サラブレッドとは

競馬は人生の比喩だと言われる。
馬券のかわりに「自分を買う」のである。
もちろん競走馬たちは、ファンが馬券を買って応援してくれているから頑張ろうなどとは思わないだろう。
競走馬たちは自分たちのことで手一杯なのである。

競走馬、つまりサラブレッドは過酷な競争の上に成り立っている。
競馬の世界では強い馬、速い馬以外は淘汰されていく。
種牡馬になれるのは血統的背景の優れた超エリートだけである。
たいした成績もあげられない場合や故障がちな場合、地方競馬に転用されたり、研究馬や食用肉にされることも多い。
「だから可哀そう」とは私は言わない。
それは彼らが背負った生き物としての宿命だから。
それゆえにレースは彼らの生き残りをかけた真剣勝負を表現する場である。
馬券を買うファンはいちいちそんなことは考えない。
私もレースを観戦するときそんな感傷に浸っている余裕も無い。
シビアだけど当たった、外れたの一喜一憂の世界だ。
「ディープインパクトの菊花賞、感動しました」とも言わない。
輝かしい実績にけちをつけるつもりなど毛頭ないが、３冠はある程度予想された規定路線の事実だから。
（着差が渋かったのには驚いたが。）
こんなことを書くとディープインパクトに夢を抱いているファンにお叱りを受けるかもしれない。
ただディープインパクトのお陰で馬生が変わってしまう馬だっているということも頭の片隅にでも残しておいて欲しい。
皐月賞２着シックスセンス、ダービー２着インティラミ、菊花賞２着大健闘アドマイヤジャパン。
ディープインパクトがいなければ１冠は取れていたかもしれない馬たちだ。
ディープインパクトの将来は無限大に明るいが、彼らの将来は今後の結果によっても変わる。
たったのクビ、たったのハナが５年１０年の命と引き換えになるかもしれない。
お受験や出世レースよりもサラブレッドの終わりなき競争は残酷なのである。