あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ,動的防衛力に転換した防衛大綱とはなんぞや

2010年12月18日 18時40分11秒 | よく分かる(?)シリーズ
久々のよく分かる(?)シリーズです。
政府は,17日,新たな防衛大綱を発表しました。ここでは,中国や北朝鮮の活動を懸念事項を位置づけ,南西諸島の防衛力強化を打ち出すほか,これまでの「基盤的防衛力構想」から機動性,即応性重視の「動的防衛力」にシフトすることを打ち出しました。反面,武器輸出三原則の見直しについては,明記を避けました。

海空自衛隊の装備強化=総額は減少―中期防(時事通信) - goo ニュース

あとは武器輸出三原則と,テロルへの脅威に対する防衛構想も検討しなければ

今回の防衛大綱,ようやく世界レベルになろうとしたのかなあ,って思います。
日本の場合,憲法9条の問題がありますので,自衛隊の扱いについて極めてデリケートな部分が多々ありますが,やはり防衛問題は,ある程度現実路線を踏まえなければなりませんので,防衛大綱もそうした点に十分配慮するべきなのです。

ところで,今回の報道を聞いて,おそらく多くの方が「???」となるであろう言葉は,「動的防衛力」だと思いますので,今回はこのあたりを中心に,この防衛大綱で何がどう変わるのか,また何が問題なのかをおかがみ流(ぱくった!!)でざっくり解説します。
なお,憲法問題を絡めると,話の本筋が見えなくなりますので,今回は憲法9条問題は必要最小限に絡める程度にとどめること,ご承知おきください。
それと,誤解のないようにいっておきますが,このたぐいの話をすると,必ず「おまえは戦争支持者か!」と言われるのですが,私は,決して戦争大好き人間でもないですし,むしろ「世界が平和であることを強く望む」というスタンスです。それと,現実的な防衛問題とはまったく別の話なので,今回説明をしているにすぎません。

1 これまでの方針である「基盤的防衛力」とは何か
  まず,「基盤的防衛力」というのは,簡単にいうと,「全国どこにも均一に自衛隊がある」ということです。例えるなら,「郵便局」のようなものです。ポイントは,「日本のどこにも自衛隊がいるから,海外諸国のみなさん,日本を攻撃しても無駄ですよ!」っていうことをアピールすることに主眼を置いている訳です。
  もちろん,自衛隊の大前提は「専守防衛」ですから,絶対に敵国に攻撃をしてはいけません。だからこそ,「鉄壁の守り」をアピールするわけです。サッカーでいえば「FWとMFなしのDFのみ」という10人全員が「田中マルクス闘莉王」だけのチームのようなものっていうことになるのです。
  つまり,これまでの基盤的防衛力とは,冷戦構造をベースにしており,特に旧ソ連からの脅威をベースにしていたことから,実質的には「ソ連さんよ,あんたがどこから攻めてきても日本には自衛隊が郵便局のように配置されているから,やけどするだけだよ。だから,日本を占領するなんて無駄だよ,やめときな。」,っていうことを暗にアピールしていたっていうことになるのです。
  ただし,全国均一といっても,やはりソ連の脅威に主眼を置いていたこと自体には変わりはないので,北方に重点整備をしていたということはもちろんやっていました。ただ,とにかく「隙がなくとにかくいること」っていう点をメインに考えていたわけです。

2 今回防衛大綱を見直した背景は何か
  ところが,時代が変わり,冷戦構造は崩壊し,ソ連もなくなりましたので,その脅威は軽減されました(しかし,誤解のないようにいいますと,ロシアの脅威が0になったというわけではありません。)。一方で,新たな脅威として,北朝鮮や中国が台頭してきたのです。しかも,これらの国の脅威は,「いきなり宣戦布告して日本に上陸する」という20世紀型戦争形態ではありません。ミサイルで威嚇したり,海上で威嚇して,相手をビビらせ,弱いと判断したらそこから一気に攻めていくという「やくざ抗争型」なのです。これが,いわば21世紀型戦争形態の1スタイルと言えます。
  だとすると,これまでのように「郵便局のように均一な自衛隊」っていうスタイルが必ずしも,相手国に対する抑止力になるとは言えません。敵国だって馬鹿じゃありませんから,たとえば東尋坊の崖を戦車で駆け上って日本を占領しようなんて考えるはずはなく,とりあえず手の届きやすい範囲で威嚇や脅威を繰り返すっていうことで降伏を狙ってくるわけなのです。だとすると,「弱いところを増強する」ということが必要となります。
  のみならず,これまでは「専守防衛」という看板がある以上,すべてが受け身のみでした。情報収集も,「日本に入ってくるか否か」をレーダーで捕捉する程度が限界とされていました。
  しかし,21世紀型戦争は「情報戦争」と言われるくらい,情報の有無で勝負はあっという間に決まります。また,なによりも「敵国がどういう動きを普段からやっているのか」っていう情報を平素から収集しておくことで,攻撃してくるであろうポイントを先行して封じておくという戦略も可能となります。情報収集とは,何も攻撃のために必要なのではなく,鉄壁の防衛のためにも必須アイテムとなるのです。
  こうしたことから,今回の大綱で「動的防衛力」が打ち出されたのです。

3 「動的防衛力」っていったい何
  これは,「全国均一って,逆にもろい部分がでてきちゃうから,実情に応じて柔軟付けられるようにして,逆にもろい部分を減らしましょう」っていう発想なのです。そして,柔軟付ける配置や戦略を見極めるためにも,常に脅威といわれる国の動向をきちんと把握し,その情報を踏まえて即座に対応できるようにしていきましょう,っていうことなのです。この柔軟の見極めですが,今回は,中国と北朝鮮という脅威をベースにして考えてみようっていうことにしているのです。
  いわば,動的防衛力とは,「都市銀行」のようなものなのです。顧客が多いエリアにのみ支店を配置することで,より大きな収益を得るとともに,顧客ニーズをきちんと把握することで常に新商品を提供していますので,まさにそうした戦略が動的防衛力と言えるのです。
  これにより,従来の「鉄壁の守り」のアピールはできますが,さらに「あんたのやりたいことくら,このあたしがお見通しだ!」とトリックの仲間由紀恵状態になるわけです。サッカーで例えると,やはり攻撃力のFWはいないものの,情報収集という意味でWボランチと攻撃的MFがつくという「7-3-0」という状態に進歩したといえるでしょう(4バック,フラット3の2枚ディフェンスっていう,まあ本物のサッカーではありえない布陣ですが・・。)。

4 この変化をもう少し別の例で例えてみると
  たとえば,やくざを例にしてみましょう。
  これまでは,やくざがお店にやってきて「みかじめ料払え」と言われた場合に備えて,そのお店が**組のやくざを用心棒にしておくことで「うちの店には**組が付いているぜ」と言えるようにしておくことで無用なトラブルを回避しようという緊張状態にしておきました。
  ところが,みかじめ料払えと言ってきたやくざが没落しつつ,一方で**組は決して他の組事務所に乗り込んで組を潰すことまではやらないというポリシーであることが熟知されてしまったことから,最近では単なるみかじめ料目的ではない別のやくざが「なあ,店長,おまえのところ,法律違反の女の子雇ったみたいだなあ。」みたいなことを言って,より効率的にカツアゲしようと企み始めてきたのです。そうすると,単にバックにやくざがいるっていうだけでは脅しにならないため,店に脅しに来た瞬間をたたくか,または「脅されないように弱点を完璧に治す」ことは「相手の組員の動きを日ごろからリサーチしておいて,相手の行動パターンや弱点を把握しておく」っていうことが必要となってきたわけなのです

5 具体的には何がどう変わるの
  今回,中国と北朝鮮を脅威と想定しています。そして,その脅威はミサイルと領海,領空侵犯です。特にミサイルは国民生活にもっとも影響の大きい脅威であり,これを何としてでも排除しなければならないと考えています。
  そこで,まずは陸海空のバランスを見直します。陸上自衛隊はもっぱら「敵国が上陸してきたら反撃する」部隊なのですが,21世紀型戦争の場合,いきなり敵部隊が上陸するということは想定しがたいため,ざっくりいうと陸上自衛隊は「最終のミサイル撃墜要因」と位置づけます。これにより,人や武力の一部(戦車)を削減します(現実的な上陸ポイントは軍事戦略上限られていますので,ここは削減しても大丈夫なのです。)。
  一方,「制空権を制するものが戦争を制する」という格言は健在なので,まずは航空自衛隊を強化し,領空侵犯を押さえるとともに,上空からのミサイル関係の情報収集を行なうことにします。
  そして,海上自衛隊ですが,一時は「海軍による戦争は第2次大戦により終わった」などと言われた時期がありましたが,海上は実は「移動可能な軍事基地」となりうることや,日本領土前にミサイル撃墜をすることなどもできることなどから,イージス艦等を増強することにします。
  つまり,陸から空海へシフトしていくということで,機動力を持たせたということになるのです。

6 防衛大綱の問題点はどこか
  個人的には,「武器輸出三原則の緩和が明記されなかった」ことと「テロルのような個人的攻撃チームに対する対応」がまだ不十分という点が挙げられます。
  まず,武器輸出三原則についてですが,憲法上や平和主義の観点は意図的に論点からはずし,あくまでも防衛力という観点のみでこの問題を見ると,「多国間開発ができない」っていう問題が出てきます。
  軍事力は,各国とも最先端技術を持ってきます。したがって,敵国からの脅威に対抗するためには,とにかく最先端技術を導入することに尽きます。しかし,武器輸出三原則がある日本では,アメリカ等の兵器を丸ごと輸入(当然,輸出品のグレードは最新の技術ではありません。)するか,自国のみの開発兵器しか使用できません。つまり,「共同研究」ができないのです。そうすると,他の国と比べて軍事技術が立ち遅れてしまい,「ミサイルに竹やりで戦う」という状態になりかねません。
  したがって,防衛力という観点のみからすると,武器輸出三原則については見直す必要があるでしょう。もちろん,あとは憲法上の問題と絡めなければならないという政治的な問題がキモになることは言うまでもありませんが・・。
  もうひとつの問題であるテロル対策ですが,防衛大綱はあくまでも「国対国」を想定したものであり,「国対個人」というものは想定していません。しかし,実は先ほどもちょろっと説明しましたが,近代国家では,「いきなり攻めてくる」ことはなかなか想定し難く,むしろ国家に対する脅威とは「テロ活動」なのです。
  だとすると,テロルに対する対策を講じなければなりません。ところが,防衛大綱という性格上仕方ないのかもしれませんが,テロルに対する対策があまり盛り込まれていません。
  おそらく,警察との役割分担の問題も絡んでくるのでしょうが,陸上自衛隊がメインの仕事になるので,この点も配慮した防衛大綱が作れれば,より国民の安全も守れるような体制になるかもしれません。

以上がざっくりレベルではありますが,今回の防衛大綱のお話となります。
一番理想的なのは,「争いもなく平和に過ごせること」という点なのですが,まだまだそれはおとぎ話かもしれませんので,ある程度現実路線で考えざるを得ないのでしょう。
いずれにせよ,これにより日本の自衛隊が少しでも,日本に対する脅威を排除し,私たちが安心して生活できるよう自衛隊も安心して活動できるような体制を構築してもらいたいものです。 

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