9回ウラ。新井、多村の打席にドラマを期待したりもした。
その一方で静かに現実を見つめているもう一人の自分がいた。
大舞台に経験のない新井は固まっている。答えは見えていた。
多村の大ファールはかなり左に切れていた。
もう終わるんだ。また一昨年のプレーオフのように。昨年のプレーオフのように。
敗戦
アメリカの祈りが届いたのか?
日本の祈りが届かなかったのか?
ゲームセットのあとでテレビのアナウンサーが言う。
「日本にはまだ可能性が残されています。明日のアメリカーメキシコ戦の結果次第です」と。
そんなことはどうでもよくなった。
世紀の誤審があったにせよ、それを一蹴する底力が日本にはあると信じていた。
この韓国戦を勝ち抜いてすべては丸く収まると堅く信じていた。
だからたとえ奇跡が起きてメキシコが勝ったとしても心は晴れない。
日本ー韓国戦 逆MVP
◎今江
途中出場とはいえプロなんだからあれはアウトにしなきゃいけない。
「アウト差し上げます」と韓国のランナーがサービス走塁しているのに。
あれがなければゼロで抑えられたはず。
普通に差せれば流れが変わるはずなのに。
いやな予感はあった。交代して最初に今江に飛んだ打球を1回落として間一髪アウト。
ガチガチだ。大一番で若さが出なきゃいいなと心配していたが肝心なところでそれが出てしまった。
○松中
1回2アウト1,2塁、6回2アウト1,2塁。
打席に松中ではなくて松井だったら・・・日本国民の9割以上はそう思ったかもしれない。
ホークスファンの私として、こういう場面で松中がきっと打たないことには慣れまくっているので驚きはしないが、たまにはまぐれでいいから間違って打ってほしかった。
2度のヒットはいずれもランナーがいないとき。これでは4番と言えない。
▲岩村
先制ならず。しかも一番もったいないホームアウト。
3塁を回ったときの減速からしてどうもそのときに軽い肉離れを起こしていたらしい。
日本にとっての VERY VERY VERY アンラック!
前にも書いたが接戦での本塁憤死は流れを変える。
本封されたチームがほとんど負ける。
△杉内
9番バッターに四球。絶対やってはいけないこと。
昨年のパリーグMVPピッチャーでもまだ松坂の域には達していない。
ハートの弱さは松中ともども解消されてはいない。
他にも福留、藤川・・・
8回の表に致命的な2点が韓国に入った。
TBSの松下健次アナウンサーは叫ぶ。
「まだ2点。まだ8回です」
そんな慰めは視聴者の心に響かない。
もう日本チームの呼吸は止まりかけていた。
日本が韓国に勝つとしたら、先制して終盤リード、悪くても同点が最低条件だと思っていた。
ミスから失点すればノーミスの韓国に勝てるはずがない。
日本の得点力のなさを指摘されるけど、韓国は3安打2点、日本は6安打1点。
確かにクリーンアップは打たなすぎだけど敗因は他にもあると思う。
ワンチャンスをものにできた韓国とそれができなかった日本。
ミスにつけ込んだ韓国とそれをカバーできなかった日本。
対日本線、対メキシコ戦のようなスローペース(投手戦)、対アメリカ戦のようなハイペース(打撃戦)、さまざまなペースに適応できる韓国は強い。
いくら振り返ってみても敗戦という現実は変わらない。
ホークスファン、王監督のファンである私は何度この痛みを体感したことか。
いつも最終戦。いつも1点差。いつも同じような敗戦。
そしてその輪の中にはいつも松中がいる。
今さら私は誰を責めるわけでもなく、「これは呪いか?」と思いたくもなる。
「王監督も歳をとったな」しみじみそう感じた。世界の王の背中が淋しい。
王監督の胸中を察すると非常につらい。
WBCが終わればペナントレースが始まるけどその先にはプレーオフという高い壁がある。
半年後には確実に3度目の秋が訪れる。
敗戦に意味はあっても、感動や感慨はない。
勝って感動がしたかった。
ドリームチーム
もはやそれは名前だけで夢を見させてはくれない。