旅に出る前までの道での細かいことなど、すっかり忘れているような旅路だったが、それと今を比較するならばこの旅こそアロが望んでいた道だったと深く思うのだった。
この橋を渡る手前にある施設では、心身のリラクゼーションや映画の放映やボランティアによる生演奏、図書館、必要物品の販売などもあり
落ち着いた環境の中これから先の旅の準備をすることができたのだった。
アロが興味深かったのは、これからの旅の様々な情報だった。
旅に出るまでのアロの道は、慎重とはほど遠いものであった。
言い代えるなら、進まざる得ない道をただ、がむしゃらに進んでいたように今になれば思えるのであった。
そうだからと言って、適当に進んで来たわけでもなく、アロなりに懸命にやって来たのだった
。
しかし6年前に出発したこの旅は、アロが必ず成し遂げたい旅で、アロ自身が強く望む旅であったためそれまでとは違い、慎重に進みたいと思うのであった
。
それが故に、アロはこの旅情報の収集に滞在期間のほとんどを費やしたのだった。
それほど、この旅がアロにとっては未知なるもので胸がときめくものなのだ。
それは、まるで冒険に出る少年のようであった。
そのたくさんの旅情報によると、この橋から先は、電波の周波数が変わるためこれまで使用していた器具類は、使えなくなるとのことだった。
しかし、その必要があればいつでもどこでも世界の状況などを知ることがでること。
そして、休憩ポイントでは手紙などを送れるポストが設置されていること。
この橋が地上からかなり上にあるため気圧の関係で呼吸や心臓に負担がかかりやすいこと。
そのための進み方などは、小冊子としてまとめて休憩ポイントに置いてあることなどと説明されていた。
アロは、なんとなくワクワクしてきて早く橋を渡ってみたくなっていた。
そして、ここでの滞在を早め翌日、出発しようとインフォメーションへ手続きに行ったのだった。
その手続きが終わると確認するかのように係員が一枚の磁気カードをアロに渡した。
不思議な顔をしているアロに係員は、優しい顔で「これから先に必要な物は、すべてこのカードで賄えます。しかし、必要以上に使えば旅が終わる前に無くなるかもしれません。」といたずらっぽい目でアロを見ながら言うのだった。
アロは、一人になるとなんとこの旅は、楽しく保護されているのだろうと再確認するのだった
。
あれだけ旅情報を調べてもこのことは説明されていなかった。
橋を渡る直前に伝えられることで冒険心がくすぐられるのだ。
そして、旅に出る前に用意してきた資金などもう不要となったわけであった。
この旅の醍醐味は、それまでの道のいわゆる、形式や常識などにとらわれないところにあることを再確認しながら、明日から橋を渡り始める旅路にますます、胸高鳴るアロであった。
さて、橋を渡り終えた頃に、アロがどのようになっているのか又、報告できるだろうか...