私、こう見えてもスポーツ好き。
でも、運動神経はないに等しく、情けないくらい、なにもできません。
従って、そういうのをふんだんに持っておられる格好いい人たちが、飛んだり跳ねたり、走ったりしてしておられるのを観て楽しんでいるという次第。
幸い、スポーツの盛んな英国に住んでおりますので、大抵のスポーツはTVで観られます。
そして、この国で盛んなスポーツって、実に広範で、非常にバランスが取れています。
目下、ベルグレード(セルビア)で、世界室内陸上。男子の棒高跳びが、いちばんのお目当てなんですが、まだ出てきていません。それと男子の高跳びも。
いろんな球技も好きですが、私が本当に好きなのはやはり野球ですね。でも、この国には、それがありません。
残念ですが、しかし、それを補って余りある、他の球技が、いっぱいあります。そしてそれらは、世界でも有数のもの。フットボールとか。
クリケットもありますが、これだけは、観ません、私。一体どこが面白いのかわからない為です。まあ、わかろうとしない、ということでしょうかね。
ところで、フットボールと並んで、英国で人気のある球技といえば、やはりラグビーですね。ご存知かと思いますが、双方とも、発祥地は、この英国です。
私、正直に言いますと、どちらかといえば、ラグビーの方が好きなんです。
日本も、このラグビー、この頃、だいぶ強くなってきましたね。来年、フランスで、ラグビーワールドカップ。楽しみにしています。
ラグビーといえば、毎年2月から3月にかけて、この英国を中心にして、ワグビー「6カ国対抗」というのがあり、ほぼ全試合観ます。
6カ国(イングランド、スコットランド、アイルランド、ウエールズ、フランス、そしてイタリア)の総当たり戦で、計15試合。
今日が、今年の最終日でした。
午後に観たのは「ウエールズ:イタリア」戦。
イタリアは、このリーグに加盟するのが遅く、たった7年前。そして、これまで、1勝もしていません。0勝34敗。
誰もが、まず、ウエールズの楽勝を予想したことでしょう。勿論、私もその一人でした。
ウエールズは昨年の覇者。しかも、ウエールズホームグラウンドでの試合でしたからね。
後半、1分を残し、21:15でウエールズ、リード。誰もが、ウエールズの勝利を確信したと思いますが、その時、奇跡的なことが起ったのです。
球を手にしたイタリアの小さな選手が、ウエールズの防御陣を、かいくぐって、最後は、左に来ていた同僚に、綺麗なパス。彼がほぼ真ん中にタッチダウンして21:20。
勿論、コンバーションも簡単に決まり、ゲームセット。21:22。イタリアの選手は、皆泣いていましたよ。
このような、絵に描いたようなトライは、なかなか観られませんが、この時ばかりは、本当に胸のすく思いがしましたね。私もやんやの喝采を惜しむことなく送りましたよ。
野球で言えば、3点リードされているチームが、9回の裏2死フルカウントで、満塁ホームランのサヨナラ。そんな感じです。
久々に、ラグビーの醍醐味を味わいました。
ウエールズは、今季の優勝戦線から脱落していますが、イタリアがこれで自信をつけて、来季からは、他の5カ国に伍する勢力になってほしい。
今晩、イングランド:フランス戦がありますが、フランスは、アイルランドとともに、優勝戦線に残っていると思います。
ああ、胸のすく思い。
またまた、マイクさんのご登場である。
北アイルランド出身の直言居士。73歳。
子供みたいな人であるが、私とは不思議にウマが合い、話していると楽しい。
ロンドン南部在住。
チャリティ団体が運営する集合住宅に住んでおられる。まあ、区営住宅みたいなもの。
彼の住んでおられる所に、なんどかお邪魔したことがあるが、一人住まいとはいえ、小さい。
だから、そこには洗濯機などなく、一階に、大きな共同の一機があるだけ。
その大型共同洗濯機が、最近ウンともスンとも言わなくなってしまったのだそうだ。
困る。大変困る。
もちろん、事務所に報告したが、一向に埒があかない。
でも、洗濯物をためておくわけにいかないから、仕方なく、近所のコインローンドリーに行く。
そこで、マイクさん、一計を講じた。
何と、その地域の「国会議員」に手紙を書いて、窮状を訴えられたのである。
彼の住んでおられる所は、公的な(営利目的ではない)ものであるから、選挙民のこういう問題に耳を貸すことも、国会議員の仕事なのだそうである。
私、マイクさんから、まだ、その結末を聞いていないが、これには驚いた。
そして、英国のこういうところがとても好きである。全ての職能が、(少なくとも表面的には)「正常に」機能している。
国会議員は、「代議士」とも呼ばれるほどであるから、選挙区民の「代弁者」。彼らの苦情に耳を傾ける人。そして、その苦情には、何と「区営住宅」の故障した洗濯機のことまで含まれる、という。
日本では、こういう時、どこに「尻を持ち込む」のであろうか。まあ、いいところ、区役所の苦情受付窓口あたりか。
ことほど左様に、英国では、国会議員とその選挙区民との結びつきは非常に強い。これは、実に嬉しい。
国会で、何かの議案が持ち上がった時、国会議員は、即座に選挙区に帰り、選挙区民の声を聴くことがよくある。これなんぞ、まさに代議士の面目躍如といったところか。
ただ、これには、困った一面もあって、もし、ある国会議員が、その選挙区民の誰かから反感を買うとすると、極端な場合、殺されてしまうことさえあるというから、怖い。
比較的最近、そういう事例が2件あった。男性と女性。二人とも、理想を貫こうとし、選挙区民からは非常に人気があった。
英国の政治は、素人が見ていても、面白い。そして、英国民の政治に関する認識は、これまた非常に高い。
日本の国は、明治に入り、一足飛びに近代国家になろうとした時、英国の議会制度などをお手本にしたと思う。
でも、日本では、何かにつけて、本来の理想が、日本独特の変容を遂げてしまうところがあると、私は思う。
日本の国会議員って、非常な高給取りであるというのは知っていますが、一体、どういうことをしておられるんですか。
その辺りがどうしてもわからず、日本を出たという節が、私にはあります。
その時、日本に帰っていた。
ある日、どこかで知り合いの数人が集まり、おしゃべり。
男女数人。他愛もない話に花が咲く。まあまあ楽しい。
私が、男性の一人に何かを言った時、誰かから声がかかった。
「突っ込まないで! あなただって突っ込まれたらいやでしょ」
これにはびっくりした。
私、その男性に、そんなに「突っ込んだ」質問をしたつもりはない。個人的であまりにも不躾な質問を、。その程度の弁えはある。
これで分りました。じゃ、日本人のおしゃべりというのは、「突っ込まない」で、当たり障りのないものということになるのですか。
(まあ、それは、そのおしゃべり集団の性質にもよりますよね。よく知った連中か、それともそれほど知らない人ばかりとか。それと、その集団の人数も関係します)
私は、逆に、どちらかというと「少し、突っ込んだ」質問をしてほしい方である。他愛もないおしゃべりには退屈を感じてしまう。
思い返せば、昔、日本にいた20代後半の時に、そういうことを強く感じた。
その頃、私、いろんな事情から、悶々とした生活を送っていた。酒ばかりくらい、。挙句、多くの人の信用を失った。
私が、そこで本当に欲しかったのは、誰かからの「何かあるのと違うのん?」の一言であった。しかし誰からも、何も、。
両親はすでに亡く、兄姉も誰も、私から遠ざかっていった。腫れ物を触るように。「四面楚歌」とはまさにこのことである
英国に来て、さすがにそういう意味での問題はなくなったが、今度は、生活に不安があったからであろう、話をしている相手の人を質問ぜめ。これも勿論いけない。(私、喋り続けに喋っている人には、精神的な問題があると思う。静かにしていると、不安に駆られる、。)
それから、数十年の年月を経て、今は、お陰様で、生活面での不安もなくなり、もう少し、ゆったりとした毎日が送れるようになった。人のことに思いを馳せることもできる。会話の仕方も、少しは大人っぽくなったのではないであろうか。
でも、この状態に達するのに、今の歳の77年。
人間、生きている限り、どんな人にも不安はつきものであろうから、現状で、ひとまず良しとするか。
山のあなたの空遠く
「幸い」住むと人の言ふ
噫 われ人と尋めゆきて
涙さしぐみかへり来ぬ
山のあなたになほ遠く
「幸い」住むと人の言ふ
ドイツ人、カールブッセ(Carl Busse) の詩、「山のあなた(Über den Bergen)」です。
短いですが、日本では、この上田 敏の訳文によって、広く知られるところとなりました。七五調の名訳です。
因みに、これは、上田の西欧訳詩集「海潮音」の中の一編。知りませんでした。
じゃ、英国では?と思って、ちょっと調べてみましたところ、知られている様子がまるでないんです。詩と言うものが、よく親しまれている英国にしてです。
ブッセのドイツでどうだったかは、知りません。
詩作の盛んな英国で、この「山のあなた」がそんなに知られていないと思われるのは、こう言うことではないでしょうか。
英国には、山がない。しかし、ドイツにも日本にも、山はある。
だから、英国人、この詩を読んでも、胸に訴えるものがないんです。
なるほど、そう言われてみれば、英国には山がありませんね(あるとすれば、スコットランド、または、ウェールズに)。
ところで、このブッセの詩と、言っていることが、ほぼ同じと言うものがあるんです。
メーテルリンク(Maurice Maeterlinck) の「青い鳥( L’oiseau bleu)」です。
これは、子供向きに書かれた童話で、日本の皆さんもご存知かと思います。例のチルチル、ミチルの話ですよ。
作者はフランス語圏のベルギー人です。これも、知りませんでした。
この4月、アイルランドに行って来ます。アイルランドにも、山はありません。