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過日、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏死去のニュースが流れた。
僕はずっと昔日に氏を見かけた日のことをよく覚えている。
この会社の本社が英国大使館の近くにあった頃、
動き出したコンビニ展開を取材したくてこの会社を訪問した。
まだセブンイレブンが3店しか展開されてなく、
4店目がまもなく開店に漕ぎ着けるという時期だった。
建物に入った僕は受付に進む前に、玄関ホールの近くにあったトイレに入った。
普通に広めで7、8人は並んで用を足せる。誰もいなかった。
そこで用を足している時に、背丈のある姿のいい人が静かに入ってきた。
伊藤社長だと僕はすぐ気がついた。
面識もなく今日訪ねる相手でもなかったし、トイレの中だし、僕は無反応で通した。
だがその用を足すわずかな時間に、伊藤社長から『いらっしゃいませ』と丁寧な挨拶を
された。僕はちょっとびっくりした。
若い見知らぬ人間にトイレであっても声をかける社長は初めてだったからだ。
僕は何かいい経営者の見本を見たような思いだった。
なかなかできることではない。
僕を無視してもなんの支障も、無視されても不快も生じないのにである。
ふっと頭を過ったのは、伊藤社長は社員全部の顔を知っているんだと。
この見知らぬ顔は会社を訪ねてきた客だと察知されたに違いない。
であっても、無反応、無視してもいいケースだ。ましてトイレの中だ。
僕はその一瞬の声かけに、戸惑い、そしてとても感心させられた。
家業の小さな商店から日本有数の小売チェーンに飛躍させた事業家だ。
セブンイレブン担当部門に行く前に、この朝、伊藤社長から受けた印象から、
小売業の雄として大きく展開し始めた会社の踏み込みの深さを印象づけられたのだ。
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