に「歎異抄」一冊もって島籠り。
夏の花大河の流れゆつたりと 春生
青空や白いヨットに裕次郎 泉
〇(瞳人)三点セットですね
○(餡子)裕次郎がデビューした頃を、知っている年代です。「明星」や「平凡」の時代。
〇(藤三彩)静岡の焼津で地引網をしていたら白いヨットに白服の船長が座っていて髭を蓄えた森繁久彌だった。
○(幹夫)裕次郎には青空の下波を奔るヨットがいかにも似合う。
雷鳴の昼を重たく椰子の影 アネモネ
〇(楊子)幹ごとゆさゆさと揺れる椰子様子がいかにも重そうです。
〇(珠子)梅雨の終わりの遠雷でしょうか。椰子の影が重たいとも、心が重たいとも。黒南風から白南風に変わると、気持ちも影の見え方も変わります。
〇(仙翁)昼を重たく、面白い表現ですね・
◯(道人)椰子の下に響く雷鳴はきっと重いのでしょう。
○(宙虫)気持ちにつなががる重さ。
運動不足土用蜆の汁啜る 藤三彩
炎昼の湾たむろする光かな めたもん
〇(メイ)ギラギラと熱い湾に、時間が静かに流れている落差。
○(敏)炎昼の湾の凪を、光りがたむろしている?と見たところがユニーク。
〇(ちせい)擬人的な感じの光に詩性を感じました
〇(まきえっと)光が湾をたむろするって面白いですね。
分校の授業にぎやか若葉風 泉
◯(アネモネ)若葉風がいいと思いました。
〇(楊子)便利な世の中になってなくなった幸せな風景かもしれません。
◯(ルカ)在りし日の爽やかな思い出。
○(卯平)若葉風と分校では予定調和の世界。しかし中七に詠み手の経験がある。
◎(春生)この分校は児童も多そうですね。少なくても子どもは元気ですからね。
◎(アゼリア) 少し寂しい句が多い中で、二十四の瞳を思わせる明るい句で子供達の明るい声が聞こえてくるような気がします。
○(幹夫)壺井栄「二十四の瞳」は小豆島の子供達とのふれあいを書いた。
透明な橋をくぐってゆくボート ルカ
〇(めたもん)上五「透明な」が「橋」に掛かるのか、「ボート」に架かるのか。そして、「透明」とは何を表現しているのか。不思議で気になります。
炎暑また水漬く屍の茫として 瞳人
◎(メイ)「炎暑また」が「茫として」に響きあう、死者への哀悼の句。
○(アダー女)この上なく酷い情景。こういう句を詠まれたのは、よくよく悲惨な記憶をお持ちなのだろう。
船長に退職期限南風吹く 楊子
◯(アネモネ)切ないけど、「南風吹く」で新たな出発が。
○(泉)船長さんも、遂に退職ですか。長い間、ご苦労様でした。
○(あちゃこ)写真からの発想の飛ばし方が面白い。
○(卯平)島と島を結ぶ定期船の愚直な船長職を終える姿。詠み手の父か。素直な気持ちが読み取れる。
○(餡子)いろいろな航路を巡り、諸国の港に立ち寄ったであろう船長さん。無事に勤め上げましたか!お疲れ様。家族が一番嬉しいでしょうね。
〇(ちせい)区切りの意識は抒情を醸すのかもしれません。
七月へ解き放つ水蒼き星 あちゃこ
〇(まきえっと)バシャバシャと水を掛けるなんてことをしていない。解放感を感じます。
夏雲に沿って航跡まっしぐら 敏
○(あちゃこ)爽やかで大らか。
〇(仙翁)雲と航跡の様子が見えます。
〇(めたもん)青と白の直線的で大きな景。夏らしい気持ちの良い句だと思います。
白南風や太き水脈曳く臨時便 道人
◎(アネモネ)この景好きです。
◯(ルカ)臨時便に臨場感。
〇(珠子)海は船を置いて生き生きしてきます。真夏へ!
◯ (アゼリア) シーズンで臨時便が出たのでしょうか?
○(幹夫)増便(臨時便)が水脈曳きながら伸びやかに奔る。
○(宙虫)臨時便が活気を運ぶ。
夏の川眠れる獅子のごと静か 春生
〇(珠子)「眠れる獅子のごと」に共感しました。突然に豹変して人の命も呑み込む川でもあります。
◎(めたもん)高い所から見える川の流れ。中七は下五の「静か」の直喩ですが、上五の今はゆったり流れる「夏の川」の隠喩にもなっていて巧みです。
隠れキリシタン住みし岬の落とし文 アゼリア
◯(アネモネ)特選候補。「落し文」がなかなか。
◎(ルカ)隠れキリシタンに、弱い私です。
〇(珠子)静謐な叙情。端正な句。落とし文が効いています。
○(卯平)季語との関係で上五中七が生きている。
○(餡子)あの写真から、然もありなんと思いました。落し文がいいですね。
〇(藤三彩)落とし文もまた人の目につかないように棲んでいる。
〇(春生)季語「落とし文」で、句に深みが出ました。
〇(めたもん)「隠れキリシタン」が時の流れを経て伝えるものは?と、考えさせられます。季語「落とし文」の効果でしょうか。
○(アダー女)遠藤周作の「沈黙」を連想しました。30年程前、長崎から船で天草に渡ったことが思い出されます。信者同士の暗号の落とし文でしょうか。
つづく
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