アロは、6年前から旅をしていた。
今、ようやく聞いていた橋の前にたどり着いた所だった。
この橋が旅の終着ではなかったのだが、この橋を越えればもう、戻ることはできないとアロの中のオールドソウルが伝えていた。
しかしアロには、それに対する哀愁はなく、むしろいよいよ本格的な旅のクライマックスに入ったのだと胸が高鳴るのを感じていた。
遡れば旅にでる25年前にアロのオールドソウルは、この旅にでることを決めていたのだった
。それから、この旅に出発するまでの期間をアロは、人が見たら何をそんなに急ぐのかと思うほどに、たくさんのことに挑戦し経験を積み、そこで出会う人々と楽しみ笑い、時には言い争いながら歩んでいた。
でも、この旅の出発を予期していたわけではなかったのだった。
ただ、アロが望んでもいないのに何故か、らいろいろな事象が生じてそれに対応している間に
どんどん時が過ぎて行くのだった。
それだけ、たくさんの事象を経験するようになると、人が生きて行く中であるひとつの原則というものがあるのだと解るようになっていた。
すると、その事象がどのような結末になるのかということまで理解できるようになるのだった
。
この原則を知ってしまってからは、アロは何をやっても魂の底から夢中になれなくなっていたのだった。
そんな頃にアロは、旅にでる決意をしたのだった。
旅に出ることは、誰にも知らせずにいるつもりでいたのだが
、いろいろな経験があるアロでもさすが未知なるこの旅を一人で出発するには少し勇気が足りなかったのか、その頃一番信頼していた人にだけ旅の真意を話、同行を求めたのだった。
最初のうちは、その真意に共感してくれていたその人だったが
未知なる旅の全貌を知りはじめると驚き、動揺し批判的になって行ったのだった。
そんな中で6年前に、必要最小限の物を持ち一人で旅に出たのだった。
最初の頃は、急に不在になったアロに多くの人が連絡をして来たが、応答はしなかった。
あれだけ信頼していた人でさえ理解できないこの旅の意味を説明しても仕方がないと思っていたからだった。
不思議と寂しさはなかった。
むしろ、この旅に寄せる深く熱い思いの方が強かったのだ。
2年も過ぎた頃から、誰からも連絡が来なくなりアロも過去の夢を見ることも少なくなっていた。
アロとたくさん関わった人達の記憶からアロは、消えているように感じながら、何故か肩の荷が降りた気がしていた。
その旅は、不思議な未知なる経験を織り混ぜながら進んで行った。
最初は、ガイドブックをたくさん読みあさりながらの旅だったのだが、この1年くらいは自らの旅の経験とそれから生じる勘を頼りに旅を続けているのだった。
そしてこの旅に出発してから、一度も悔いや迷いはなく進んで来たことにアロ自身も驚きながらも、この旅を進める自信ともなっていたのだ。
続く
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