(つづき)
帰省子に地酒猪鍋満天の星 アゼリア
〇(珠子)日本中にこういう姿が。しかし、元旦の能登の大地震。刻々とひどくなる被害情報に、ふるさとの包容力は当たり前ではないのだとショックを受けています。
○(アネモネ)ふるさとてんこ盛り!
◎(瞳人)帰省といわれると、どうしても時季外れ? なのだけれど
〇 (多実生) それぞれですが、共通するのが満天星。
〇(あき子)帰りを待つ家中の喜びが溢れています。
山眠る海の静謐守る飛機 ちせい
◎(まきえっと)少し硬い言葉ですが合っています。季語の取り合せもいいです。
雪匂う漢の背中杣に生く あちゃこ
〇(楊子)「雪匂う」という言葉が「漢の背中」を形容する言葉として詩的です。
〇(めたもん)上五、中七の「雪匂う漢の背中」がいい。下五「杣に生く」も骨太で雰囲気があります。
眠られぬクマの爪痕雪こんこ 道人
〇(春生)熊もかわいそうですね。お腹がすいて眠られないのでしょう。
○(泉)クマも餌不足で大変です。
○(あちゃこ)誰に罪があるのか。熊は眠りたいはず。
厳寒やロシア映画の古切符 あき子
〇(楊子)美しい雪のロシア映画のセピア色になったパンフを想像しました。
○(藤三彩)ロシア映画は『アンナ・カレーニナ』?寒い映画館で観たようなことを懐古します
〇(瞳人)プチンといふひと、いなければ
◯(道人)季語がつき過ぎのきらいはあるが、今はロシアから目が離せない。
○(卯平)「戦艦ポチョムキン」であろうか。古切符と厳寒は近似の世界ではと思うが、句材の発見に共感。
◯(アゼリア) 学生時代よくロシア映画を観ました。懐かしいですね。
対岸の街は故郷初茜 卯平
○(アネモネ)「初茜」がいい味出してます。
○(餡子)対岸と言うより向かいにある島からこちらの街に嫁いできた方?物語的世界の句。
○(あちゃこ)すっきりとかたち良き一句。
◎(ちせい)望郷の念ですね。新年を言祝ぐ一句。
雪を踏み山に呑まれる山仕事 多実生
〇(仙翁)冬の山仕事は、大変ですね。
〇(まきえっと)くれぐれも注意をしてください。大変さが伝わってきます。
ナビに無き山凛と立ち冬晴るる めたもん
軽トラの荷台の子犬初詣 あき子
〇(春生)子犬によって臨場感が出ました。
○(アネモネ)「子犬の初詣」に一票。
◎(道人)限界集落の初詣ながら、あくせくしないノンビリ感に惹かれた。
○(幹夫)今から初詣?子犬は取りあえず軽トラの荷台に乗っけて、移動中は助手席ですね。
◎(泉)ユーモラスで暖かい初詣です。
〇(めたもん)田舎のお正月にありそうな景。温かな句で、ホッとした気持ちになります。
(選外)(卯平)類似感はある。
海を越え届く郵便木守柿 まきえっと
〇(珠子)郵便料金の値上げは痛いですが、こういうところにも同一料金で届けられるのですから。木守柿の斡旋がいい。
〇(カンナ)取り合わせが良いと思います。
○(餡子)海岸のあるところに住んだ経験が無いので、海の向こうから来る物資を待ち焦がれる気持ちは分かりませんが、いい風景ですね。
〇(めたもん)上五、中七と季語「木守柿」との取り合わせが上手い。遠く海外で活躍する子と故郷を守る老いた親でしょうか。
〇(あき子)木守柿が守るふるさとへ届く郵便、海を越えから始まるリズムが軽やか。
〇(ちせい)よくぞ届いてくれたと言う安堵感と木守柿の組み合わせがいいと思いました。
○(宙虫)海がもたらす距離感が想像を膨らませる。
(選外)(卯平)国際郵便と木守柿の関係をどう観賞するか
雪嶺の獣も鳥も寄せつけず 春生
○(泉)それでも、人間は登る?
開拓の鈴音高き橇の馬 幹夫
○(あちゃこ)開拓地と橇の取り合せがいいですね。
◎ (多実生) 小説でしか知りませんが、雪道の馬橇の鈴が感動を呼ぶ。
◯ (アゼリア) この写真とは少しはなれますがアメリカの理想に燃えた開拓時代を思わせる素敵な句と思いました。
(選外)(卯平)「開拓」と「橇」は予定調和の世界ではないか。
配達員安否訪ねて年賀状 藤三彩
〇(カンナ)ありそうな情景。
◎(餡子)郵便も土日の配達が無くなり、郵便屋さんも、今までのようには配達に来ません。そんな中、過疎の村ではこんな景が見られるでしょうね。村人と配達員の暖かなやりとりが聞えてきそうです。
○(泉)過疎の村では、配達員の役目は大切です。
〇(仙翁)こういう村は多くあるのでしょうね。
◎(宙虫)郵便のシステムが将来大きく変わるかもしれない。限られた人としか接することができない人が増えているんでしょうね。
風花に眠りゆく児のまぶたかな めたもん
(選外)(卯平)季語には共感。中七下五には詠み手の孫への思い。「風花に」の「に」と下五が整理されれば選対象。
北斎の浮世絵の青山眠る カンナ
◎(珠子)あの海の写真にはお手上げでしたが、「北斎の青」とは!写真があっての共感なのかもしれませんが、この感性に◎を。
◯(道人)北斎の青と「山眠る」の取合せがピッタリ(過ぎるかも)
〇(楊子)いま、テレビの「博士ちゃん」で北斎特集を見ていて「青」になるほどと思いました。
〇(あき子)印象的な写真の青を、巧みに捉えてると思いました。
足跡の無いのは雪女郎だったのか 餡子
〇(春生)そうかもしれません。雰囲気のある句です。
〇(瞳人)それだって、来てほしいですね
〇(ちせい)中々の感慨ですね。一瞬心が恐怖で凍り付いたのかもしれません。
◯ (アゼリア)怖いというよりは、楽しい句ですね。
戦災が肌身にブギウギ去年今年 瞳人
○(藤三彩)物語は巡業先で玉音放送を聞くことに。春の最終回は近い
雪にあこがれ雪におののき村ひそと 宙虫
◎(藤三彩)雪が積もる冬に身を硬くする。一晩に50㎝以上も雪が積もる暮らしはスキーができると喜んではいられない。
○(あちゃこ)雪への憧れはピンときませんが?雪と共に生かざるを得ない村の現実。
◎(あき子)村人の雪へのまるごとの感情が伝わってくる。「村ひそと」がいいですね。
〇(まきえっと)旅と生活は違いますね。憧れだけではすまないですね。
◯ (アゼリア) 学生時代の友達も雪下ろしが大変になり倉敷の息子さんのところへ引っ越しました。
うっすらと冠雪鳶の息づかい 仙翁
〇(珠子)南国の雪に戸惑う鳥たち。鳶の息づかいに思いを馳せた感性がステキ。
◯(道人)見えない「鳶の息づかい」を詠んで読み手に納得させる力量に一票。
〇(まきえっと)取り合せがいいです。
風花や村に独りのランドセル 珠子
◎(アネモネ)「風花」が効いてます。
○(餡子)矢張りだんだん子供の数も減ってきて小学生は一人と言う過疎の村もあるのでしょうね。盛んに移住が勧められていますが・・・。
〇(楊子)写真にはない子どもやランドセルへ発想を飛ばしたことがうまい詠みです。
◎(卯平)過疎の村。一年生はただ一人。中七下五の景を「風花」が支えている。迷わず特選。
〇(仙翁)こういう村も多いのでしょうね。
◯(アゼリア)足腰の丈夫な子になりますね。箱根駅伝で区間賞取れそうです。
○(宙虫)小学生がひとりきり。もうこの子が最後のこどもかもしれない。
村人は老人と犬はだれ雪 楊子
〇(珠子)生まれ順が変わっていたら私もそのひとりだったかもしれません。
〇(カンナ)村に取り残された老人と犬。季語が適っていると思います。
霜枯の段畑越えて郵便夫 道人
○(アネモネ)郵便屋さん、お疲れさまです。
〇 (多実生) 歓喜した風花は変わらないが過疎は深刻です。
◎(幹夫)風花の中子供が飛んできそうなメルヘン。
○(幹夫)季語が素敵だ。
〇 (多実生) 山間地の郵便配達の苦労が偲ばれます。
○(あちゃこ)上五中七のリズムよく、郵便夫の着地がいいですね。
旅立ちの龍の咆哮年新た あちゃこ
〇(カンナ)龍の咆哮が良いですね。
(選外)(藤三彩)龍はどこへ旅立つの?
かじけ鳥お出でお出でと赤実生る 多実生
〇(ちせい)自然は厳しいようで、優しい側面もありますね。童謡のような感じをいいと思いました。
冬の森坂に新聞落ちて居り ちせい
〇(めたもん)美しくも何ともない物が、妙に心に引っかかることってあります。このような景を詠んだことに共感です。
〇(あき子)物語が始まりそうな、何気ない情景に惹かれます。
○(宙虫)上五にやや不満を感じるが坂に落ちた新聞にドラマを見る。
拝駐在の留守居は妻子石蕗の花 アゼリア
郵便のバイクせはしく年の果 アネモネ
○(幹夫)如何にも師走。元旦はもっと忙しい!
冬晴や世界で走るスーパーカブ 泉
○(幹夫)ものづくり日本だ!
今月の写真
昨年末の寒波、九州の山間部でも雪となった。
一枚目、国道57号線の一番標高の高いところ熊本と大分の県境の雪景色
二枚目、長崎県の雲仙の冠雪。
では、次回の句会まで。まきえっとさんにバトンタッチ。
広島はあまり寒くなりません。もちろん、雪は全く無し。雪国の人々は大変だろう、と想像するばかりです。
またまた、能登半島での大地震です。つくづく日本は地震が多い国だと痛感します。南海大地震もそろそろ起こる時期らしい。地震学者も大変です。