●にいがた若者座談会(その1)
いわゆる「街コン」の新潟版である「潟コン」。この運営主体とコラボして、主に新潟出身で東京圏在住の若者へ声掛けし、毎年年末の帰省シーズンを前にしたタイミングで都内にて同窓会的な大規模懇親会を開催。故郷の懐かしい話題や酒や料理を楽しみながら、Uターン意識の醸成を図るとしたこの企画は3年ほど実施して毎年それなりに盛り上がりを見せてきた。一方で、参加者数の頭打ちやUターン促進への実効性の捉えにくさなど、検証と見直しの時期に来ていた。
東京オリンピック開催も踏まえて都心暮らしの訴求力や再開発ラッシュもあり、全国的に、とりわけ新潟から、東京圏への若者の流出は加速的に深刻さを深めていた。つかみ所の無いUIターン促進の雰囲気醸成などというユルさではなく、UIターン活動の動機付けにつながるような課題の抽出と具体策への落とし込みの必要性がいよいよ喫緊のものとなってきていた。
この頃、国も全く進まない東京一極集中の是正には業を煮やしていたので、東京圏から転職して地方移住した者には個人や世帯単位で最大100万円程度の補助金を直接交付するという最終兵器的な施策を打ち出してきた。個人への多額の金銭の直接給付。それでも一時金では本流を大きく変えられず、それは、地方移住の動機付けの課題は、単に目先のカネの問題では無いことを改めて浮き彫りにしていた。
何が実際の移住行動につながるのか。これまでも、移住を実践した若者達から、老若男女を問わず、その具体的な意思決定の過程や判断の背景、理由などを取材して、ホームページで公表するなどして同調する者の誘い込みにつなげたり、移住相談での具体的な事例情報として勧誘活動につなげたりしてきたようだ。しかし、私も着任して直ぐに、それら百件以上にも及ぶ移住先輩達の物語を拝見してきたのだが、感想としては「出来過ぎだ」というのが率直なところだった。個人事業を展開できるほどの特殊技能を持っていたり、地域に就労場や子育て支援を得られる縁があったりなど、当然で仕方の無いことかもしれないが、取材に耐える移住者達というのは皆、結果オーライで移住して上手くいっている人ばかりだ。
自分に例えて考えてみると、仮に東京でそれなりに安定した就労をしていた場合、ふるさと新潟への移住を勧められても、移住が特に求められる若者としては、転職はもとより年齢的に結婚や子育ての面で重要な判断を迫られる年代であり、それらのリスクから二の足を踏むに違いないのだ。自分自身がそんな思いなのに自身を持って若者の移住を働きかけられるだろうか。UIターン促進担当課長としては内なるジレンマに大いに苛まれるのだ。
それでも、地方への移住に関する相談者は特に若者層において年々増加しているという事実がある。一時金や一時の気持ちの勢いでは生活の拠点を移動するとは思えない中で、何がトリガーになるのか。考えていくとそれは人それぞれによって違うだろうという当然の帰結を見る。「生活の重大事として何に関心をもってどう悩んでいるのか、それをお聴きしてやりとりしていくうちに、貴方が求める答えは新潟にあるということに繋げていけるような仕組み」を考えたい。私はそんな風に考えて、その仕組みを実装できる仕掛けについて考えてみることにした。
(「新潟暮らし推進課12「にいがた若者座談会(その1)」編」終わり。県職員として11箇所目の職場となる新潟暮らし推進課の回顧録「新潟暮らし推進課13「にいがた若者座談会(その2)」編」に続きます。)
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