あれは,あれで良いのかなPART2

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小泉改革を江戸時代の三大改革と比較して考える(その1)

2005年10月17日 00時15分17秒 | 歴史の話
前回,今後想定される増税問題について江戸時代からアプローチしましたが(記事はこちらです),今回は「小泉改革」が江戸の三大改革のどの要素に最も近いといえるかを検討し,そこから今後の動きを想定したいと思います。

1 小泉改革はどの改革に該当するか
  まず,前提として,江戸の三大改革とは,享保の改革寛政の改革天保の改革をいいます(なお,それぞれの改革の内容を書くと,それだけで日本史の教科書になってしまいますので,とりあえずすべて説明することは割愛します。)。
さて,小泉改革は,どの改革に最も近いかというと,結論から先に言うと,「享保の改革+田沼の政治」といえると考えます。

2 享保の改革と田沼の時代とは
  では,享保の改革とはどういうものであったのでしょうか。時代背景も含め,簡単に説明します。
(1) 元禄バブルとその崩壊
  5代将軍綱吉の時代になり,世の中がものすごく安泰となってきたことにより,綱吉はお寺を造るなど様々な公共事業にお金をかけるようになりました。結果,元禄時代は大変景気のよい時代となり,地方で農業をやっていた農民もどんどん都市部に仕事を求めてやってくるようになってきました(便宜上「元禄バブル」と呼びます。)。この元禄バブルにより,商人や農民にも,金儲けがうまくいった「勝ち組」と失敗した「負け組」が完全に分離されるようになりました(今のような破産法がないため,負け組は復活の望みがほぼ0になるかなりシビアなものでした。)。
  しかし,元禄バブルもやがて崩壊すると,今度は農村に人がいないことから,米の収穫が減ってきてしまいました。江戸時代は,「重農主義」,すなわち幕府や諸藩は年貢米という「米」を徴収し,それを商人に売って「金」に換えることで財政を維持していました。したがって,米=金でした。
  ところが,農村に人がいないということは,米を作る人がいない,すなわち「米不足」になるわけです。そして,年貢米は米の収穫高に応じて決められていましたので(累進課税制度みたいなものです),米不足=財政難に陥ってきたわけです。

(2) 享保の改革の具体的な内容と成果
  そこで,吉宗は次のようなことを行いました。
 ア 年貢を定免法とした(取れ高に関係なく,毎年一定量の米を年貢米として供出させた。定律課税制度ですね。)。
 イ 上米法(諸藩の大名から一定量の米を幕府に差し出せば,参勤交代の負担を緩和するというもの。)。
 ウ 倹約,質素の奨め(無駄遣いをなくそう)
 エ 新田開発の推進(田圃が増えれば米が増えるという発想です。)
 オ 目安箱の設置,コネや縁故でなく実力のあるものの登用,法制度の整備など(過去ではなく未来を見つめる)
  その結果,この改革は幕府の財政も復活し,一応成功したと評価されています
  ただし,決定的なミスがありました。それは,「重農主義」を改めなかったことです。つまり,米中心の財政を維持していたため,結局米を金に換える段階で商人が関与してきて,価格が安定しなかったという問題がありました。もっというと,米は豊作になると値段が下がるため,新田開発をして米がたくさん取れるようになっても,結局幕府の手元に入るお金はほとんど増えなかったのです。ここが最大のミスでした

(3) 田沼意次の行財政改革
  その後,老中(今の内閣総理大臣)に就任した田沼意次は,実はこの矛盾にいち早く気が付いていました。
  彼は,「米中心ではだめだ,これからは商人のお金,すなわち民間活力を積極的に取り入れることが重要である」と考え,日本ではじめてともいえる「重商主義」を取り入れました。
  その代表として,印旛沼の干拓が上げられます。これは,民間活力を導入して行われた大プロジェクトでした。
  また,株仲間を奨励し,勝ち組の商人を積極支援しました。さらに,ロシアとの貿易まで計画し,とにかく「世の中金だ!」を推進しようとしてきました。
  しかし,あまりに考え方が斬新すぎたため,いわゆる抵抗勢力の反対にあって,彼は失脚してしまったのです(ちなみに,彼は賄賂で失脚したと歴史の授業では教えていますが,彼がもらった賄賂は,江戸時代では当然のものであり,今でいう「お中元」や「お歳暮」の類でした。今政治家がもらっている賄賂とはちょっと意味が違います。)。

次回,これを踏まえて小泉改革と比較してみたいと思います(こちらをクリックしますと,続編にジャンプします。)。

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