嵐ファン・大人のひとりごと

嵐大好き人間の独りごと&嵐の楽曲から妄想したショートストーリー

ショートストーリー『冬のニオイ』

2009年01月27日 | ショートストーリー
  ※嵐の「冬のニオイ」を聴いてから読んでいただけるとGOOD!



 
     『冬のニオイ』


 丘陵地にある駅のホームに立つと、冷たい風が体温を奪って行く。

天気予報では、深夜から今年初めての雪になると言っていた。

コートのボタンを掛けながら遠くに見える街の灯りを眺めていると、突然忘れたはずの想いが蘇る。

そう、いつも突然の不意打ち。

きみと過ごしたあの街、あの時間。

優しくてしっかり者だけど、僕にだけはちょっぴりわがままな人だった。

それがなんだか愛しかった。

誰よりも大切な人だと思っていた。



やがて僕らは社会に出て、目の前の変化に一喜一憂し、積み重ねたおだやかな愛を見失ってしまったんだ。

いや、大事なものを見失ったのは僕だけだね、きっと。



仕事でこの電車を利用するたびに君を思い出して切ない。

君の声も柔らかな髪の手触りも体は鮮明に覚えているのに

記憶の中の笑顔だけが少しぼやける。

もっと時間がたてば忘れることができるのだろうか。





駅のアナウンスが流れ、

あの頃と変わらないオレンジ色の車体がホームに滑り込んできた。

暖かな空気に包まれてドアから吐き出される一塊の人間たち。

冷たい風を身にまとい乗り込む僕。

仕事帰りのサラリーマンやOLでつり革は埋まっている。

ホームとは反対のドアの傍に立とうと一歩踏み出した時、

窓に映る人が目に入った。



見覚えのないコート、短くなった髪、それでも一瞬で君だとわかった。

どうすればいいのだろう。

ずっと誤魔化して自分を納得させてきたけれど、

本当の気持ちがあふれ出して止められない。




会いたかった。

でも言えなかった。

別れを切り出したのは僕だったから。

君の心を取り戻したいけれど、許されることだろうか。

君の進もうとしている未来にはもう寄り添う誰かが決まっているのかもしれない。

足が動かない。




振り返った君と目が合った。

一瞬、当惑の表情を見せた後、はにかんだように微笑むと

「久しぶり」と唇が動いた。

できるかぎり平静を装って近づいたけれど、窓に映った僕の笑顔はぎこちない。



「元気だった?」

「元気だったよ。仕事帰り?」

「えっ?、あぁ、取引先からそのまま帰るところ」

伝えたい気持ちがぐるぐると体の中を駆け巡るばかりで焦る。

目をそらして窓の外を見た。

思い出が詰まった街の灯りが遠くに消えていくのが見えた。

君を忘れることなんてできない。



「ずっと会いたかった」

言葉に出来たのはこれだけ。

誰かが雪が降ってきたと話している。





うつむいたまま黙っていた君がぽつりと言った。

「あの店まだあるかなぁ」

あの店・・・それは二人で映画を見た帰りに必ず寄った小さな店。

初老のマスターが一人で切り盛りしていて、忙しそうな時は頼まれもしないのに水やお絞りを常連客が出していた。

カウンターに料理が出てくると自分でテーブルまで運んだりもしたっけ。

僕らが注文するのはいつも煮込みハンバーグだったね。

マスターの自慢の一品。




「あの店がまだあるかどうか、これから二人で確かめに行ってみるってのはどう?」

僕は聞いた。



君は僕の目をしばらく見つめていた。

まるで僕の声にならない気持ちを読みとろうとしているかのように。

それから黙ったままゆっくり頷いた。



                  -----end-----





冬に聴くとジーンときてしまう『冬のニオイ』はおーちゃんのソロで始まる切ない曲ですよね

嵐のアルバム、5×5THE BEST SELECTION OF 2002←2004 に収録されています。

私の妄想ではやはり「僕」はおーちゃんですが、嵐の5人誰でもぴったりきますね。相葉ちゃんだとよけいにグッとくるかも

あなたなら誰?

この曲は切ないままですが、妄想とはいえ嵐くんたちが演じるとなると、

そこはやっぱり悲しいまま終わるのは忍びないので希望を繋ぎました。


次回のショートストーリーもやっぱり冬の曲で!と思ってます






































コメント
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