ロシア日記

~ペルミより愛を込めて~
日本語教師と雪のダローガと足跡

~サンクトペテルブルグ~
雪の上の足跡

17歳の先生

2013年02月12日 | 日記
 授業が終わったある日、ひとりの生徒から「先生はロシア語の勉強をどのような方法でしていますか」と聞かれました。「ロシア語のテキストで勉強してるよ」と答えると、彼はそのテキストを見せてくれというのです。私は、乞われるまま、テキストを鞄から取り出し手渡しました。すると、彼はそれを熱心に見、ページを繰り、今度は音声も聞かせてくれと言うのです。私は言われるままI-PODを取り出し音声を流すと、今度はそれにも熱心に耳を傾けているのです。しばらくすると彼がおもむろに話し出しました。

 3年前に、ここペルミにひとりのイギリス人がやってきた。彼は大学の留学生としてやってきたが、イギリスで何年かロシア語を勉強していた割には上手とは言い難かった。まず発音が成っていなかった。テキストには嘘が多い。

 そこまで話し彼は、「先生は‘ш’と‘щ’の発音ができますか」と言うのです。
このшとщは、ロシアのキリル文字のなかでも曲者で、最初のшの読み方はカタカナ表記にして「シャッ」であり、こちらのシッポが付いた方の文字はщ「シャ」であり、発音にいたっては、шを弱め、щを強めという注が載っているだけで、何がどう違うのかわからず、日本人の私には、書かれてある表記のまま強弱の違いだろうぐらいにしか区別がつかなかったのです。
 そして彼は耳をそばだて、私のおこなった発音を聞いた後、説明を始めました。
こちらの「щ」は日本の「シャ」と同じ発音でよい、けれどこっちのシッポの付いていない「ш」のほうは、舌を喉の奥につけて発音するのだ。それを彼は、日本語の口蓋音や、震え音などの専門用語を駆使して教えてくれるのです。
 何回か発音した後、私の「ш」の音も「少し歯のないおじいさんのような発音だけどいい」というヤン先生のお許しが出、私は生まれて初めて正式な発音の違いを学んだのです。かくして金曜日の午後5時からは、ヤン君と私のロシア語のレッスンが始まりました。
 彼は、ヤン君といい、ちょっと面白い男の子で、授業中に『現代』の漢字が出てきたときに、「ペルミには『現代美術館』があります。現代美術館で『現代』という名前がついているのは、ロシアではペルミだけです」というのです。そしてそのあと「先生は現代美術は好きですか」と聞くので「あんまり好きじゃない」と答えると、自分のポケットから出したお菓子のゴミを机の上に置き、それを指さし「現代美術」と言ったのです。笑
 写真は日本語の教室です。日本風にあつらえてあるのです。すごいでしょ!?