これから渡る橋を見つめながら
アロは、この旅で出会った人に思いを馳せていた。
行き交うたくさんの人の中でも同じ旅をしている人を見る時もあるが、あえて話をしたりはしない。何故なら、その旅はその人のものだから、互いに干渉しあわないのだ。
しかし、それが故に心の中でエール交換をしているのだった。
そんな中でも、偶然のように出くわす人もいる。
同じ景色を眺めて感動し合う人や、疲れた時に助けたり助けられたりする人、旅の情報交換をする人、旅からちょっと横道に入り癒してくれる人など、こういう人とは、互いに黙っていても同じ旅をしていると理解し合えるようだ。
でも、同じ旅とは言え共に旅をするわけではないのだった。
ひと時の、休憩とでもいったら良いのかもしれない。
必然があれば、またどこかで偶然のように出会うのだった。
誰もが、その出会いに執着は持たずにその時々を経過させているようであった。
これが旅に出てからの人との唯一の繋がりだったが旅に出る前の人間関係より希薄そうに見えるが、自立した関係であり深い絆の感じられる繋がりだとアロは思っている。
そして、誰も言わずともそれぞれがこの旅の意味を知り、その旅に集中しているが故に深く干渉しあわないのだとアロは確信するのだった。
そして、周りを見回してみると
この橋の手前には、ここから先の旅のための、いろいろな準備を整える環境が用意されていた。
これまでの旅の疲労を癒すためにも、この橋を渡る前に少しゆっくり過ごしてみようかとアロは、思っているのだった。
しかも、旅の途中で得た情報によるとこの橋を渡り切るのに1年かかるようだった。この橋は安定しているように見えるが、これまでに経験の無い旅になるように思えたりもするので、ここで、リフレッシュするのも良い方法だとも思うのだった。
そして、この橋を渡る手前で1ヶ月ほど滞在することにしたのだった。
その滞在手続きをするにあたり
「確認書」が渡された。
その内容によると、この橋を渡り始めると自動的に旅の目的地まで進むことを契約したことになること、そして橋を渡るのに1年、それから4年の時を要することが説明されていた。
アロは、なんと11年の旅をすることになっていたことを知り
改めて、この旅のスケールの大きさに感動していた。
もちろん、旅を始めてからは無我夢中でたくさんの未知の経験
の中で年月の流れなど忘れていたのだった。
続く