週刊新潮にて、宮内庁関係者が明かした話として、「額賀議長は就任後、上皇ご夫妻に謁見する機会があり、その際に上皇后さまから『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』というご趣旨のお声がけを賜っているのです」ということが報じられ、意外と反響があるようである。
このお声がけ自体については、宮内庁長官によって否定されているので、お声がけがあったことを前提にした議論はあまり意味はないであろう。
それにしても、筆者は、そもそもの最初から、このお声がけ自体の何が問題なのか、理解できなかった。
平成時代より、当時の天皇皇后両陛下が、将来の皇位継承についてご心配になっていたということは誰もが知っていることである。
例えば、平成21年11月6日の天皇皇后両陛下の記者会見にて、以下のようにお答えになっている。
-----引用開始(下線は筆者)-----
問2 両陛下にお伺いします。両陛下はこの20年,常に国民と皇室の将来を案じてこられたと思いますが,皇室についてはこの先,皇族方の数が非常に少なくなり,皇位の安定的継承が難しくなる可能性があるのが現状です。昨年末の天皇陛下のご不例の際,羽毛田信吾宮内庁長官はご心痛の原因の一つとして「私的な所見」と断った上で「皇統を始めとする諸々の問題」と発言し,皇室の将来を憂慮される天皇陛下の一面を明らかにしました。両陛下は皇室の現状,将来をどのようにお考えでしょうか。皇太子ご夫妻,秋篠宮ご夫妻を始めとする次世代の方々に期待することも交えながらお聞かせください。
天皇陛下
皇位の継承という点で,皇室の現状については,質問のとおりだと思います。皇位継承の制度にかかわることについては,国会の論議にゆだねるべきであると思いますが,将来の皇室の在り方については,皇太子とそれを支える秋篠宮の考えが尊重されることが重要と思います。二人は長年私と共に過ごしており,私を支えてくれました。天皇の在り方についても十分考えを深めてきていることと期待しています。
皇后陛下
皇位の安定継承という点に関しては,私も現状は質問のとおりだと思います。それについて陛下のお答えに私として付け加えるものは,何もありません。
幸せなことに,東宮も秋篠宮も孫として昭和天皇のおそばで過ごす機会を度々に頂き,また成人となってからは,陛下をお助けする中でそのお考えに触れ,日々のお過ごしようをつぶさに拝見し,それぞれの立場への自覚を深めてきたことと思います。これからも二人がお互いを尊重しつつ,補い合って道を歩み,家族も心を合わせてそれを支えていってくれることを信じ,皇室の将来を,これからの世代の人々の手にゆだねたいと思います。
-----引用終了-----
皇位継承について上皇后陛下が問題意識をお持ちであるなら、額賀衆議院議長に『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』とお声がけになったとしても、筆者には当たり前のことであるようにしか思えない。
もちろん、具体的な方策について言及されたのであれば、国政に関与しないお立場との関係で問題が生じるかもしれないが、国政に関与云々という話は、ご発言によって影響されてしまう側の未熟さによって生じるものであり、筆者としてはむしろ、お考えがあるのならお示し願いたいという立場である。
この点、週刊新潮の記事は、ネット上の記事を読むと、政府案を支持しているような印象で、紙面の記事を読むと「皇位継承」という本来取り組むべき課題に取り組むべきとしているような印象で、いずれであるかがよく分からなかった。
令和6年6月1日配信のデイリー新潮の記事「「よろしく進めてくださいね」 美智子さまが皇位継承議論で異例の“お声がけ”の理由とは」には以下の記載がある。
-----引用開始(下線は筆者)-----
「上皇后さまがこうしたお気持ちを吐露なさるのも無理はありません。何しろ皇室は、かれこれ18年にわたって“足止め”を余儀なくされていたのです」
小泉純一郎政権下の2004年末、将来的な皇族数の減少に備え、「皇室典範に関する有識者会議」が設置された。その後、
「翌秋には『女性・女系(母系)天皇を認める』『皇位継承順位は男女を問わず第1子を優先』という内容の報告書が作成されました。当時の皇室では若い世代の皇族方はいずれも女性で、“男系維持”は風前のともしびだった。反対の声もありながら皇統断絶だけは何としても避けねばならず、ぎりぎりの選択だったわけです」(同)
06年1月には小泉首相から有識者会議のメンバーらに「(同年)3月には皇室典範改正に関する法案を出す」との方針が示されたという。が、それも2月に突如、紀子妃のご懐妊が判明したことで雲散霧消してしまう。
-----引用終了-----
この記事では明確に示されていないし、誰も明確に口にしないようであるが、18年にわたる足止めの最大の要因は、平成18年2月7日、「突如、紀子妃のご懐妊が判明したこと 」なのである。
このご懐妊は、これまで進んでいた議論を皇室サイドからぶった切るという効果を生じるものであったのだから、筆者は、皇室より、「今回の懐妊には影響を受けずに議論を進めて欲しい」という一言があるものだと思っていた。
もちろん、その一言があったとして、ぶった切りの効果は生じたであろう。
しかし、その一言を出すのが、筋というものではなかったのだろうか。
これで結局、皇室尊重派としては、よく分からなくなってしまった。
いったい、どうお考えなのだろうか。
皇室のお考えに沿いたいと思っていたけれども、そもそものお考えがよく分からない。
今振り返ると、ご懐妊、ご誕生により、皇室も、いろいろ迷ってしまったということなのだろうか。
このお声がけ自体については、宮内庁長官によって否定されているので、お声がけがあったことを前提にした議論はあまり意味はないであろう。
それにしても、筆者は、そもそもの最初から、このお声がけ自体の何が問題なのか、理解できなかった。
平成時代より、当時の天皇皇后両陛下が、将来の皇位継承についてご心配になっていたということは誰もが知っていることである。
例えば、平成21年11月6日の天皇皇后両陛下の記者会見にて、以下のようにお答えになっている。
-----引用開始(下線は筆者)-----
問2 両陛下にお伺いします。両陛下はこの20年,常に国民と皇室の将来を案じてこられたと思いますが,皇室についてはこの先,皇族方の数が非常に少なくなり,皇位の安定的継承が難しくなる可能性があるのが現状です。昨年末の天皇陛下のご不例の際,羽毛田信吾宮内庁長官はご心痛の原因の一つとして「私的な所見」と断った上で「皇統を始めとする諸々の問題」と発言し,皇室の将来を憂慮される天皇陛下の一面を明らかにしました。両陛下は皇室の現状,将来をどのようにお考えでしょうか。皇太子ご夫妻,秋篠宮ご夫妻を始めとする次世代の方々に期待することも交えながらお聞かせください。
天皇陛下
皇位の継承という点で,皇室の現状については,質問のとおりだと思います。皇位継承の制度にかかわることについては,国会の論議にゆだねるべきであると思いますが,将来の皇室の在り方については,皇太子とそれを支える秋篠宮の考えが尊重されることが重要と思います。二人は長年私と共に過ごしており,私を支えてくれました。天皇の在り方についても十分考えを深めてきていることと期待しています。
皇后陛下
皇位の安定継承という点に関しては,私も現状は質問のとおりだと思います。それについて陛下のお答えに私として付け加えるものは,何もありません。
幸せなことに,東宮も秋篠宮も孫として昭和天皇のおそばで過ごす機会を度々に頂き,また成人となってからは,陛下をお助けする中でそのお考えに触れ,日々のお過ごしようをつぶさに拝見し,それぞれの立場への自覚を深めてきたことと思います。これからも二人がお互いを尊重しつつ,補い合って道を歩み,家族も心を合わせてそれを支えていってくれることを信じ,皇室の将来を,これからの世代の人々の手にゆだねたいと思います。
-----引用終了-----
皇位継承について上皇后陛下が問題意識をお持ちであるなら、額賀衆議院議長に『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』とお声がけになったとしても、筆者には当たり前のことであるようにしか思えない。
もちろん、具体的な方策について言及されたのであれば、国政に関与しないお立場との関係で問題が生じるかもしれないが、国政に関与云々という話は、ご発言によって影響されてしまう側の未熟さによって生じるものであり、筆者としてはむしろ、お考えがあるのならお示し願いたいという立場である。
この点、週刊新潮の記事は、ネット上の記事を読むと、政府案を支持しているような印象で、紙面の記事を読むと「皇位継承」という本来取り組むべき課題に取り組むべきとしているような印象で、いずれであるかがよく分からなかった。
令和6年6月1日配信のデイリー新潮の記事「「よろしく進めてくださいね」 美智子さまが皇位継承議論で異例の“お声がけ”の理由とは」には以下の記載がある。
-----引用開始(下線は筆者)-----
「上皇后さまがこうしたお気持ちを吐露なさるのも無理はありません。何しろ皇室は、かれこれ18年にわたって“足止め”を余儀なくされていたのです」
小泉純一郎政権下の2004年末、将来的な皇族数の減少に備え、「皇室典範に関する有識者会議」が設置された。その後、
「翌秋には『女性・女系(母系)天皇を認める』『皇位継承順位は男女を問わず第1子を優先』という内容の報告書が作成されました。当時の皇室では若い世代の皇族方はいずれも女性で、“男系維持”は風前のともしびだった。反対の声もありながら皇統断絶だけは何としても避けねばならず、ぎりぎりの選択だったわけです」(同)
06年1月には小泉首相から有識者会議のメンバーらに「(同年)3月には皇室典範改正に関する法案を出す」との方針が示されたという。が、それも2月に突如、紀子妃のご懐妊が判明したことで雲散霧消してしまう。
-----引用終了-----
この記事では明確に示されていないし、誰も明確に口にしないようであるが、18年にわたる足止めの最大の要因は、平成18年2月7日、「突如、紀子妃のご懐妊が判明したこと 」なのである。
このご懐妊は、これまで進んでいた議論を皇室サイドからぶった切るという効果を生じるものであったのだから、筆者は、皇室より、「今回の懐妊には影響を受けずに議論を進めて欲しい」という一言があるものだと思っていた。
もちろん、その一言があったとして、ぶった切りの効果は生じたであろう。
しかし、その一言を出すのが、筋というものではなかったのだろうか。
これで結局、皇室尊重派としては、よく分からなくなってしまった。
いったい、どうお考えなのだろうか。
皇室のお考えに沿いたいと思っていたけれども、そもそものお考えがよく分からない。
今振り返ると、ご懐妊、ご誕生により、皇室も、いろいろ迷ってしまったということなのだろうか。