つづき
ちるさくらセーラー服もほころびて あき子
〇(藤三彩)入学から卒業まで着てきたセーラー服も綻ぶ・・わかる。
セピア色のセーラー服笑み花の陰 アダー女
〇(仙翁)昔の笑い中の苦いの思い出、いいですね。
初桜セーラー服のふたりかな 春生
○(アネモネ)いいですねえ。赤川次郎の小説を思わせるような。
◯(ルカ)ドラマがあります。
(選外)(卯平)中七下五の景は報告では。「ふたり」は今回の写真からであろうが、その景から自分の中に取り込んだ心象を「モノ」に託して更に具現化すると詩情へと辿り着くのでは。
花霞危うさ隠す街の音 あちゃこ
〇(藤三彩)何の音だろう?衝突や警戒音だったり街の不安が感じられる
(選外)(道人)季語の斡旋が巧い。「街の音」が分かりにくいかも。
リハビリや花はもうすぐ満開に 泉
〇(藤三彩)筋力が低下したり病気に罹りやすくなるコロナ禍はたまらない。お大事に
○(アダー女)リハビリは長いですねえ。私も昨年12月初旬に痛めた膝痛のリハビリにまだ通っています。花は満開過ぎて葉桜になんなんとしているのにまだまだかかりそうでうんざりしています。治りが悪いのは年のせいかな?
嘘ついて皆頬かぶり四月馬鹿 瞳人
(選外)(卯平)「四月馬鹿」と言う季語を上五中七で説明しているだけでは。上五「嘘」を活かすなら下五はたとへば「万愚節」で納めると「四月馬鹿」よりは「おや」と思わせる。しかし「嘘」を更に活かすなら中七、下五全体の推敲が必要かも知れない。
大空へ自撮り棒入れ卒業す 楊子
〇(珠子)「大空へ入れる」がおおらかで惹かれました。卒業の一コマとして鮮やか。
◯(道人)あるある感満載。
制服の釦の桜入学す 珠子
制服の袖のほころび花曇り まきえっと
〇(仙翁)着古した制服、袖の綻び、経験があります。
◯(道人)「花曇」が「袖のほころび」とピッタリ。
○(敏)多分、花曇りの下を歩む卒業生をイメージしたのでしょう。
○(ちせい)綻びと花曇り。ボタンが取れそうだったのかもしれません。
(選外)(卯平)視点はなるほどと思う。この季節、制服が醸す詩情はそれなりに享受できる。その制服の袖に視点を移し、更にその状態(ほころび)を描いている。そこまでは共感。但しこれらの措辞に対する「花曇り」では予定調和の範囲では。同じ範疇として「養花天」も可能だし、「飛花落花」でも詩情は伝わるのでは。惜しい句だ。
城山に街を見下ろし卒業す アネモネ
○(あちゃこ)新しい日々に向けての様々な思いを感じさせます。
〇(珠子)私の中学も高校も高台にありました。小中と全く変わらないメンバーでしたので、中学卒業式時「この先、この全員が顔を揃えることはない。」という担任の言葉を全く信じなかったのですが、実際にそうなりました。
○(宙虫)自分の記憶がこの句にのっかる。
春昼の余白の空の青さかな 敏
○(卯平)シンプルな景。「余白の空」は春昼の景を少々曖昧な中に心象的に消化しているのでは。それを「空の青さ」で補っていると観賞した。「青」か「蒼」か。春が醸す翳を詠うとすれば後者か。
○(アダー女)桜満開で空を埋め尽くさんばかり。でもその隙間に見える(「余白の空」の措辞が良いと思います。)空の青さが美しく、それが一層桜の美しさをひきたてているような。
〇(あき子)雲に覆われた空の余白のような青い空を見上げていると、ほっとしたような切ないような、その青さがこころに染みる。
◯ (アゼリア) 空の青さがあるから花の美しさも際立つのですね。
学び舎にリモート授業城の春 藤三彩
○(泉)「リモート授業」は、すっかりお馴染みになりました。寂しいですね。
◯(ルカ)花の季節に友人と会えないなんて。寂しい事です。
(選外)(卯平)上五の場所と下五の場所が乖離していないか。「リモート授業」を活かすとするなら、上五は情報が重なっていないか。更に「城の春」では季感が曖昧では。
卒業やひとり遊びのケンケンパ 卯平
○(アネモネ)シミジミ感横溢です。
〇(楊子)「卒業」という季語に感傷をだけをもつ必要はありません。「ケンケンパ」がスパッとした語感で清々しい。
○(宙虫)ふっとエアポケットに落ち込む感覚。次に向かう期待感もあり。
住民票移し四月の水の色 宙虫
◎(まきえっと)四月は移動の季節ですね。「水の色」への展開がいいですね。
◎(楊子)「住民票」という俗な言葉を使って詩にしています。きれいな澄んだ色が想像できます。
〇(珠子)春の異動に伴った引越しなのでしょう。「四月の水の色」が曖昧でもあり魅力的でもあります。
◎(あき子)新たな生活へ向かう四月、未知への期待と家を離れる不安が、四月の水と響き合う。水の色は何色だろう。
○(ちせい)水の色に着目するとは、玄人なのかもしれません。普通同じ色にしか見えないでしょうから。
◯ (アゼリア) 初めて住民票を移した半世紀以上前のことを思い出しました。米穀通帳を持って上京しました。水の色ではなく水の不味さにおどろきました。
(選外)(卯平)この句の命は「住民票移し」。この措辞に色々な物語が詰まっている。では四月の位置はどうであろうか。確かに今の時期は入学入社等で住居が変わる。だからこの季語で「住民票移し」の結論が出ていてそこで詩情が殺がれる。それに続く「水の色」は取って付けたような措辞で実感が伝わらない。
言葉なく花の下行く分かれ道 仙翁
○(あちゃこ)それぞれの新しい人生が今始まろうとしているのですね。切なさもにじみます。
○(アダー女)卒業、初恋の別れ・・・あそこまで行ったらお互い別の道に別れ行くと思うと余計にしゃべる言葉もありません。
〇(めたもん)花の下の別れ。間接的に「分かれ道」としたところも上手いと思います。
◯ (アゼリア) 四月は別れの季節でもあるのですね。
〇(まきえっと)映画のワンシーンみたいです。
〇(瞳人)ふられたっていいじゃないの、はなは来年だって、さくよ
卒業生渡り廊下に今揃う めたもん
〇(瞳人)そろって、これから窓ガラス、割りに行くという悪が、むかしはいたけど
◎(珠子)「今」に臨場感たっぷり。「卒業生入場」というアナウンスとともに式場の扉が開きます。
石垣の石のいろいろ水温む ルカ
○(アネモネ)シンプルイズベストです。
◯道人(道人)石垣の石に同じ形はない。しかも数百年の歳月を見て来た。「水温む」にほっとする。当たり前のでことを詠んで奥行きがある句。
〇(あき子)石垣を目の前にして、いろいろあったなあ、と全てを受け入れているような作者を感じます。
風音のあとの囀り録音す 道人
(選外)(アダー女)春は風が強くてせっかくの鳥の囀りを邪魔しますよね。風が止んでからがチャンスです。
★今月の写真・・・熊本県宇土市の「宇土城跡」(隣は県立宇土高校)
それでは次回告知をお待ちください。
今日の広島は暑いくらいの陽気でした。プロ野球もゴルフも始まって、一気に春らしくなりました。それにしても、ロッテの佐々木投手が完全試合を達成したようです。
新型コロナあり、ウクライナ紛争があっても、日本は平和です。ありがたいことです。