読書感想日記

最近読んだ本の感想

『彰義隊 われら義に生きる』 星 亮一 著 三修社

2008-09-20 22:37:22 | 歴史物
 時は、まさに幕末。
 幕府の理解者や権力者が亡くなり、賊軍たちが権謀術で「官軍」になりかわると、戦うどころか意義も申し立てずに、ひたすら幕府存続のために恭順する幕府のトップ。
 そこへ、幕府側の正当性を唱える者が集まり、江戸の守りにつく。
 そう、彼らは、一躍庶民の憧れとなった、彰義隊である。
 この本には、彼らが生きた時代、そして自ら招いてしまったとはいえ、時代に勝てなかった彼らの運命が描かれている。
 自己保身に走る一握りの幕府側上層部のせいで、『義』に生きる正直な者たちが馬鹿を見てしまう、それが幕府の身代わりとなった会津藩や、奥羽越列藩同盟であり、そこへ幕府軍や彰義隊も合流して決戦を挑もうとするが…。
 現代から見れば、幕末とは、平和ぼけしてしまった幕府と、諸外国の軍事力で叩きのめされ、対策を講じた諸藩の集まった「官軍」との戦いであるが、一致団結すれば「官軍」と対等に戦えたはずの幕府の姿をみていると、まさに日本の歴史を決めたのは、この「戊辰戦争」であった、と言えるだろう。
 『義』に生きて『義』のために命を捧げた先人を忘れてはならない。
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『海底二万里』 ジュール・ヴェルヌ 著 朝比奈美知子 訳 岩波文庫

2008-09-06 21:56:02 | 小説
 あー、子どもの頃にこの物語を読んでいたら、もっと読書をしていたんだろうな…と、読み進むにつれて、後悔してしまいました。
 やはり、名作といわれる話しには、大人向けも子ども向けもありません。
 海という広大な場所では、陸上で偉そうに振る舞っている人間という生き物の想像を遙かに超える出来事が連続して…というと、単純な探検物のようだが、自然の壮大さ、地球上の様々な生命、その中で我が物顔で振る舞っている人間という生き物、その英知を集結して生み出した文明のはかなさ…人間とは、生物の中では新顔でちっぽけな存在のくせに、なぜ偉そうにしているのか…
 面白いうえに、とても奥が深く、読んでよかったです。
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『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』 工藤美代子 著 日本経済新聞社 

2008-09-06 21:44:12 | 歴史物
 どんな物事も、視点を変えると、全く違って見えるものです。
 私は、近衛文麿という人物について、家柄は最上級、頭脳は明晰、しかし実務能力は今ひとつで、常に逃げ腰で…等と、いい印象を持っていませんでした。
しかし、どうやら、彼なりに懸命に日本の早期終戦に向けた努力をしたものの、その声に耳を傾けない者の壁に阻まれるばかりか、誤解されるようにし向けられ一層の戦争責任を負わされてしまう…つまり、敵は、軍やマスコミばかりではなく、あらゆる手段を用いて保身に走った、最も身近にいた者だった…
きっと、徳川慶喜と同様、違う時代に生きていれば…と思われる人物の一人でしょう。
 また、賊軍と誤解される幕末の会津藩士や、東京裁判で一切弁解しない広田弘毅のように、仁に、そして義に生きようとした人だったと思えるようになりました。
 そして、山本有三が近衛宛に詠んだ句は、夏の暑さに、いや、平和というものに漫然としている私のだらけた精神に、気合いを入れてくれました。
  「日のもとの われはをのこぞ 日のもとの をのこのつとめ いまはたさなん」
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『カラマーゾフの兄弟』 ドストエフスキー 著 米川正夫 訳 岩波文庫

2008-09-06 21:36:32 | 随筆
 理由もなく、男臭い兄弟の偉業の話しのような想像をしていた上に、不慣れな文体だったので、初めのうちは「全四巻なんて無理だったかな…」と半ば後悔していましたが、そんな風に思っていたのは途中まで。
 次第に「この先どうなるのだろう」と気になり始め、気が付くと読み終えていました。
 多分、この作品が書かれた当時の、宗教的な問題、民族的な問題などの歴史的背景を知っていれば、もっと堪能できたのでしょうが、そんなことを知らない私にとっても、いろいろな角度から『人間』が描かれているので、共感できたり、「それは、ありえないでしょう」なんて驚いたりと、とても面白い作品でした。  
しかし、長編だったため、表面的な部分しか読めていないので、またじっくりと読んでみたいと思いますが、ドストエフスキーの他の作品にも興味がわいています。
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