自分用のクルマが手に入ったら、家族用のクルマはもっと楽な方が良い。子どもたちも大きくなってきたから、自分のドアから乗り降りさせたい。
それよりも、歳のせいかシビックタイプRのスパルタンな乗り味をキツく感じていたのが大きな理由。
1年ちょっと、1万kmしか乗っていないタイプRとほぼ交換という条件で乗り替えたのは、不人気で登録済未使用車が大量発生していた日産ティーノでした。
車庫に911と縦に2台入る全長で、ミッションは当時新進気鋭のハイパーCVT。前席の3人掛けシートや脱着可能なリヤシートも珍しく感じられました。
中古車イベントの目玉車として最高グレードのエアロスポーツ、メーカーオプションのリヤスポイラーとビスカスLSD付きが2台出品。白でサンルーフ付きのが欲しかったけれど、タッチの差で売約済みとなって仕方なく地味なシルバーのサンルーフなしとなりましたが、その分、条件はさらに好転して、支払総額は諸費用だけ。
4WDの設定のないティーノ、北海道ではごく少数派で同じ車種とすれ違うこともほとんどなく、CVTのおかげでエンジン回転が低く抑えられ、車内はとても静か。
しかも前輪の切れ角が大きく、抜群に小回りが利きます。
リヤの中央席をそっくり交換するタイプのビルトインチャイルドシートが設定されていたので、当時、日産のディーラーにいた"弟子"に取り寄せを依頼したら「どうせ売れっこないから」と長期展示されていたサンプルをタダでいただきました。
これはベンツやボルボのメーカーオプションと同様の仕組み・造りで、高価だったためかほとんど売れなかったようです。
ティーノのリヤシートは、ルノーメガーヌセニックと同じ機構・金具により簡単に脱着が可能で、それも売りのひとつだったけれど、シート1脚でもかなりの重さがあり、さらには畳んでも置き場が要るため、ほとんど外したことはなかったなぁ。
ただ、中央席を外した状態で左右席をそれぞれ後方中古寄りにセットすると、リムジン的なスペースになるのは面白かった。
アームレストがないので、腕のやり場に困りましたが。
このティーノ、ソフトな乗り心地と大仰なエアロパーツがもたらす高速安定性で絶好の長距離クルーザーでした。
2000回転ちょっとで100km/hという、当時としてはハイギアードなCVTと二重フロアのおかげで室内の静粛性も抜群。
ただ、燃費はさほど良くなく、街中ではリッター当たり10キロに届かず、長距離でも13キロ程度と期待外れでしたね。
走りは過不足なしといったところで、前車シビックタイプRとは比べものになりません。
あと、ボディーが腐食しやすいという、この世代の日産車に共通の弱点がありました。
整備士さん曰く、これは素材の鉄の問題だろう、と。
このクルマは父の所有になったり、娘の通勤の足になったり、結局は平成26年秋の廃車まで長く付き合うことになるのですが、とにかく錆に弱く、初めての車検時ですら、リヤの足回りを中心にサビが来ていると言われたほどでした。
平成13年の東京転勤後も、ひとりぼっちの自宅車庫で家族の帰省を待ち、その都度、足となって活躍してくれたティーノ。帰任後の18年夏、車両入れ替えに伴い、父のところへ行くことになりましたが、広く明るく静かな車内、抜群の小回り性など、父は亡くなる寸前まで大切に乗ってくれました。
ホント、日産だけじゃなく、バブル時代のマツダなんてマツダ店、アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店、オートラマ店とか、訳の分からない展開で、案の定ヤバい感じになってましたよね。
CVTは、個人的に嫌いじゃなかったです。特に、低速トルクの厚いエンジンにはマッチングが良かったと思います。
強い加速が要らない時、一定の回転を保ちながら、スルスルと車速だけが伸びていく感覚は新鮮でしたよ。
コラムから生えたレバーも珍しく、先端のSボタンひとつでエンジンブレーキを効かせることができ、峠の下りで重宝しました。
ただ、耐久性について疑問符が残ります。というのは、走行9万4千キロ余りの時、娘の通勤途上で大きな異音と共にCVTが逝ってしまったんです。
現代の国産車としては考えられないトラブルでしたが、そのまま廃車と相成りました。
丸みを帯びたシルエットの写真は、家族みんなに愛され、亡父からも大事にされたティーノが廃車となる直前の姿です(涙)
こんにちは。
ティーノに乗ってられたというのは意外でした。かなりの衝撃です。
ティーノとかバサラとか、あの当時、やたらと日産が次々と車種を増やしましたが、ほとんどもう何がどんなクルマか覚えがないです。
ティーノはこんな丸みを帯びたシルエットだったかと、それも驚きです。
そしてCVTの黎明期。この時の感想をもう少し聞きたいです。
>中央席を外した状態で左右席をそれぞれ後方中古寄りにセットすると、リムジン的なスペースになるのは面白かった。
へぇ。そんなんあったんですね。
ビートルズのアルバム。納得です。
サウンドは段々年を重ねるごとに重厚になるので、そうした変化を楽しむのもビートルズならではですね。