あなたが噛んだ軍手の小指

　物置の中に軍手が転がっている。架設物置となっている
車の荷室にも軍手はある。しかしながら生まれてこの方
軍手というものを買った記憶はない。軍手、傘、ライター
はお金を払って買うものではない三大生活備品でしょう。
なぜ軍手なのか。正確に言うと軍隊手袋なのだろうか。
今は何でもかんでもインターネットで調べられるけど、
夢がなくなるのでそのような、あさはかなことはしない。
戦地で兵隊が軍手を持っていたのはなんとなくわかる。
戦場の兵士は泥にまみれた軍手。指令本部のエライ人々は
白い手袋、なんだかそんなイメージが強い。
軍手は重宝するのかというとそれほどとも思えない。
軍手をつけると明らかに指の動きを規制される。
これは個人的には苦痛でしょうがない。だからたいていの
庭作業、そのほかの油的作業でも軍手をつけることは殆どない。
使い古した長靴、泥色の軍手、横に何とか商店と書いてある
帽子、最近、なんとなく気になる、気にならないものである。
気になるものがそこにあると気になる。気にならないものが
気になるところにおいてあるとそれもまた気になる。
軍手をつけると携帯電話が使えない。軍手をつけると
切符が買えない。軍手をつけると小銭を数えられない。
札束も数えられない。
軍手をつけると指が自然にグーになる。しかしながら
軍手は意外と身近にある。軍隊式手袋は戦場でその活路を
本当に見出していたのだろうか。昔、軍手を犬の口と鼻の部分に
履かせていたら爺さんに思い切りぶん殴られた遠い思い出がある。
佐伯竜一郎というそのころ飼っていた白い犬は親友だった。
佐伯君、今になって悪いことをした。今、あやまります。
口に手がついた犬だと騒いでいたことをお詫びします。