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『風前(ふうぜん)の灯(とも)し火(び)』[=燈火]
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風が吹き当たる場所に置かれた灯し火のことで、今にも消えようとするものの喩え。危険に直面し、生命が今にも絶えようとしている状態。
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類:●風口の蝋燭●朝日の前の霜柱●小水の魚●虫の息
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出典①:「倶舎論-疏」「寿命猶如、風前灯燭」
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出典②:「法苑珠林-致敬」「命如風中灯、不知滅時節」
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出典:阿毘達磨倶舎論(あびだるまくしゃろん) インドの仏教論書。世親(ヴァスバンドゥ)著。5世紀頃。「倶舎」とは容れ物の意味で、「阿毘達磨」の教理の全てがこの中に納められているという意味。サンスクリット本、チベット訳、漢訳2種が現存している。漢訳では、真諦(しんだい)訳22巻(564年)、玄奘(げんじょう)訳30巻(651年)があり、主に玄奘訳が用いられる。略して「倶舎論」とも。
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出典:法苑珠林(ほうおんじゅりん) 唐の釈道世のが編纂(へんさん)した書で、120巻から成っている。これは仏教の故事古典を分類して収録したもので、仏典の訓話を知る好個の手引き書である。
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<松下幸之助一日一話> PHP研究所編
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衣食足りて礼節を知る
「衣食足りて礼節を知る」という言葉がある。これは今から二千年以上も昔の中国で言われたものだというが、今日なお広く使われているということは、そこに人間としての一つの真理があるからのように思える。ところが、今日のわが国については、「衣食足りて礼節を知る」どころか「衣食足りて礼節ますます乱る」と言わざるをえないことが多い。これはまさに異常な姿である。われわれはいま、この世の中を正常な姿に戻して社会の繁栄、人びとの幸福を生みだしていく必要がある。そのためには、まず自己中心のものの考え方、行動をみずから反省し、戒めあっていくことが肝要だと思う。