「Lost in translation」(言葉が通じずにちんぷんかんぷん)という言葉があるように、「Lost in food」(食べるものがない!)という構文もあるのでしょうか。
私はロシアへ来た初めのころ、ロシア料理が口に合わず、食べるものがないと焦りました。スーパーマーケットへ行っても見知った食材がなく、何を買えばいいのかわからないのです。そして最初は胡椒の場所もわからず、店員に聞いても「知らない」と一蹴され、手持ちの調味料は塩と砂糖と醤油だけだったのです。みりんも酒も何もなくてこれでどうやって調理すればいいのだろうと途方にくれたものです。けれど料理上手な友達に聞くと、砂糖と醤油があれば肉じゃがも作れるし、ごった煮スープも作れるし、出汁の元がなくても肉から出る出汁で十分美味しい、何でも作れるよ、と教えてもらい光が見えたものです。さっそくその週の休みの日に、スーパーでジャガイモ、人参、玉ねぎ、肉を買い込み肉じゃがを作ってみたのです。こんなに料理に集中したのは久しぶりです。口に合う料理が食べたいばかりに一心不乱にじゃがいもの皮を剥きます。そして少し多めに入れた砂糖と醤油で味付けされた懐かしい肉じゃがの汁をすすったときには、甘醤油の味が骨の髄にまで沁みわたるようでしばし恍惚に浸ったものです。
それからは料理を作ることが私の趣味とでもなったように、毎週末、私は買い出しに行っては自分のために料理を作り続けました。私、こんなに料理を作るのが好きだったっけかな、と思うほど料理を作ることに集中しました。そのころには、スーパーでの胡椒のありかも突き止め、他にも幾種類かの調味料を手に入れ、モスクワで買ってきた日本の3倍の値段に跳ね上がったお酒や味噌、乾燥しいたけなんかも取り揃え、マッシュルームやズッキーニを買ってきてはごった煮スープを作りました。友人のカーチャから譲り受けたインドの本場カレールーをも使いこなしました。その他、モスクワのスーパーで見つけたテリヤキソースに炒めたピーマンとパスタを絡め焼きうどん風スパゲィテも編み出しました。
茄子とピーマンの味噌和えを作って食べたときは、これもまた甘砂糖の味噌和え恍惚に浸りました。ただし、茄子は見かけの艶々感と違い、大部分の中味が傷んでいたので、悲しいけれど、もう買わないことにします。やはりここは雪深いロシア、搬送中に茄子は傷んでしまうのでしょうか。どなたか、茄子の代案を教えてください。
私はロシアへ来た初めのころ、ロシア料理が口に合わず、食べるものがないと焦りました。スーパーマーケットへ行っても見知った食材がなく、何を買えばいいのかわからないのです。そして最初は胡椒の場所もわからず、店員に聞いても「知らない」と一蹴され、手持ちの調味料は塩と砂糖と醤油だけだったのです。みりんも酒も何もなくてこれでどうやって調理すればいいのだろうと途方にくれたものです。けれど料理上手な友達に聞くと、砂糖と醤油があれば肉じゃがも作れるし、ごった煮スープも作れるし、出汁の元がなくても肉から出る出汁で十分美味しい、何でも作れるよ、と教えてもらい光が見えたものです。さっそくその週の休みの日に、スーパーでジャガイモ、人参、玉ねぎ、肉を買い込み肉じゃがを作ってみたのです。こんなに料理に集中したのは久しぶりです。口に合う料理が食べたいばかりに一心不乱にじゃがいもの皮を剥きます。そして少し多めに入れた砂糖と醤油で味付けされた懐かしい肉じゃがの汁をすすったときには、甘醤油の味が骨の髄にまで沁みわたるようでしばし恍惚に浸ったものです。
それからは料理を作ることが私の趣味とでもなったように、毎週末、私は買い出しに行っては自分のために料理を作り続けました。私、こんなに料理を作るのが好きだったっけかな、と思うほど料理を作ることに集中しました。そのころには、スーパーでの胡椒のありかも突き止め、他にも幾種類かの調味料を手に入れ、モスクワで買ってきた日本の3倍の値段に跳ね上がったお酒や味噌、乾燥しいたけなんかも取り揃え、マッシュルームやズッキーニを買ってきてはごった煮スープを作りました。友人のカーチャから譲り受けたインドの本場カレールーをも使いこなしました。その他、モスクワのスーパーで見つけたテリヤキソースに炒めたピーマンとパスタを絡め焼きうどん風スパゲィテも編み出しました。
茄子とピーマンの味噌和えを作って食べたときは、これもまた甘砂糖の味噌和え恍惚に浸りました。ただし、茄子は見かけの艶々感と違い、大部分の中味が傷んでいたので、悲しいけれど、もう買わないことにします。やはりここは雪深いロシア、搬送中に茄子は傷んでしまうのでしょうか。どなたか、茄子の代案を教えてください。