つづき
水弾く光を占めて芝桜 仙翁
空き家でもつつじは塀を零れ咲く 多実生
○(仙翁)空き家に零れ咲く、面白い表現ですね。
躑躅咲く町工場の薄埃 春生
○(泉)景気は良いのか悪いのか。社長さんも大変です。
◎(楊子)取り合わせに意表をつかれました。古い町工場だからこそ大きくなった躑躅が敷地のあちこちにある風景が浮かびます。
〇(まきえっと)躑躅の雰囲気と薄埃が合っています。
○(幹夫)下町の素敵な景だ。
◎(餡子)町工場の有る下町で育ちました。友達の家に遊びに行くと大きなガレージのような工場にクレーンや器具が働いていましたが、隅の方の棚などには埃の油っぽい匂いがしていました。外には油の浮いた水たまりなど有りましたね。あの頃がフラッシュバックした一句。
〇 (多実生) 薄埃が町工場を言い当てています。
◎(仙翁)躑躅と薄埃の対比がおもしろく、いいですね。
◯ (アゼリア)材木が積み上げてあるので埃立ちそうですよね。
花いばら内耳に黒いジェット音 宙虫
〇(まきえっと)どう解釈すればいいかなと考えますが、「黒いジェット音」がいいですね。
〇(珠子)内耳はジェット音を黒く不気味に聴く心の耳でもあるのでしょう。今、花茨が満開です。美しくたくましい花。
〇(あき子)花いばらをイメージしながら、黒いジェット音を想像すると、からだが重たくなりました。作者の現実把握が伝わってきます。
〇 (多実生) 静かさが耳鳴りを意識させます。
○(卯平)季語が上手い。中七下五に現実の時事空間が詠み込まれている。特選を迷った。
◯(道人)「黒い」に何か不穏な世相を込めているようで共感。
花水木核の傘から出られない カンナ
◎(泉)そもそも「核の傘」は有効に機能するのでしょうか。曖昧です。
〇(めたもん)季語の「花水木」は北米原産。口語的な中七・下五の措辞と響き合う。下五の断定は、嘆きか、諦めか。或いは、悲しみか。
◎(道人)アメリカ由来の花水木は桜の後の日本の風物詩。核の傘との取合せが斬新。
逝く人の黒き車や残る花 卯平
○(幹夫)「残る花」は遺族を指す。さぞかし、いたたまれない気持ちだろう。
〇(あき子)見送るひとの心情を、季語がそっと受止めています。
えごの花お昼休みの製材所 アゼリア
〇(カンナ)ほのぼのとした雰囲気が伝わります。
〇 (多実生) 丸鋸の回る製材音が昼休みの静寂を際立ます。
○(卯平)実景が明確。製材所と言う実景がこの季語で明確になった。更に昼休みと時間がこの季語を明確にした。好きな句
◎(春生)製材所を捉えたのは手柄です。雰囲気のある句です。
○(ちせい)写実に徹してそれでいて「お昼休みの」と内容の充実にも努めて居ると思いました。
飛行機に乗せる微笑み春惜しむ まきえっと
○(あちゃこ)作者は、上空の機に願いを乗せているのでしょう。
パイロット旅団率いて春の月 あき子
堰落ちてまた筏と為す花屑 餡子
〇(めたもん)よく見る景なのですが、時間の経緯も含んでおり、意外に詠みにくい。それを上手く句にしていると思います。
揮発する如く老いけりえごの花 めたもん
◎(あちゃこ)上五が強烈。やり切った満足感でしょうか、それとも?想像を掻き立てる一句。老いるとはどういう事なのでしょうね。
〇(あき子)揮発する分をどうにか再生させたいものです。
〇(カンナ)上五の直喩が良いと思う。中七の切れ字も利いている。
◎(多実生) 揮発するの表現が巧い、季語も爽やか。
○(ちせい)自嘲もまた句になると思いました。エゴの花の白さに包まれてしまう自嘲なのかもしれません。
◎(宙虫)あっという間に散るエゴの花の季節。揮発の感覚が伝わる。
夏空やコックピットに日章旗 幹夫
◯(道人)肉眼では見えるはずのない日章旗がよく見えたものだ。「夏空や」が効いている。
○(アネモネ)景が鮮明に浮かびます。
命終え毒なき躑躅川面へと アダー女
飛行機雲の解かれ融ける竹の秋 仙翁
紅躑躅旅の終わりを燃えに燃え 道人
○(あちゃこ)命尽きるまで花は咲く。人の一生もそうありたいものですが、難しいですね。
目に若葉遠くへ行きたい旅番組 藤三彩
○(泉)昔、「どこか遠くへ行きたい」という歌がありました。
夕暮れの愚痴を躑躅は聞き上手 宙虫
〇(瞳人)聞いているふりかもしれません
〇(楊子)何もかも吸い込む力のある躑躅ですからきっと聞いてくれるでしょう。
◎(まきえっと)一日にあったさまざまな愚痴を躑躅が聞いてくれるっていいですね。
○(卯平)躑躅以外であれば愚痴は無視されるだろう。躑躅の位置が絶妙。特選を外したのは一行詩としては共鳴出来るが「俳句」形式としての共鳴には躊躇する。しかし将来の評価は十分に期待される。
◯(道人)夕暮れの躑躅の落ち着いた明るさが佳い。如何にも聞き上手だ。
◯ (アゼリア) 私も犬や植木に愚痴を聞いて貰っています。
隠れ家は躑躅満開逃げられぬ 楊子
〇(瞳人)どうしてそんなところへ逃げ込んだ?
◎(カンナ)ドラマの世界があって面白い。
○(仙翁)隠れ家の躑躅、取り囲まれましたね。
◎(めたもん)サスペンスドラマのワンシーンのよう。また、それが心理的な一場面でもあるところが魅力の句です。
○(ちせい)躑躅に魅了されたか、何があったか興味をそそられました。
葉桜やサヨナラをいさ盃受けむ 瞳人
(選外)(卯平)それなりに読ませる句。しかし葉桜とサヨナラの間に予定調和を感じる。
えごの木に心の曇り晴らす花 多実生
○(藤三彩)そうか写真はえごの花だったんだ。なるほど納得。
メーデーや飛行機上昇志向かな ちせい
〇(瞳人)今も昔も同じです
○(幹夫)労働者よいざ立ち上がれ!季語「メーデー」が適っている。
飛行機の小窓の故郷青山河 珠子
○(アネモネ)「小窓の故郷」いいですねえ。
○(幹夫)飛行機の小窓から見えるのは、近づく故郷、それとも、遠ざかりゆく故郷の景だろうか。誰しも、たとえ遠くにありても、なお忘れがたき美しき古里の山河だ。
○(餡子)先日、久しぶりに機上の人となりました。あの小さな窓からの風景はなんとも言えず感動!見入ってしまいます。故郷となれば一入でしょう。青山河にその想いがびっしり。
〇(春生)機上から見える故郷の青山河、この素晴らしさは誇りですね。
◯(道人)飛行機で故郷に帰ったことのある人なら誰しも実感が湧いて来そうな句(残念ながら我が故郷はさにあらず)
○(宙虫)定番の青山河と故郷を小窓でまとめた。
離陸機の音の轟き昭和の日 アネモネ
◎(瞳人)右肩上がりの日々なつかしや
〇(楊子)戦争経験者は飛行機の音と昭和には特別な思いがあるのかもしれません。
〇(珠子)国民の祝日とその名称がころころ変わって歴史は煙に巻かれてしまいます。
○(あちゃこ)昭和という時代。音に焦点を当てた所に惹かれます。
○(餡子)離陸の時の一際高くなる音。緊張の一瞬。昭和の頃は飛行機などとてもとてもの時代でした。このゴールデンウイークの成田の混雑。隔世の感。季語が良いですね。
〇(春生)昭和は高度経済成長期で外国旅行も盛んになりました。「昭和の日」がぴったりですね。
○(宙虫)昭和に置いていかれた人間が生き抜く令和の時代。
(選外)(あき子)飛行機を昭和の日と取り合わせると、戦争、空襲から高度成長期に連想が繋がります。
ありのまま飛べそうな空えごの花 あちゃこ
◎(ちせい)空想が膨らみシャボン玉の様に消えてしまうかもしれませんが、空想力は極めて重要だと思いました。
〇(カンナ)楽曲の歌詞のような上五と中七が新しい感じがする。
(選外)(道人)「ありのまま飛べそうな空」に引き込まれた。季語が離れ過ぎかも。
喧嘩して勝って空しき花曇 泉
○(アネモネ)得心です。
○(藤三彩)謝ってしまえば済むものを・・はないちもんめ
○(宙虫)勝つだけではない。屈折感に納得。
今月の写真
快晴の日に写真をと思ったけれど、曇天。
宙虫の生活圏の花たちをカシャ!
来月はどこかに出かけて撮影したいとは思っている・・・。
また、小麦句会500回おめでとうございます。継続は力なり、という事でしょう。
広島は昨日は大雨でした。これから梅雨へと向かうのでしょうが、季節が巡るのは早いですね。
皆さま 1000回目指して経済は力なり‼️よろしくお願いします。