またまた、マイクさんのご登場である。
北アイルランド出身の直言居士。73歳。
子供みたいな人であるが、私とは不思議にウマが合い、話していると楽しい。
ロンドン南部在住。
チャリティ団体が運営する集合住宅に住んでおられる。まあ、区営住宅みたいなもの。
彼の住んでおられる所に、なんどかお邪魔したことがあるが、一人住まいとはいえ、小さい。
だから、そこには洗濯機などなく、一階に、大きな共同の一機があるだけ。
その大型共同洗濯機が、最近ウンともスンとも言わなくなってしまったのだそうだ。
困る。大変困る。
もちろん、事務所に報告したが、一向に埒があかない。
でも、洗濯物をためておくわけにいかないから、仕方なく、近所のコインローンドリーに行く。
そこで、マイクさん、一計を講じた。
何と、その地域の「国会議員」に手紙を書いて、窮状を訴えられたのである。
彼の住んでおられる所は、公的な(営利目的ではない)ものであるから、選挙民のこういう問題に耳を貸すことも、国会議員の仕事なのだそうである。
私、マイクさんから、まだ、その結末を聞いていないが、これには驚いた。
そして、英国のこういうところがとても好きである。全ての職能が、(少なくとも表面的には)「正常に」機能している。
国会議員は、「代議士」とも呼ばれるほどであるから、選挙区民の「代弁者」。彼らの苦情に耳を傾ける人。そして、その苦情には、何と「区営住宅」の故障した洗濯機のことまで含まれる、という。
日本では、こういう時、どこに「尻を持ち込む」のであろうか。まあ、いいところ、区役所の苦情受付窓口あたりか。
ことほど左様に、英国では、国会議員とその選挙区民との結びつきは非常に強い。これは、実に嬉しい。
国会で、何かの議案が持ち上がった時、国会議員は、即座に選挙区に帰り、選挙区民の声を聴くことがよくある。これなんぞ、まさに代議士の面目躍如といったところか。
ただ、これには、困った一面もあって、もし、ある国会議員が、その選挙区民の誰かから反感を買うとすると、極端な場合、殺されてしまうことさえあるというから、怖い。
比較的最近、そういう事例が2件あった。男性と女性。二人とも、理想を貫こうとし、選挙区民からは非常に人気があった。
英国の政治は、素人が見ていても、面白い。そして、英国民の政治に関する認識は、これまた非常に高い。
日本の国は、明治に入り、一足飛びに近代国家になろうとした時、英国の議会制度などをお手本にしたと思う。
でも、日本では、何かにつけて、本来の理想が、日本独特の変容を遂げてしまうところがあると、私は思う。
日本の国会議員って、非常な高給取りであるというのは知っていますが、一体、どういうことをしておられるんですか。
その辺りがどうしてもわからず、日本を出たという節が、私にはあります。