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「夕日の歌」 ~遙かな春の予感~

2016-02-23 16:41:13 | 「尾崎喜八を尋ねる旅」
先日、春を感じる「夕日の写真」と北側に位置する「箕面の山」を撮りました。
この写真を見ながら、「夕日の歌」を読んでみました。



「夕日の歌」 自註 富士見高原詩集(尾崎喜八)より

夕日のひかりの最後の波が

いま高原の樅(もみ)の岸辺を洗っている。

周囲の山々にはするどい霜の予感がある。

厳粛な きよらかな

海抜一千二百メートル。

たそがれは宝石のような山かいの湖(うみ)の遠望。

エンガーデンのニイチェの事がおもわれる。


今夜はすべてに解体と結晶とが行われるだろう、

すべてに秋の死と冬への転生とがあるだろう。

そして いつか この私にも

薫風の岩かどか森の泉の片ほとりで

私のツァラトゥストラやオルフォイスに

出逢う春の日があるだろう。


【自註】
八ヶ岳の裾野の中でもかなり高い雀ノ森という残丘のような小山への遠足の帰りに、こうした夕日の眺めに出会った。

北西に遠く諏訪湖の水がきらきら光り、振り向けばすぐ頭の上に兜のような八の一峯阿弥陀岳が、まっこうから金紅色の落日を浴びてのしかかっていた。

低地の村里にはもうたそがれの色が漂っているが、霧ヶ峰、車山、守屋山などは、湖水を挟んでまだ明るく美しかった。

そしてこの寒く厳粛で男らしい光景に何となくニイチェの名が思い出され、この『ツァラトゥストラ』の作者の特に愛したスイスの山村エンガーディンの夕日の時が創造された。

と同時にギリシアの伝説上の歌い手で音楽の名手オルフォイスの事が、私のためにもやがて来るべき遙かな春の予感として脳裏をよこぎった。


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ニイチェ<Friedrich Wilhelm Nietzsche> (1844.10.15-1900.8.25)
ドイツ哲学者/リュッケン生まれ。ニイチェは、『ツァラトゥストラ』では、こう書いています。
『人間が復讐から開放されること、これが私にとって最高の希望の橋であり、長かった悪天候ののちにかかる虹である』

(ウィキペディアより引用)

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オルフォイス(Orpheus)ギリシア神話に登場する吟遊詩人。
冥府のオルペウス

(ウィキペディアより引用)
*オルペウス(冥府くだり↓が書かれています)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%82%A6%E3%82%B9



遙かな春の予感(2016年2月9日 西の空/大阪府豊中市)

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