明澄五術全集第十巻『子平大全』(掛川掌瑛編著)より「行運の見方」
命式と行運
既述のように、「子平」で、年月日時の干支を並べて命式を立てることを「立命」と言い、命式を判断することを「推命」、命式から、その人がどうすれば良いかを判断することを「造命」といいます。そして、命式を持つ人が、社会に出てどうなってゆくかを見ることを「運命」と言いますが、「運命学」などというときの「運命」と紛らわしいので、もっぱら「行運」と呼ばれています。
「子平」の「行運」には、「大運」「年運」「月運」という分類があり、「大運」は命式の月干支から順行または逆行して繰り出され、「年運」や「月運」は、年干支や月干支をそのまま使います。
一般に、「行運」が吉運であれば良いことがあり、凶運であれば悪いことが起こると単純に考えられがちですが、必ずしもそうはなりません。
何故なら、「月運」は「年運」の範囲内で作用があり、「年運」は「大運」の範囲内で作用しますから、単独では本当の吉凶が決められません。
さらに「大運」は命式によって、基本的に帰着点が決められている上に、それまでの大運の吉凶累積によって、はじめて本当の吉凶が決まります。従って、行運の吉凶を知るためには、まず最初に命式の帰着点を知る必要があります。
もともと「子平」で言う「運の良し悪し」というのは「命式」によって決まっており、いくら良い「大運」が続いたところで、命式で決められた以上にはなりえません。
「命式」を評価する場合に、「五訣」つまり「貴賤、吉凶、寿夭、富貧、成敗」と言われるものがあり、このうちどれを中心に見るのか、つまり、「富貧」や「寿夭」などを中心に見るのか、それとも社会的地位・身分などの「貴賤」を中心に見るのか、という問題があります。
「寿夭」のうち、「寿」というのは健康で長生き、という意味であり、「夭」というのは不健康で短命という意味です。また、中国には「退隠」という考え方があり、一生を通じて災害や大病など何事もなければ、「富貧」や「貴賤」などはどうでも良いという、狭い意味での「吉凶」という見方もあります。
また「成敗」というのは、成功か失敗かということですが、要するに、自分の志や願望を達成できるかということです。
中でも「貴」というのは、享受することが非常に難しいもので、いくら大金持ちでも、社会的な身分地位を得られないと「貴」とは言えませんが、身分地位を「禄」ともいうように、身分地位だけがあって全く金銭が得られない、ということはあまりありません。
身分地位を向上し保つためには、どうしても健康な体が必要であり、不健康で短命では「貴」は得られません。ここで言う「貴」とは、生まれた時の条件よりも、自力で社会的な地位を向上させる、という意味ですから、生まれつき貴族や皇族だったとしても、「貴」とは言えません。
また、身分地位には役職が伴うものであり、いつも事故や災難に遭うようではとうてい勤まりませんし、大臣になっても、長期の入院ということになると、辞任させられることもあります。
また、「子平」の出来た時代には、身分地位の伴わない「成功」は考えにくく、「退隠」するにも、一旦官吏に登用されて貯えでも出来たら、子供に後を譲ってのんびり余生を暮らすという腐った考え方を取っていました。
つまり、「貴」という目標は、「吉」で「寿」で「富」で「成」でないと達成できないし、「貴」である人は、同時に「吉」で「寿」で「富」で「成」であるともいうことができます。
逆に、「賤」であっても「吉」で「寿」で「富」であることは充分に可能性があります。
「貴賤」という考え方は、現代では希薄になっていますが、子平の貴賤的価値観は、子平の成立した時代の身分制度により、次のようなものになっています。
皇・王
士・農・工・商
雑・賎
「皇」というのは、皇族のことであり、革命でもない限り動かせない、どうやっても外からは入り込むことができない階級。
「王」というのは、普通の権力者のことで、力でのし上がれる支配階級。
「士」というのは、国家公務員や大企業など大きな組織で働く人。
「農」というのは、もちろん農民のことですが、農地を持つ自作農に限られます。
「工」というのは、巧みにものを作る工芸家や技術者。
「商」というのは、自分で生産はせず、物や金銭を動かして利潤を上げる職業。
「雑」というのは、医者、易者、床屋、絵描き、など。
「賎」というのは、芸人、屠殺業、娼婦、兵隊、狩猟者など。
現代では、国会議員や大臣、大会社の社長、スポーツ・芸能、などの分野で国民的な人気を得た人などは「王」に含まれます。
ホワイトカラーと呼ばれるサラリーマンや、作家、文筆家などは「士」に含まれます。
芸術家は「工」ですが、美術教員なら「士」ですし、文化勲章クラスになると、「王」ということになります。
サッカーやプロ野球選手なども「雑」に入りますが、球団職員や監督、国の代表選手などは「士」と言えますし、超一流選手や優勝チームの監督なら「王」といえます。
芸人は「賤」ですが、やはり超一流クラスは一気に「王」の域に入っています。
医者も町医者なら「雑」、勤務医なら「士」、医連の会長なら「王」、というように修正しなければなりません。
農業労働者、工場労働者、土木建設労働者などは、そのまま「農」や「工」に分類しても間違いではありませんが、自営業でない場合は、なかなか難しいもので、大きな組織で働く人ならホワイトカラーと同じく「士」とも言えますし、鉱山労働者など、仕事の内容によっては「賤」と考えなければならないこともあります。
皇
王
士・農・工・商
雑
賤
さきほどの図は上のように書き替えることができます。サラリーマンの脱サラのように、上下方向には簡単に移動できますが、左右方向にはなかなか動くことがありません。つまり、よほどプラスの大きい命式でも、「王」や「皇」にはなかなかなれませんし、かなりマイナスの命式でも、「賎」までは、簡単に落ちません。
ここで誤解してはならないのは、「子平命理」における「貴賤」というのは、ただ自分の力で身分地位を上昇させるか下降させるかであり、貴族の長男に生まれた人がそのまま貴族になっても「貴」とは言えませんし、芸人の子が跡を継いで芸人になっても「賤」とは言えません。
「子平」の「行運」を見るためには、まず命式によって「貴賤」を知り、身分地位が上昇する命式か、下降する命式かを知る必要があります。
命式の「貴賤」、つまり身分や地位の昇降がどうなるかは、次のように、「体用」と「喜忌」によって、点数化して判断することができます。
「体神」が「喜神」であればプラス1点、「忌神」であればマイナス1点とします。
「用神」が「喜神」であればプラス1点、「忌神」であればマイナス1点とします。
「喜神」が強められていればプラス1点、弱められていればマイナス1点とします。
「忌神」が強められていればマイナス1点、弱められていればプラス1点とします。
これらの点数を合計したものを「四神」と呼びます。
以上の方法で、どんな命式でも「四神」の点数がプラス4点からマイナス4点までの範囲に納まり、この点数が大きいほど、身分地位が上昇し、マイナスになるほど下降するようになります。
命式と行運では、どちらが重要か、などと言われることがありますが、「貴賤」は命式によって決められており、最終的に、行運が命式を超えることはありません。
くるみ綴じ製本 |
子平大全
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¥21,000(税込) |
行運を知るにはまず命式の昇降レベルを知る必要があり、そのためには、体用と喜忌が必要であり、喜忌を知るためには、強弱と格局を知る必要があり、本書でそれらのすべてを知ることができます。
また、本書では、子平と皇極経世を組み合わせた「局式」による「測局」や、「群式」による国家や企業の推命を行う方法、通常の命理のように、個人の事が分るだけではなく、人類文明全体や国家のような、「天」に属する事柄まで分る方法を説明します。
さらに「子平方位」「子平風水」への応用法を説明し、 子平の「命卜相」が完成に至ります。
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