ロシア日記

~ペルミより愛を込めて~
日本語教師と雪のダローガと足跡

~サンクトペテルブルグ~
雪の上の足跡

素晴らしきかな、自炊

2013年02月11日 | 日記
「Lost in translation」(言葉が通じずにちんぷんかんぷん)という言葉があるように、「Lost in food」(食べるものがない!)という構文もあるのでしょうか。
 私はロシアへ来た初めのころ、ロシア料理が口に合わず、食べるものがないと焦りました。スーパーマーケットへ行っても見知った食材がなく、何を買えばいいのかわからないのです。そして最初は胡椒の場所もわからず、店員に聞いても「知らない」と一蹴され、手持ちの調味料は塩と砂糖と醤油だけだったのです。みりんも酒も何もなくてこれでどうやって調理すればいいのだろうと途方にくれたものです。けれど料理上手な友達に聞くと、砂糖と醤油があれば肉じゃがも作れるし、ごった煮スープも作れるし、出汁の元がなくても肉から出る出汁で十分美味しい、何でも作れるよ、と教えてもらい光が見えたものです。さっそくその週の休みの日に、スーパーでジャガイモ、人参、玉ねぎ、肉を買い込み肉じゃがを作ってみたのです。こんなに料理に集中したのは久しぶりです。口に合う料理が食べたいばかりに一心不乱にじゃがいもの皮を剥きます。そして少し多めに入れた砂糖と醤油で味付けされた懐かしい肉じゃがの汁をすすったときには、甘醤油の味が骨の髄にまで沁みわたるようでしばし恍惚に浸ったものです。
 それからは料理を作ることが私の趣味とでもなったように、毎週末、私は買い出しに行っては自分のために料理を作り続けました。私、こんなに料理を作るのが好きだったっけかな、と思うほど料理を作ることに集中しました。そのころには、スーパーでの胡椒のありかも突き止め、他にも幾種類かの調味料を手に入れ、モスクワで買ってきた日本の3倍の値段に跳ね上がったお酒や味噌、乾燥しいたけなんかも取り揃え、マッシュルームやズッキーニを買ってきてはごった煮スープを作りました。友人のカーチャから譲り受けたインドの本場カレールーをも使いこなしました。その他、モスクワのスーパーで見つけたテリヤキソースに炒めたピーマンとパスタを絡め焼きうどん風スパゲィテも編み出しました。
 茄子とピーマンの味噌和えを作って食べたときは、これもまた甘砂糖の味噌和え恍惚に浸りました。ただし、茄子は見かけの艶々感と違い、大部分の中味が傷んでいたので、悲しいけれど、もう買わないことにします。やはりここは雪深いロシア、搬送中に茄子は傷んでしまうのでしょうか。どなたか、茄子の代案を教えてください。


ロシアの食事事情 3

2013年02月11日 | 日記
 ロシア料理の中で、ピロシキは唯一、有名ですね。これは日本では、具だくさんに味が詰まったパンが揚げてあるもの=ピロシキという認識ですが、本場ロシアでは必ずしもそうとはかぎらず、むしろ揚げていないパンの方が一般的のような気がします。中身も、ジャムだったり、お肉だったり、チーズだったりします。中味がじゃこのようなお魚が入っていた時があり、私はこれもまた口に合わずに食べることを断念しました。
 私は、カンボジアではコオロギみたいな黒い虫をスナック感覚でカリカリ食べたり、雀やウサギの肉に挑戦したり、インドでも平気で屋台の店の料理を利用したりと、食べ物でもなんでも好奇心の強い方だと思うのですが、ロシア料理には一切この好奇心は発揮されず、いつも安全パイのスープとパンを選ぶ身となりました。
 断っておきますが、私は美食家などとは一度も言われたことはありません。その私がここまで食べ物に拒否反応が出ているのも珍しいことです。私は、だんだん、ロシア人は本当にこの料理たちを好きなのだろうか、と疑うようになりました。ためしに同僚の人に「ロシア料理は好きですか」と聞いてみました。すると彼は「私はロシア料理が好きというより、ロシアのこの料理が好き、イタリアのこの料理が好き、日本のラーメンが好きですね」という何とも曖昧な答えが返ってきました。私は、これはもしや彼もロシア料理を好きとは言い難いのではないかと自分勝手に判断しました。けれど別の時に「私にとってはロシア料理が普通の味だと思っています」という言葉を聞いて、私が日本料理を普通に美味しい料理だと思っているということなのだと判断し、私の木阿弥は外れたのだと理解しました。
 他の生徒も「ロシア料理は美味しい」という構文を作っていたので、やっぱりロシア人の舌には合うのでしょう。 
 友人のカーチャは、デンマーク人の旦那さんを選ぶほど、ロシアの男のこともロシアの国も料理も毛嫌いしているので、カーチャの意見は一般のロシア人の例外と考えられます。
 あとはロシア料理が有名じゃないのは、「理由があるからである!」これは真実ですね。次回は私の自炊のお話を書くとしましょう。

ロシアの食事事情 2

2013年02月11日 | 日記
ロシアの料理を一口食べても、いったい何で味付けをしているのか、とんと見当がつかないのです。一言でいうと無味なのです。ハンバーグのような形をした肉の塊があるのですが、ハンバーグを完成させる前の段階で料理を終了してしまったような出来具合なのです。おそらく牛と豚のひき肉から作られていると思われるのですが、塩胡椒で味付けされたのかも判然としないぐらい味が不確かなのです。友達のカーチャは名前からして生粋のロシア人なのですが、彼女も不味いと言っていました。
そして他には、マカロニの上に何かのソースで味付けされた魚が載っていることもあるのですが、こちらもマカロニと魚がまったくもってマッチしていないのです。
私は最初のころ、ロシア料理が口に合わずに、いったい何を食べればいいのだろうと路頭に迷い、ストレスになりかけました。今は自炊も覚え、あとは食堂で飲むスープはまあまあイケルことに気づき、お昼はスープとパンを食べることにしています。スープで有名なのは、『ボルシチ』ですね。あのビーツで染まったピンク色をしたスープの上に真っ白なサワークリームが載っているものです。けれどこれは実はロシアの料理ではなく、発祥はウクライナの地なのです。いつかポルトガル料理を一緒に食べた友人が、「ポルトガル料理があまり世界に知られていないのは理由があるハズなのだ」言った言葉が印象的でしたが、これとまったく同じでロシア料理がまったく世界に知られる代表料理がないというのは、理由があるハズなのです。それは、つまり、美味しくないからです。万人の舌をウナラセナイられないからなのです。