人絶えし水の惑星水温む 餡子
○(多実生) 地球を大きく読んでいて爽快。
○(泉)「人絶える」新型肺炎で人類滅亡か・・・?
水の面の芥彷徨う二月尽 ルカ
◎ (アゼリア) 新型コロナウイルスに右往左往している現実を暗示しているような気がします。
○(敏)水面を彷徨う芥と季語との取り合わせが絶妙。
◎(幹夫)目の付け所がいいですね。
水温む石橋渡る猫二匹 ちせい
〇(仙翁)猫が二匹なのがいい。
○(幹夫)句材に共感です。
〇(春生)「猫二匹」がおもしろい。
○(泉)何となくユーモラスな俳句だと思います。
(選外)(藤三彩)ご近所猫の「くろ」と「みけ」は喧嘩せず仲良くひと皿の猫餌を食べている。猫二匹の縄張り関係は如何に
逆さまの春ゆらゆらと神の池 珠子
◯ (アゼリア)ゆらゆらとが春らしくて素敵です。
〇(ちせい)季語は「春」。水が鏡となる抒情。
○(あちゃこ)水面に逆さまに映るという句は、他にも見られますが、春ゆらゆらの表現に心情が投影されていて惹かれました。
〇 (多実生) 少し揺れる逆さまと現実の春。対比する二つの春の景観。
◯(卯平)この写真の「吟行」で得た句であろう。少々素直過ぎる句ではある。手柄は上五か。しかし、観念性は感じる。かと言って捨てがたい句である。
◎(餡子)逆さまの春がいいですね。
〇(楊子)春は明るいものという考え方を疑ってみる。気づかなかった逆さまの春。ちょっと神秘的。
○(泉)確かに池には、きれいな景色が逆さまに映っています。
◎(藤三彩)出雲の八重垣神社の奥の院「鏡の池」を思い起こす。縁結びの神様なのだ
◎(宙虫)解放感のある春とは違う。神の池なのに。憂鬱な春がそこに見える。
紅梅のみ寺の庇明るうす 道人
〇(仙翁)景色が見えます。
八重桜鏡のごとき水の面 春生
◯(アネモネ)「鏡の如き水の面」の言い古された言い方が「八重桜」で俄然生き返りました。
神さぶる水底の石春憂い あちゃこ
◯(道人)「神さぶる」には参りました。「愁い」ではなく「憂い」も合っています。
〇(藤三彩)神々(こうごう)しくなるという古語はなかなかに使えないもの。写真の雰囲気と春憂いの対比が何とも言えない余韻がある
○(敏)水底に蹲る石に憂いを感じたのは、「神さぶる」池と見て取った作者の心境そのものと思われます。
木の芽風水面は常の形映す まきえっと
○(餡子)どんな時代、どんな時も、水面は変わらない。正直にそのままを映す。
〇(宙虫)温暖化で木の芽風も姿変えているかも。映るものは変わりないのだが・・・。
風光る合格祈願の絵馬の誤字 アゼリア
〇(ちせい)季語は「風光る」。誤字が印象的ですね。「合格祈願の」がさらに印象的です。
◯(道人)俳諧味と明るさが佳いですね。
○(ルカ)私も見かけたときにとても微笑ましく思いました。季語がいいですね。
◎(卯平)よくぞ発見した。奉納者への吉報は、しかし、届くであろうか?読み手は届いて欲しいと願っている。だから、この季語。
〇(楊子)プラスとマイナスを上下に据えたところが楽しい。楽しい俳句もいい。
(選外)(幹夫)大試験では間違わないよう願っています。
寒桜咲いてあの世へまた一歩 多実生
○(あちゃこ)桜はどうしてもあの世を連想してしまいます。何故?
〇(珠子)実感・共感。でも生かされている間はガンバルのだ。
◯(卯平)実はこの句一度いただき、また消して、そして暫くおいて最終的には残した句。決め手は季語の位置。措辞は余りにも平凡。
◯(卯平)季語の位置はいい。が、「咲いて」は要らないだろうし、それ以外の措辞も上滑りの句である。但し季語の位置がこの句を選ばさせた。(※同句にふたつのコメントがありました。そのまま掲載しています。)
○(餡子)「来年の桜をみられるかしらね」という言葉をよく聞く。寂しい老いの句であるが近頃は私もこんな心境がよくわかります。
〇(藤三彩)この心境は達観なのか。また桜の季節を迎えた一年への共感とアイロニーを感じてしまう
空堀に一本の橋初桜 幹夫
○(ルカ)景がくっきりと浮かびます。
〇(珠子)この空堀は城にあるような大きな空堀ではないのでしょう。一本の橋が鮮やかにイメージできます。今年の桜はどんな形で迎えられるのでしょうか。
橋越ゆる櫻の里や黄泉の國 卯平
梅の香に清き水汲み寺参り 泉
春水の光もろとも掬われる 楊子
○(敏)「光もろとも掬われる」眩しい水の色が見えてきました。
○(ルカ)春水はひかりそのもの。
〇(仙翁)光と水の様子が面白い景色ですね。
○(餡子)美しい池の水面でした。美しい句です。
◯(アネモネ)「掬われる」か「掬わるる」の微妙なところが残りますが「光もろとも」に得心。
雨の日の彼岸桜の別れ道 仙翁
〇(宙虫)なんとも懐かしい演歌の世界。
清明や占う恋の浮き沈み 藤三彩
○(あちゃこ)恋の駆け引きも悩ましい。恋占いが懐かしい。
〇 (多実生) 恋も御籤も結果を待つと春が来そうです。
(選外)(卯平)ここまで言い切っては詩情はない。
透明な森でくむ水花こぶし 宙虫
◎(仙翁)いかにも、透明な森のようですね。
〇(楊子)花こぶしの取り合わせは少しどうか。清楚な春もいい。
針祀る赤い小さな橋渡り アネモネ
〇(ちせい)季語は「針祀る」。何か決意を秘めているようにも思えました。
○(ルカ)針と赤い橋の対比がいいですね。
〇(珠子)しっとりと静かな雰囲気のある句。こういう感性がすり減ってゆきます。
◎(春生)針供養の情景が良く描けている。
〇(藤三彩)裁縫箱・針箱も見かけなくなったが、「針供養の日」は?と調べてみると西日本は12月8日、東日本は2月8日と様々。お針子さんという言葉も思い起こす
橋渡る春の女神に会いたくて 敏
(選外)(卯平)この句を外したのは下五の「会いたくて」。「橋渡る」のは季語(春の女神)へ「会いたい」からと言う。「だから」「こうした」と言う理屈の句。
幻影の船が着岸氷面鏡 幹夫
◎(泉)新型コロナのクルーズ船かな・・・?
蒼々と泉揺らして竹柄杓 アネモネ
◯ (アゼリア)蒼蒼との表現がぴったりの色ですね。
〇(春生)美しい景を切り取りました。
〇(宙虫)竹柄杓がいい位置に座っている。
蹲に広ごる波紋芽木の風 道人
○(まきえっと)今の状況ですね。
〇(珠子)芽起こしの雨・芽起こしの風・芽起こしの太陽。桜が咲いたらウィルスが潜むかもしれない。
〇(春生)春の明るさが出ています。
〇(楊子)小さなつくばいも波紋がたつと湖や海の佇まいとなる。小さな春がやってきた。
◯(アネモネ)芽木の風の穏やかさがいかにもです。
現し世を映し切れずに春の水 仙翁
◯(道人)春の水には現世も隠世も超えた揺蕩いがある。
〇 (多実生) 当然の事の様ですが、現し世を映しの表現が良かった。
○(敏)現し世を映し切れないのは、作者自身の心そのものではないでしょうか。
○(あちゃこ)限りある水面に映るのはやるせなさ?中七に託した思いが伝わってきます。
◎(珠子)「現実」を映しきれない・把握しきれないのは仕方のないこと。何が起ころうと水は淡々と流れてゆきます。
◯(卯平)写し切れなかったのはこの写真「吟行」を素直に詠んだせいであろう。某女史俳人に言わせれば「写真に凭れた」句であろうか。また、上五から中七がこのままでは強い。それを消すには中七の「に」は「や」では?しかし、季語の位置は捨てがたい。
○(幹夫)春の水はそんなもの。共感です。
〇(藤三彩)「うつし」のリフレインが決まりました
◯(アネモネ)なるほどなるほど。上手いなあ。
フライングなのか温さかもう蛙 多実生
◯ (アゼリア) ちょうど今頃の吟行でもう蛙と鳴き声に驚いた事があります。温暖化で生態系も変化してきているのですね。
◎(ルカ)破調の畳みかけがいいですね。
○(幹夫)個性的な詠み方だと思いました。
◎(アネモネ)「もう蛙」。俳味たっぷりです。やられました。
欄干のゆるいカーブに触れる春 楊子
〇(ちせい)季語は「春」。触覚から感じられる春。欄干の緩いカーブが春めいて来ます。
◯(道人)繊細な季節感。
○(まきえっと)「欄干のゆるいカーブ」がいいですね。
○(餡子)ゆるいカーブと春がぴったり。
〇(宙虫)春の肌触りがいい感じ。
春の池掬へば貌が崩れ行く ちせい
◎(道人)春の水の雰囲気がよく出ていて楽しい句。
○(まきえっと)春の脆さが出ています。
〇 (多実生) 自然の法則通りです。
◯(卯平)確かにそのとおり。例えば「秋の池」であればこの句は成り立つか。では「冬」では、「夏」では。貌が崩れゆく景と共鳴すのは「春の池」。少々愁を含んだ季語の位置でこの句は「写真に凭れた」句から脱している。
石橋の近くて遠き夜の梅 ルカ
〇(ちせい)季語は「梅」。感覚的にわかります。石橋も雰囲気を盛り上げているのかもしれません。
〇(仙翁)何となく、近くてと遠きの雰囲気ですね。
さくらさくら十歩で渡りきれる橋 まきえっと
◎(楊子)この世とあの世はそのくらいの距離なのかも。さくらのリフレインがより軽くしている。
おぼろかな水の中よりパワーストン 卯平
○(泉)透明な池の底。パワーストンがピッタリです。
閏日やひかりの砂を吐く泉 珠子
◯ (道人)四年に一回の二月尽を捉えて巧い。
○(まきえっと)本当は水が湧いているのだろうと思います。でも「閏日」だとそんな風に見えますね。
◎ (多実生) 見た記憶が有ります。光の砂を暫く見惚れます。
◎(敏)二月の二十九日、いよいよ明日からは弥生という日に「ひかりの砂を吐」いたという泉に対する眼差しに強く惹かれました。
◎(あちゃこ)端的な表現で、力強い生命力さえ感じます。
〇(楊子)閏日の特別感が詩的に美しく描かれている。
〇(藤三彩)閏日(2月29日)の発見がお見事
◯(アネモネ)「閏日や」の入り方、なかなかです。
(選外)(卯平)中七の擬人化が技巧的過ぎる。
観梅や僧の説話を聞きながら 泉
〇(春生)僧の説話も「観梅」にぴったりです。
龍神の住むとふ池や春水汲む アゼリア
○(泉)確かに龍神が住むような池です。
花の里柄杓を水のこぼれ落つ 春生
○(幹夫)曲水の宴の風情ですね。
橋渡る三歩で春のひととなり 宙虫
○(敏)わずか三歩で「春のひと」となった作者の姿を想像し、楽しくなりました。
○(あちゃこ)最後を平仮名でしめ、おぼろな感じがうまれました。
〇(春生)「三歩で」に心理が描けています。
(選外)(卯平)中七から下五が不明。特に「春のひと」は効いていない。
黄泉路への薄れ日の門鳥雲に あちゃこ
〇(珠子)黄泉路への門には、どんなことが待っているのでしょう。「無」がいい。
○(幹夫)大きな景です。
地球から湧き出す春の水を汲む 敏
◯ (アゼリア) 地球からがダイナミックで良いです。
◎(ちせい)季語は「春の水」。グローバルな視点がいいと思いました。
○(まきえっと)大きな景ですね。
風光る杜甫の春望吟じゐる 藤三彩
◯ (アゼリア) 高校の漢文で習った春望懐かしいですね。
○(餡子)「国破れて・・・」ですね。あの3枚の写真から杜甫に思いを寄せた繊細な感覚に驚きです。
〇(宙虫)ひさびさ杜甫の名前を見た。
早春や日ごと膨らむ水の音 餡子
○(ルカ)実感します。
◎(まきえっと)「日ごと膨らむ」が春の訪れを言っているようです。
〇(仙翁)水の音が膨らむ、面白いですね。
新型コロナ騒動で、何だか気が滅入る毎日です。自粛要請がこれほどキツイとは、予想外でした。大相撲もプロ野球も、高校野球も全て延期か中止か?無観客試合というのは、全く味気ない。やはり観客の声援あっての試合です。