NHK環境特集番組シリーズ
SAVE THE FUTURE 2009
長編アニメーション
「川の光」(平川哲生監督作品 2009年 NHK)
○アース・ビジョン第18回地球環境映像祭こどもアース・ビジョン賞
○第16回上海テレビ祭外国アニメーション部門・銀賞
○第43回アメリカ国際フィルム・ビデオ祭アニメーション部門ゴールド・カメラ賞
○第27回シカゴ国際子ども映像祭・長編アニメーション部門最優秀賞
2006~7年に読売新聞に連載された小説「川の光」(松浦寿輝著)を原作とした長編アニメーション。
キャッチコピー:耳をすませて聞いてほしい、この惑星の生命のメッセージ。
→NHK環境特集番組シリーズSAVE THE FUTURE 2009の一つとして2009年6月20日放送されました。
現在はDVDで発売でされています。
公式ホームページ:NHKアニメワールド「川の光」
<物語>
クマネズミのタータとチッチは幼い兄弟。
父親と川辺に住んでいる。
冬に備えて食料を集めていたある日、人間が河川整備の工事を始めて住まいを追われてしまう。
人の住む町でドブネズミのように暮らすのか、自然の残っている川辺を求めるのか。
彼ら親子は川に住むネズミの誇りを忘れないため、後者を選び長く過酷なな旅に出る。
川の光を求めて…。
<感想>
きれいな絵とわかりやすいストーリーのため、小さなお子さんから大人まで老若男女にお勧めできる作品です。
親子で見た後に、子どもと感想を話し合うのも良いのではないかと思います。
以前にも紹介した作品なのですが、あらためて紹介させていただきます。
→「川の光」2009-12-27
この作品の見どころは多数ありますが、大きく分けると三点に絞られます。
○ストーリーと登場人物
○風景描写
○音楽
まずストーリーですが、旅のきっかけとなった河川の工事。
人間にとっては整備ですが、そこに住んでいた動物たちにとっては破壊なんですね。
人間が増えれば、それに合わせて町が変わってゆく。
避けられないことでしょうが、どう変えてゆくのかを考えされられます。
冷静な判断力と優しさを兼ね備えるお父さん。
しっかり者のお兄さんのタータ。
優しい心を持つ弟のチッチ。
物語はこの親子を中心に進みます。
それぞれが見せる強さ、弱さ、優しさが胸を打ちます。
僕が特に印象深く感じたシーンは、体の色が自分だけ白いことにコンプレックスを持っているチッチが、同じ境遇の傷ついたスズメの子にそのことを話して慰めるシーンです。
亡くなったお母さんと同じ白い体。
チッチが体の色だけでなく、優しさも受け継いでいることをうかがわせます。
旅を始めて出会う様々な動物たち。
それぞれ違う環境で生活しています。
縄張りを作り、他者を受け入れない集団。
その集団に嫌気が差して単独で生きる者。
飼い主からの食事が確保されているため、ネズミを襲わないネコなどなど。
クマネズミの目を通して、人間社会で生きる動物たちの姿を見せてくれます。
時には追われ、時には助け合い、幼いクマネズミ兄弟は成長してゆきます。
困った時には立場にこだわらず、救いの手を差し伸べる…作り手のメッセージを強く感じました。
次に風景描写ですが、「となりのトトロ」に匹敵するクオリティです。
ストーリーはともかく、個人的には「トトロ」よりも自分の記憶とオーバーラップする風景です。
そんな懐かしさと親しみを感じる絵作りのおかげでオープニングから感情移入できました。
川で暮らす虫や鳥、動物の姿が誇張されることなく登場するのも好感が持てます。
ちなみに劇中で登場する駅はJR吉祥寺駅を想定しているようです。
最後に音楽。
劇中のBGMは、臨場感を出しながらも美しく、なおかつ目立ち過ぎません。
映画音楽の王道と言うべき見事な構成です。
エンディングの歌は、遊佐未森さんの「I'm here with you」です。
澄みきった優しい歌声が澄んだ川のように感じました。
歌詞も作品やSAVE THE FUTURE 2009の趣旨にふさわしい内容です。
ちなみにこの歌は、NHK「みんなのうた」でも放送されました。
→2009年6-7月 初回放送
2009年8-9月 お楽しみ枠放送
→「みんなのうた」と発売されたCDでは歌詞が一か所違っています。
ストーリーだけ読むと名作「ウォーターシップダウンのうさぎたち」を連想される方もいらっしゃるかもしれません。
でも、舞台が日本の都市周辺部であったり、一家族の旅にしていることから「ウォーターシップダウンのうさぎたち」よりも僕は感情移入できました。
「ウォーターシップダウンのうさぎたち」が劣っているわけではありませんが。
※スタッフやキャストの皆さんを紹介したいのですが、長文になってしまいますので割愛します。