読書感想日記

最近読んだ本の感想

「花や散るらん」 葉室 麟 著 文藝春秋

2010-07-09 23:36:01 | 歴史物
 人生とは、自分で決めているつもりでも、実は他人の思惑で決められているものかもしれない。
 言い方を変えれば、運命や定めと考えられているものは、案外、色々な人の影響を受けていく中で、必然的に自ら選んでいる道なのかもしれないのだ。
 堅物のような真面目な人が、選ばざるをえない悲しくも美しいと称される人生。
 強い個性から悪者と思われている人が、表に出さない慈しみの心。
 そして、自らの手を汚さないまま、誰にも気付かれずに、自分の立場を守るために他人の生き方を変えてしまうほどの、強大で醜い力。
 語り継がれる出来事の陰には、様々な思惑や力が絡み合い、それらが一つにまとまったとき、ついに運命の瞬間を迎える…
 私は、散りゆく花びらの舞う景色が似合うのは、今なお賞賛される人々の最期のみであると考えていたが、本当は、とても優しい心を隠し持っていた人物が、狂わされた人生で迎える末期にこそ、ふさわしいものであることに気付かされました。

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