新潟久紀ブログ版retrospective

新潟独り暮らし時代43「鈴木辰治ゼミの一年目(その3)」

●鈴木辰治ゼミの一年目(その3)"夏合宿"

 新潟大学経済学部3年生から始まったゼミ活動は、週一回のコマであったから、事前に参考図書を読んだ上でのゼミ員どおしの議論を、厳格な日程管理とか目標管理の無い中で締まり無く続けていると、あっというまに第一四半期を終えてしまった。
 そうこうしている中で、鈴木辰治ゼミ恒例の夏期合宿をやろうということになったが、これも先輩もおらずに過去にゼミ活動としての成果とどう関連付けて実施してきたのかわからなかったので、とりあえずは暑くて頭の回らない新潟から離れ、"涼しい高原での現地ゼミ開催"という体で企画するかということに。
 そんなノーアイデアの合宿の方向性を報告に行くと、さすがに全般にゼミ運営を放任してきた教授はすまなそうにして、他大学と合同で議論するような合宿の設営など助言してやれば良かったなあと話したが、後の祭り。まあ割り切ってリフレッシュするかと、著作活動で根を詰めるご自身の気分転換を兼ねて楽しくやろうということに。
 ゼミ員の中に旅行の設営に長けた者がいて、長野県白馬村の少し旅館とペンションの中間のような宿を押さえてくれた。我々学生が金回りにゆとりがないのはもとより、教授も日頃から「薄給だ」と言いつつ、前年のドイツ客員教授赴任出張の財政負担や書籍購入、加えて酒とタバコにお金を掛けていることで、とても余裕がありそうではなかったし、なんと言っても昭和そのものの蛮カラ風であったので、洒落た高価な宿である必要は無かったのだ。
 合宿幹事のゼミ員の指図どおり、新潟駅から国鉄(当時)信越線の特急で糸魚川駅に向かい、そこから国鉄大糸線の各停に乗り換えて白馬駅まで半日くらいかけて付いたように思える。私には中古で手にした愛車ランサーEX1400GLがあり長距離ドライブにも良い季節であったのだが、行動のまとめ役のゼミ長であり、やはり行きも帰りも電車でビールなど飲んで騒ぎながらというのが魅力だったので大方のゼミ員と歩調を合わせた。
 糸魚川から新潟と長野の県境辺りに向かい始めると、見知らぬ山間の景色に皆が旅情を感じ始めたのだが、ただ一人、先々の風情を詳しく言い当てていくゼミ員がいた。あまりにも緻密に描写していくので皆で不思議がって尋ねてみると、彼が「実は旅行日を一日間違えて昨日同じルートで白馬まで行ってしまったのだ」と白状したから、皆が大爆笑だ。
 恥ずかしいので今日のここまで黙っていたし言わずに済ませようと思っていたが、やはり前日の一人旅のむなしさを聞いてもらいたくなって話し始めたのだ。昨日、新潟駅に行っても誰も居ないし、白馬駅までの予定の電車でも見かけないし、何かがあって自分だけ予定変更を聞き漏らしているのかと悩んだという。携帯電話がまだ無い時代だ。固定電話のある自宅通いのゼミ員に電話して騒がせるのもどうかと思ってるうちに、昨日同じ時間にこの白馬駅についたのだと言う。思わぬ笑い話に楽しませてもらっているうちに目的の白馬駅に到着。「そうそうこの花壇が昨日も綺麗だったわ」との彼に皆で笑い締めだ。
 7月半ばの新潟において例年には無いような蒸し暑さに辟易していた我々は、昭和後期に軽井沢に加えて人気急上昇中の避暑地であった白馬の清涼さに触れると、もう勉強のことは忘れて到着早々に、冬はゲレンデになると思われる見晴らしの良い高地に観光ゴンドラで繰り出して遠く山々を眺めたり散策したり記念撮影したりと大騒ぎだ。
 夜は夜で当然ながら宿で大宴会となり、流れで教授を囲んでカラオケしたり、麻雀をやったりで夜更けまで楽しんだ。サークル活動のような専らお遊びの合宿にはなったが、週一の数時間を10回弱程度のゼミでは気心を知り合えるとまでは言えなかったゼミ員の面々と親睦が深まったことで良しとしたいと思えた。
 それでも、半月後のゼミで皆に配布された合宿時に記念撮影した集合写真では、教授を囲んだ我々ゼミ員達に「このままで良いのかなあ」というような少し不安げな表情が心なしか見えるようだ。大学生活の残りもあと1年半。つまり十数年にわたった学業の仕上げに向けて、悔いの無いようにするには何をどうしたものかと焦燥感を抱く私であった。

(「新潟独り暮らし時代43「鈴木辰治ゼミの一年目(その3)」」終わり。仕事遍歴を少し離れた独り暮らし時代の思い出話「新潟独り暮らし時代44「鈴木辰治ゼミへの留学生(その1)」に続きます。)
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