小泉総理の靖国参拝問題について,賛否両論があり,ネット上でも様々な議論が展開されています。
とはいえ,実は「何が問題なのかよく分からない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで,今回は,改めて何が問題なのか,超簡単ではありますが整理したいと思います。
1 靖国神社とは何か
戦没者,すなわち戦争で亡くなった方の魂が祭られている神社です。戦没者を「神」として扱っていることになりますので,お墓とは違います。
2 靖国神社自体に何か問題があるのか
まず,神社ですから,神道というジャンルの「宗教団体」であり,「宗教法人」です。
次に,1で触れた戦没者の中に「A級戦犯」と呼ばれる人たちの魂も祭られています。
これらの点が,後に触れる問題の前提となります。
3 A級戦犯って何
簡単に言えば,「第二次世界大戦の原因を作った政治家や軍人達」をいいます。主に,当時の総理大臣や陸海軍大臣などが対象となりました。
そして,彼らの多くは,戦後,アメリカら戦勝国で構成された裁判(極東軍事裁判)において,死刑となりました。
4 総理大臣が靖国神社に参拝することを反対している人は,何を問題としているか
主に次の点です。
(1) A級戦犯が祭られている神社にお参りに行くということは,戦争のきっかけを作った人に対して敬意を表するため,日本を再び軍事国家にしてしまうのではないか
(2) (1)の結果,中国や韓国など第二次世界大戦で日本の被害を受けた国の人たちが,参拝することは過去の戦争を全く反省していないと思って批判しているのに,その批判を無視して参拝をすることは,国際協調主義の観点から問題なのではないか
(3) 憲法20条で,政教分離といって国は特定宗教に荷担してはならないといっているのに,総理大臣が参拝に行くというのは,神道と特別視しているため,憲法20条と89条に違反するのではないか
(4) 福岡地裁や大阪高裁において総理大臣の参拝は憲法違反だという判決が出たのに,あえて参拝にいったことは,司法を無視しており法を守る意識が弱いのではないか
5 逆に,参拝を賛成している人はどう思っているのか
上記と番号をリンクさせて説明します。
(1) あくまでも戦没者に対する哀悼の意を込めての参拝であり,むしろ二度と戦争を起こしませんという意思を表明しているに過ぎない(一部賛成者は「A級戦犯も戦争被害者,哀悼の意を示すのは人として当然」と主張している。)。
(2) (1)の理由から,諸外国の批判は筋違いである。いずれはこの本心を分かってくれるだろう(ただし,一部過激な賛成派は「そんなこと,外国からいわれる筋合いはない」とも言っている。)。
(3) この参拝は,あくまでも私人(個人)の参拝に過ぎないので,憲法20条,89条には当てはまらない。
(4) これらの裁判は,あくまでも「請求棄却」であり(つまり,損害賠償の請求を認めなかった),しかも理由中の判断に過ぎず,さらには,最高裁の判決ではないので,あまり気にする必要はない。
6 どちらの言い分が正しいのか
そこは,皆様の判断です。ただ,一部評論家は,いくつかの問題をごっちゃまぜにして論じているため,話が変な方向に行っている場合がありますので,ご注意ください。
7 大阪高裁や福岡地裁の判決は,何を言っていたのか
まず,この訴訟で,原告は何を訴えたかというと,簡単に言うと「総理大臣が神社に参拝行ったので,神道という宗教を信じていない私たちはまさか国が特定宗教を支援するとは思わなかったのでショックを受けた。だから,そのショックに対する損害を賠償してほしい。」というものです。
それに対する判決は,ごく簡単に言うと次のとおりです。
「首相が公用車で秘書官等を伴って参拝に行き,玉串料を支払っているという行為を見れば,それは外見上公務といえる。そして,公務で神社を参拝するということは,神道を援助助長することにつながるため,特定宗教を指示したといえる。だから,憲法20条に違反する行為だよ。
でも,それによって,訴えた人に対するダメージはそんなに大きくないため,お金で賠償するほどではない。
だから,損害賠償の請求は認めないよ。」という感じのものです。
8 憲法20条や89条って,何をいっているのか
憲法20条は,1項で信教の自由を保障し,2項では宗教行事への参加強制を否定し,3項で国と宗教の結びつきを否定(政教分離)しています。
憲法89条は,国は特定の宗教のみに対して,お金を出すことを禁止しています。これは,憲法20条3項を財政面から更に保障したものと説明されています。
以上から,憲法では「国がある宗教を援助したり,逆に干渉したりすること」を禁止していることになります。
9 ところで,無宗教の戦没者がまつられている場所ってどこかにあるのか
千鳥が淵にあるようです。ただし,私には詳細はよく分かりません。
10 この問題,解決策はないのか
参拝を続けたら国内外から反対意見が出るが,参拝を止めたら賛成している人から批判が出ます。
それならば,無宗教施設をちゃんと作って,そこへの訪問行為にすればよいのではという意見もありますが,これについても,「神であった戦没者を神でなくすることはおかしい」という意見や「A級戦犯はどうするんだ」などの意見もあり,万事解決とは行きません。
結局,この問題は,完全な解決策は今のところない,という状態です。
以上になります。可能な限り,主観を排除して事実のみを淡々と記しました。
これを踏まえて,靖国参拝問題を考えてみたらいかがでしょうか。
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とはいえ,実は「何が問題なのかよく分からない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで,今回は,改めて何が問題なのか,超簡単ではありますが整理したいと思います。
1 靖国神社とは何か
戦没者,すなわち戦争で亡くなった方の魂が祭られている神社です。戦没者を「神」として扱っていることになりますので,お墓とは違います。
2 靖国神社自体に何か問題があるのか
まず,神社ですから,神道というジャンルの「宗教団体」であり,「宗教法人」です。
次に,1で触れた戦没者の中に「A級戦犯」と呼ばれる人たちの魂も祭られています。
これらの点が,後に触れる問題の前提となります。
3 A級戦犯って何
簡単に言えば,「第二次世界大戦の原因を作った政治家や軍人達」をいいます。主に,当時の総理大臣や陸海軍大臣などが対象となりました。
そして,彼らの多くは,戦後,アメリカら戦勝国で構成された裁判(極東軍事裁判)において,死刑となりました。
4 総理大臣が靖国神社に参拝することを反対している人は,何を問題としているか
主に次の点です。
(1) A級戦犯が祭られている神社にお参りに行くということは,戦争のきっかけを作った人に対して敬意を表するため,日本を再び軍事国家にしてしまうのではないか
(2) (1)の結果,中国や韓国など第二次世界大戦で日本の被害を受けた国の人たちが,参拝することは過去の戦争を全く反省していないと思って批判しているのに,その批判を無視して参拝をすることは,国際協調主義の観点から問題なのではないか
(3) 憲法20条で,政教分離といって国は特定宗教に荷担してはならないといっているのに,総理大臣が参拝に行くというのは,神道と特別視しているため,憲法20条と89条に違反するのではないか
(4) 福岡地裁や大阪高裁において総理大臣の参拝は憲法違反だという判決が出たのに,あえて参拝にいったことは,司法を無視しており法を守る意識が弱いのではないか
5 逆に,参拝を賛成している人はどう思っているのか
上記と番号をリンクさせて説明します。
(1) あくまでも戦没者に対する哀悼の意を込めての参拝であり,むしろ二度と戦争を起こしませんという意思を表明しているに過ぎない(一部賛成者は「A級戦犯も戦争被害者,哀悼の意を示すのは人として当然」と主張している。)。
(2) (1)の理由から,諸外国の批判は筋違いである。いずれはこの本心を分かってくれるだろう(ただし,一部過激な賛成派は「そんなこと,外国からいわれる筋合いはない」とも言っている。)。
(3) この参拝は,あくまでも私人(個人)の参拝に過ぎないので,憲法20条,89条には当てはまらない。
(4) これらの裁判は,あくまでも「請求棄却」であり(つまり,損害賠償の請求を認めなかった),しかも理由中の判断に過ぎず,さらには,最高裁の判決ではないので,あまり気にする必要はない。
6 どちらの言い分が正しいのか
そこは,皆様の判断です。ただ,一部評論家は,いくつかの問題をごっちゃまぜにして論じているため,話が変な方向に行っている場合がありますので,ご注意ください。
7 大阪高裁や福岡地裁の判決は,何を言っていたのか
まず,この訴訟で,原告は何を訴えたかというと,簡単に言うと「総理大臣が神社に参拝行ったので,神道という宗教を信じていない私たちはまさか国が特定宗教を支援するとは思わなかったのでショックを受けた。だから,そのショックに対する損害を賠償してほしい。」というものです。
それに対する判決は,ごく簡単に言うと次のとおりです。
「首相が公用車で秘書官等を伴って参拝に行き,玉串料を支払っているという行為を見れば,それは外見上公務といえる。そして,公務で神社を参拝するということは,神道を援助助長することにつながるため,特定宗教を指示したといえる。だから,憲法20条に違反する行為だよ。
でも,それによって,訴えた人に対するダメージはそんなに大きくないため,お金で賠償するほどではない。
だから,損害賠償の請求は認めないよ。」という感じのものです。
8 憲法20条や89条って,何をいっているのか
憲法20条は,1項で信教の自由を保障し,2項では宗教行事への参加強制を否定し,3項で国と宗教の結びつきを否定(政教分離)しています。
憲法89条は,国は特定の宗教のみに対して,お金を出すことを禁止しています。これは,憲法20条3項を財政面から更に保障したものと説明されています。
以上から,憲法では「国がある宗教を援助したり,逆に干渉したりすること」を禁止していることになります。
9 ところで,無宗教の戦没者がまつられている場所ってどこかにあるのか
千鳥が淵にあるようです。ただし,私には詳細はよく分かりません。
10 この問題,解決策はないのか
参拝を続けたら国内外から反対意見が出るが,参拝を止めたら賛成している人から批判が出ます。
それならば,無宗教施設をちゃんと作って,そこへの訪問行為にすればよいのではという意見もありますが,これについても,「神であった戦没者を神でなくすることはおかしい」という意見や「A級戦犯はどうするんだ」などの意見もあり,万事解決とは行きません。
結局,この問題は,完全な解決策は今のところない,という状態です。
以上になります。可能な限り,主観を排除して事実のみを淡々と記しました。
これを踏まえて,靖国参拝問題を考えてみたらいかがでしょうか。
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