令和6年10月30日16:12、日テレNEWSより配信の「林長官「強く抗議」~国連委員会の皇室典範“改正勧告”に」と題する記事がある。
女子差別撤廃条約の問題については、二つの観点があり、一つ目は我が国の皇位の在り方については国連委員会が取り上げるべき筋合いのものではないということ、二つ目は女子差別撤廃条約に反するものではないということがあると思うが、林官房長官の言い方は主に一つ目の観点に立っているかのようである。
これは、二つ目の観点からの説明がなかなか苦しくなっているという実態が反映しているのだろうか。
二つ目の観点については、日本が条約を締結した昭和60年の国会において、以下のように説明されている。
-----昭和60年3月27日 参議院予算委員会-----
○久保田真苗君
批准する場合に留保などすることを考えておられますか。
○政府委員(山田中正君)【外務省国際連合局長】
この条約につきましては留保は考えておりません。
○久保田真苗君
留保する場合としない場合の効果の違いについて御説明ください。
○政府委員(山田中正君)
一般的に申しまして、留保とは、ある国が多数国間条約の特定の規定につきまして、自国への適用上その法的効果を排除するか変更することを目的といたしまして一方的に行う意思表示でございます。多数国間条約に多くの国が入りまして一つの条約社会を構成するわけでございますが、その締約国の中で留保していない国同士では条約の全規定の適用があるわけでございますが、留保いたしました国についてはその条約の規定が留保を限度として変更された形で適用されるということになります。
○久保田真苗君
ところで、皇室典範の第一条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」とありまして、婦人に対する排除が行われているのですが、この点、外務省としては条約との関係でどうお考えになりますか。
○国務大臣(安倍晋太郎君)【外務大臣】
皇位継承資格が皇室典範におきましては男系男子の皇族に限られておるわけであります。この点につきましては、本条約第一条に定義されております女子に対する差別には該当しない、こういうふうに条約の解釈として判断をいたしておるわけでございます。といいますのは、本条約に言うところの女子に対する差別というのは、性に基づく区別等によりまして女子の基本的自由及び人権を侵害するものを指しております。ここで言う人権及び基本的自由とはいわゆる基本的人権を意味するわけでございまして、皇位につく資格は基本的人権には含まれているものではないのでございまして、皇位継承資格が男系男子の皇族に限定されていても、女子の基本的人権を侵害されるということにはならない。したがって、本条約が撤廃の対象としている差別には該当しない、こういうふうに考えております。
○久保田真苗君
世襲的な地位からの排除でございますから、私は女性であることによる排除は排除だと思いますが、そもそもなぜこれを男系男子に限らねばならないのか、この点についてお伺いします。
○政府委員(小和田恒君)【外務省条約局長】
皇室典範の考え方の問題と条約の問題と一応区別して考えていく必要があると思いますが、条約との関係について申しますと、先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたように、この条約が対象にしておりますのは第一条に規定があるわけです。つまり女子に対する差別というのは何であるかということについて第一条に規定がございまして、それは性に基づく区別、排除または制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他の分野で、男女の平等を基礎として、人権及び基本的自由を認識し、享有しまたは行使することを害しまたは無効にするような効果または目的を持つものと、こういう定義でございますので、その中に入るか入らないかということで条約との関係は検討しているわけでございます。その見地から申しますと、確かに性に基づく区別ではございますけれども、ここで言っているような人権及び基本的自由を認識、享有、行使することを害し、無効にするような効果ないしは目的を持つものではない。したがって、性に基づく区別だという意味では一つの区別でございますけれども、条約の対象にしている第一条の定義に言うところの女子に対する差別には当たらないと、こういう考え方で条約との関係は成立しているわけでございます。
他方、皇室典範において男系の継承権というものを規定しているのはどういうことかというお尋ねでございますれば、これは憲法ないしは国内法の問題としてお考えいただく。条約との関係におきましては私が先ほど申し上げたようなことであるというふうに御理解いただきたいと思います。
○久保田真苗君
私が質問したのは、そもそもなぜ女子を排除しなければならないか、男子でなければならないかと、条約から離れて伺っております。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
御案内のとおり、日本の皇室の制度では男系の男子が皇室を継がれるということになっておりますが、これはまさにこの日本国憲法あるいはそれに基づく皇室典範が制定されました際にも大変に議論になったことでございますが、そのときの審議の経過その他を伺っておりますれば、これは我が国のまさに古来の伝統に従っている、それを採用するということによるの一言に尽きるわけでございまして、その点の変更のない限りまさにそういう制度であるというように存じております。
○久保田真苗君
この問題で時間を費やす気はありませんが、伝統と言われるけれども、皆様が一生懸命参拝なさる伊勢神宮の神様は天照大神という女神なんですね。女帝もたくさん存在したんです。まさにはっきりと制度として女子を排除したのは明治以来のことなんです。ですから、私は今の御説明は御説明になってないし、日本の文化的伝統というものが非常に狭い意味で考えられるということは日本文化にとって嘆かわしいことだと思います。
希望だけ申し上げておきます。天皇の地位は国の象徴でありますから、私は女性が排除されるということについては私の国民感情は許したくないのであります。また国民統合の象徴であれば、二分の一以上を占める女性、国民の統合の象徴である地位に対して女性を排除する理由は何らないと思います。今すぐに問題が起こるわけではございませんが、私は将来の課題として御検討願いたいと思います。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
確かに日本の歴史上、歴代天皇という中に十代、八方女帝がいらっしゃいます。これは事実でございます。しかしながら、その女帝が即位をされました事情と申しますのは、これはあくまでも男系という格好でのつなぎをするために、そのときに適当なる男系の方が小さなお子さんであるとかそういうような事情でもって女帝が継がれたというのがまさに実際の姿でございます。これは歴史上明らかだろうと思います。ということは、要するに男系であるということは一歩も歴史上崩れたことはございません。そうして男系であるということをとっていく限りにおいては、女帝というものを認めましてもそこから続くのであればこれは女系になってしまうのですから、全く男系というものと外れてまいります。したがって、過去の歴史上に女帝がいらっしゃったということと、現在の制度的な格好で、近代法としてのはっきりした格好での男系男子という格好で続くということはまさに余り本質は違わないことでございます。
先生御案内のとおり、摂政の場合には皇后でも摂政の資格はあるわけでありまして、しかし摂政に皇后がなられたからといって女系になるわけじゃないわけであります。そういうような点は歴史上の問題でございまして、伝統がどうであったかということによるわけでございまして、日本国憲法及びそれに基づく皇室典範が制定されましたときの各種の御議論、国会におきます御議論等も拝見をいたしましても、やはり古来の日本の伝統に従うということが唯一最大の理由であろうと存じております。
○久保田真苗君
非常に強い伝統解釈をなさるので、私も時間が惜しいんですが、突っかからないわけにいかないんですね。宮内庁次長の伝統論によってこの問題を律することはできないんですね。それはこの国会と国民がどう思うかということに律すべきなんです。そうじゃありませんか。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
したがいまして、皇室典範制定のときの御議論がそういうことであったと。これはもちろん国会でも御議論には出ているわけでありまして、私どもはそれを拝見して、そういう事情でもってでき上がったものというぐあいに理解しているところでございます。
○久保田真苗君
その後いろいろな異論も出ておるのです。このことを強く申し上げておきます。この問題はこれで終わります。
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一つ目の観点を言うのであれば、条約締結時に留保を付けておけばよかったような気もするが、それは今更言っても仕方がないのだろう。
二つ目の観点の説明として、当時の安倍晋太郎外務大臣と小和田恒外務省条約局長の説明は、現在においても通用するものだろうと思う。
ただ、これらは、女子差別撤廃条約に反しないということにつき、同条約で言うところの差別とは何かということからのアプローチであり、国連委員会への反論としてはそれでよいのかもしれないが、内外への一般的な説明としては不十分な感じがする。
上記の久保田真苗君の「私が質問したのは、そもそもなぜ女子を排除しなければならないか、男子でなければならないかと、条約から離れて伺っております。」ということ。
まさにこれが、現在の多くの人の思いではないだろうか。
この問いへの答えとしては、山本悟宮内庁次長より、過去の女性天皇は中継ぎであった、歴史上男系が崩れたことはなかったといった説明がなされている(今の男系固執派と同じ論法)。
当時は、国内の世論調査で「天皇は男子に限るべきだ」という意見が多数であり、ヨーロッパの王室でも男子のみとか男子優先の国が多く、こういった論法でもある程度の説得力はあったのだろうと思うが、現在では状況が逆転(そして、それは不可逆的なものであろう)してしまっており、やっぱりさすがにきついのではないか。
それでも、頑なに従来のやり方を守るというのが、例えば、憲法が皇室に決定を委ねるという仕組みになっていて、皇室の自律法で男系男子を維持しているというのならまだしも、当事者たる皇室の考えとは別なところで法律が「男系男子」と定めているというのでは、自己決定権という観点からの正当化の根拠が見出せない。
日本は民主主義国家ということになっていて、民主主義というのが自己決定権ということを根本とするものであることからすれば、この状態は矛盾であろう。
さらには、その法律にしたところで、国民の意思の反映ということであれば、現在の世論では女性天皇、女系天皇へ賛成の方が多数になっているのだから、その放置は怠慢であり、やはり矛盾ということになるであろう。
あとがき
女子差別撤廃条約締結当時、世論調査で「天皇は男子に限るべきだ」という意見が多数と述べましたが、その根拠は、平成17年の皇室典範に関する有識者会議報告書の52ページで確認することができます。
「日本世論調査会」が実施した世論調査の結果
昭和59年12月
天皇に女子がなってもよい 26.8%
天皇は男子に限るべきだ 52.2%
特に関心がない 18.0%
その他 0.2%
わからない・無回答 2.8%
平成17年の皇室典範に関する有識者会議報告書は、かなりよくできた報告書なので、関心のある方は読んでみることをお勧めしたい。
女子差別撤廃条約の問題については、二つの観点があり、一つ目は我が国の皇位の在り方については国連委員会が取り上げるべき筋合いのものではないということ、二つ目は女子差別撤廃条約に反するものではないということがあると思うが、林官房長官の言い方は主に一つ目の観点に立っているかのようである。
これは、二つ目の観点からの説明がなかなか苦しくなっているという実態が反映しているのだろうか。
二つ目の観点については、日本が条約を締結した昭和60年の国会において、以下のように説明されている。
-----昭和60年3月27日 参議院予算委員会-----
○久保田真苗君
批准する場合に留保などすることを考えておられますか。
○政府委員(山田中正君)【外務省国際連合局長】
この条約につきましては留保は考えておりません。
○久保田真苗君
留保する場合としない場合の効果の違いについて御説明ください。
○政府委員(山田中正君)
一般的に申しまして、留保とは、ある国が多数国間条約の特定の規定につきまして、自国への適用上その法的効果を排除するか変更することを目的といたしまして一方的に行う意思表示でございます。多数国間条約に多くの国が入りまして一つの条約社会を構成するわけでございますが、その締約国の中で留保していない国同士では条約の全規定の適用があるわけでございますが、留保いたしました国についてはその条約の規定が留保を限度として変更された形で適用されるということになります。
○久保田真苗君
ところで、皇室典範の第一条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」とありまして、婦人に対する排除が行われているのですが、この点、外務省としては条約との関係でどうお考えになりますか。
○国務大臣(安倍晋太郎君)【外務大臣】
皇位継承資格が皇室典範におきましては男系男子の皇族に限られておるわけであります。この点につきましては、本条約第一条に定義されております女子に対する差別には該当しない、こういうふうに条約の解釈として判断をいたしておるわけでございます。といいますのは、本条約に言うところの女子に対する差別というのは、性に基づく区別等によりまして女子の基本的自由及び人権を侵害するものを指しております。ここで言う人権及び基本的自由とはいわゆる基本的人権を意味するわけでございまして、皇位につく資格は基本的人権には含まれているものではないのでございまして、皇位継承資格が男系男子の皇族に限定されていても、女子の基本的人権を侵害されるということにはならない。したがって、本条約が撤廃の対象としている差別には該当しない、こういうふうに考えております。
○久保田真苗君
世襲的な地位からの排除でございますから、私は女性であることによる排除は排除だと思いますが、そもそもなぜこれを男系男子に限らねばならないのか、この点についてお伺いします。
○政府委員(小和田恒君)【外務省条約局長】
皇室典範の考え方の問題と条約の問題と一応区別して考えていく必要があると思いますが、条約との関係について申しますと、先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたように、この条約が対象にしておりますのは第一条に規定があるわけです。つまり女子に対する差別というのは何であるかということについて第一条に規定がございまして、それは性に基づく区別、排除または制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他の分野で、男女の平等を基礎として、人権及び基本的自由を認識し、享有しまたは行使することを害しまたは無効にするような効果または目的を持つものと、こういう定義でございますので、その中に入るか入らないかということで条約との関係は検討しているわけでございます。その見地から申しますと、確かに性に基づく区別ではございますけれども、ここで言っているような人権及び基本的自由を認識、享有、行使することを害し、無効にするような効果ないしは目的を持つものではない。したがって、性に基づく区別だという意味では一つの区別でございますけれども、条約の対象にしている第一条の定義に言うところの女子に対する差別には当たらないと、こういう考え方で条約との関係は成立しているわけでございます。
他方、皇室典範において男系の継承権というものを規定しているのはどういうことかというお尋ねでございますれば、これは憲法ないしは国内法の問題としてお考えいただく。条約との関係におきましては私が先ほど申し上げたようなことであるというふうに御理解いただきたいと思います。
○久保田真苗君
私が質問したのは、そもそもなぜ女子を排除しなければならないか、男子でなければならないかと、条約から離れて伺っております。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
御案内のとおり、日本の皇室の制度では男系の男子が皇室を継がれるということになっておりますが、これはまさにこの日本国憲法あるいはそれに基づく皇室典範が制定されました際にも大変に議論になったことでございますが、そのときの審議の経過その他を伺っておりますれば、これは我が国のまさに古来の伝統に従っている、それを採用するということによるの一言に尽きるわけでございまして、その点の変更のない限りまさにそういう制度であるというように存じております。
○久保田真苗君
この問題で時間を費やす気はありませんが、伝統と言われるけれども、皆様が一生懸命参拝なさる伊勢神宮の神様は天照大神という女神なんですね。女帝もたくさん存在したんです。まさにはっきりと制度として女子を排除したのは明治以来のことなんです。ですから、私は今の御説明は御説明になってないし、日本の文化的伝統というものが非常に狭い意味で考えられるということは日本文化にとって嘆かわしいことだと思います。
希望だけ申し上げておきます。天皇の地位は国の象徴でありますから、私は女性が排除されるということについては私の国民感情は許したくないのであります。また国民統合の象徴であれば、二分の一以上を占める女性、国民の統合の象徴である地位に対して女性を排除する理由は何らないと思います。今すぐに問題が起こるわけではございませんが、私は将来の課題として御検討願いたいと思います。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
確かに日本の歴史上、歴代天皇という中に十代、八方女帝がいらっしゃいます。これは事実でございます。しかしながら、その女帝が即位をされました事情と申しますのは、これはあくまでも男系という格好でのつなぎをするために、そのときに適当なる男系の方が小さなお子さんであるとかそういうような事情でもって女帝が継がれたというのがまさに実際の姿でございます。これは歴史上明らかだろうと思います。ということは、要するに男系であるということは一歩も歴史上崩れたことはございません。そうして男系であるということをとっていく限りにおいては、女帝というものを認めましてもそこから続くのであればこれは女系になってしまうのですから、全く男系というものと外れてまいります。したがって、過去の歴史上に女帝がいらっしゃったということと、現在の制度的な格好で、近代法としてのはっきりした格好での男系男子という格好で続くということはまさに余り本質は違わないことでございます。
先生御案内のとおり、摂政の場合には皇后でも摂政の資格はあるわけでありまして、しかし摂政に皇后がなられたからといって女系になるわけじゃないわけであります。そういうような点は歴史上の問題でございまして、伝統がどうであったかということによるわけでございまして、日本国憲法及びそれに基づく皇室典範が制定されましたときの各種の御議論、国会におきます御議論等も拝見をいたしましても、やはり古来の日本の伝統に従うということが唯一最大の理由であろうと存じております。
○久保田真苗君
非常に強い伝統解釈をなさるので、私も時間が惜しいんですが、突っかからないわけにいかないんですね。宮内庁次長の伝統論によってこの問題を律することはできないんですね。それはこの国会と国民がどう思うかということに律すべきなんです。そうじゃありませんか。
○政府委員(山本悟君)【宮内庁次長】
したがいまして、皇室典範制定のときの御議論がそういうことであったと。これはもちろん国会でも御議論には出ているわけでありまして、私どもはそれを拝見して、そういう事情でもってでき上がったものというぐあいに理解しているところでございます。
○久保田真苗君
その後いろいろな異論も出ておるのです。このことを強く申し上げておきます。この問題はこれで終わります。
-----------------
一つ目の観点を言うのであれば、条約締結時に留保を付けておけばよかったような気もするが、それは今更言っても仕方がないのだろう。
二つ目の観点の説明として、当時の安倍晋太郎外務大臣と小和田恒外務省条約局長の説明は、現在においても通用するものだろうと思う。
ただ、これらは、女子差別撤廃条約に反しないということにつき、同条約で言うところの差別とは何かということからのアプローチであり、国連委員会への反論としてはそれでよいのかもしれないが、内外への一般的な説明としては不十分な感じがする。
上記の久保田真苗君の「私が質問したのは、そもそもなぜ女子を排除しなければならないか、男子でなければならないかと、条約から離れて伺っております。」ということ。
まさにこれが、現在の多くの人の思いではないだろうか。
この問いへの答えとしては、山本悟宮内庁次長より、過去の女性天皇は中継ぎであった、歴史上男系が崩れたことはなかったといった説明がなされている(今の男系固執派と同じ論法)。
当時は、国内の世論調査で「天皇は男子に限るべきだ」という意見が多数であり、ヨーロッパの王室でも男子のみとか男子優先の国が多く、こういった論法でもある程度の説得力はあったのだろうと思うが、現在では状況が逆転(そして、それは不可逆的なものであろう)してしまっており、やっぱりさすがにきついのではないか。
それでも、頑なに従来のやり方を守るというのが、例えば、憲法が皇室に決定を委ねるという仕組みになっていて、皇室の自律法で男系男子を維持しているというのならまだしも、当事者たる皇室の考えとは別なところで法律が「男系男子」と定めているというのでは、自己決定権という観点からの正当化の根拠が見出せない。
日本は民主主義国家ということになっていて、民主主義というのが自己決定権ということを根本とするものであることからすれば、この状態は矛盾であろう。
さらには、その法律にしたところで、国民の意思の反映ということであれば、現在の世論では女性天皇、女系天皇へ賛成の方が多数になっているのだから、その放置は怠慢であり、やはり矛盾ということになるであろう。
あとがき
女子差別撤廃条約締結当時、世論調査で「天皇は男子に限るべきだ」という意見が多数と述べましたが、その根拠は、平成17年の皇室典範に関する有識者会議報告書の52ページで確認することができます。
「日本世論調査会」が実施した世論調査の結果
昭和59年12月
天皇に女子がなってもよい 26.8%
天皇は男子に限るべきだ 52.2%
特に関心がない 18.0%
その他 0.2%
わからない・無回答 2.8%
平成17年の皇室典範に関する有識者会議報告書は、かなりよくできた報告書なので、関心のある方は読んでみることをお勧めしたい。