読書感想日記

最近読んだ本の感想

「掏摸」 中村 文則 著 河出書房出版

2010-05-29 00:43:53 | 小説
 人間の才能とは、何だろう…
 当然、生まれ持った才能、つまり天性の力や技のことをいうのでしょう。
 更には、たゆまぬ努力によって習得した技術も、含まれるでしょう。
 ただ、それが人として正しいものかどうか、となると話しは変わってきます。
 それは、その技を何のために使うのか、ということでしょうか。
 生活のため、大切な人のため、正義のため、あるいは…
 技は、諸刃の顔を持つ…つまり、芸は身を助けるものであり、身を滅ぼすこともあるもの…
 そうなると、通常、技とは伝承されるべきものである一方、残すべきでないものもあるということなのでしょうか…
 しかし、究極の技というものは、どうしてこんなにも美しく、そして妖しいのでしょうか…
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「エンブリオロジスト」 須藤 みか 著 小学館

2010-05-27 00:24:19 | ドキュメンタリー
 …「生命」とは、人間が触れてはいけないものではないのか…
 そういった私の思いこみは、激しく揺さぶられた。
 いや、現代の科学において、生命に挑むことは、単なる人間のエゴではなく、必要不可欠なものであることを思い知らされた。
 多くの人にとっては、自然の摂理に従って得られる「新たな生命」。
 一方で、どんなに強く望んでも、どんなに多大な犠牲を強いられても、新しい生命に出会えない人もいる。
 そういった人々の希望をつなぐ最後の砦、それが彼らである。
 彼らは、とてつもなく重要な仕事をしているはずなのに、その社会的認知や医学的な境遇は、あまりにもお粗末な我が国の現実…
 事故が起きないのは、彼らの任務に対する責任感、極限までの緊張感と努力のたまものであり、これ以上、彼らに犠牲を強いることは、まさに、戦時中、物資不足を精神論で補わせようとした軍部の発想と何ら変わりがない。
 政権与党は、子ども手当なんて浪費でしかないばらまき支給をやめて、彼らのような、真に子孫を増やしていくために必要な人々へ予算を配分すべきではないだろうか。
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「悪夢のエレベーター」 木下 半太 著 幻冬舎

2010-05-21 01:08:49 | 小説
 エレベーターって、身近にある密室です。
 だから、乗り合わせた人同士が、滑稽なくらい少々緊張して、お互いのことを詮索してしまったり、あるいは地震等で止まらないように無事の到着を祈る…
 そんな乗客の微妙な心が、とある出来事から言葉になり、態度に現れ、ついには素顔を暴き出す。
 人の不幸は蜜の味…自分の身に降りかからない限り、他人が困る姿を見るのは結構楽しいと感じてしまう、自分の醜い心に少々戸惑いましたが、それでも、やっぱり…
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「きつねのはなし」 森見 登美彦 著 新潮社

2010-05-15 00:39:23 | 小説
 誰にでも、恐らく一つくらいあるのではないでしょうか…
 本当に経験した記憶なのか、夢の中でみた景色なのか、全くの自分の想像なのか…
 そう、所々の映像ははっきり憶えていても、それがいつ、どこでのものなのか、よくわからない不思議な記憶…
 そんな不思議な、そして、人間の弱さにしっかりとつけ込むようなお話し…
 私も、どういった経験なのか定かでない記憶…いや、断片的でしかないにもかかわらず、はっきりとした映像が、ふと、蘇りました。

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「弩」 下川 博 著 小学館

2010-05-12 00:05:09 | 歴史物
 山深い山の、更に山奥…大いなる自然の気まぐれに翻弄されつつ、細々と生き抜いてきた人々が、はるか先祖の代から、長い間、夢見てきた豊かな暮らし…
 そんな人々の夢のために、自分を捧げる者…
 すべての生命を等しく慈しむ彼でさえ屈してしまったのは…
 強い責任感と純真な心の持ち主であるがゆえに、自ら選んだ極限の世界だった…
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