あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ バブル景気とは

2014年01月26日 23時26分28秒 | よく分かる(?)シリーズ
ものすごく久しぶりのよく分かる(?)シリーズです。
アベノミクス効果により,景気が戻ってきていると報じられております。一方で,アベノミクスはバブル再来であり,リスクが多いなどとも言われています。
アベノミクスがどうなのかということを論じるといろいろ話が長くなりますのでひとまず置いておくとして,そもそも「バブル景気ってなんだ」っていうことを分からない世代も増えてきました。また,バブル世代の人たちも「なんで自分たちはバブルだったんだろう?」っていうことを分からぬままに過ごしてきた方も多いのではないでしょうか。
そこで,今回は,バブル景気についてものすごくデフォルメして簡単に説明したいと思います。もちろん,本気でバブルの解説をすると,それだけで本一冊書けるくらいの内容になりますし,バブル景気の要素は多角的であり一面的な説明は難しいため,あくまでもイメージをつかむという程度の話だ,っていうことでご理解いただければと思います。

景気の変動については,帽子屋を例にするものがありますので,ここでは帽子屋を例に説明していきたいと思います。

1 昭和の景気変動(バブル以前の話)
  まず,伝統的な景気変動についての説明です。
(1) 好景気への道
  資本主義になり,お金のあるなしがすべてという社会に変わりつつある時代の話です。
  お金を稼ごうと考えた上島は,1年を通じて寒暖を防ぎ,またおしゃれにもお笑い芸でも使える帽子がこれから売れると考え,「上島帽子店」をオープンしました。
  予想どおり,帽子は飛ぶように売れたため,上島はもっとたくさん売ってもっと儲けようと考え,工場を拡大し,労働者をたくさん雇いました。
  すると,さらに帽子が売れまくったため,労働者への給料をどんどん上げるとともに,さらに工場を拡大し,さらに労働者をたくさん雇いました。また,みんな買ってくれるので,帽子の値段もどんどん上げていきました。
  上島帽子店で働く労働者は,給料が高くなって生活にゆとりができたため,いろいろなものを買うようになりました。結果,帽子店以外のお店もどんどん儲かり,どんどん人を雇って,どんどん給料が上がりました。
  そうすると,みんながお金持ちになるため,世の中のお金が足らなくなってきました。そこで,銀行はお金を大量に発行してさらにお金をばらまきました。
  そうなると,みんながお金持ちです。お金持ちだと,物がどんどん売れるため,物の値段を高くしても買ってくれます。物価はどんどん上昇し,それで儲かるから,さらに給料があがり,さらに物価が上がる,という上昇傾向が続きました。
  これが好景気です。
  つまり,好景気の傾向として,需要拡大,雇用増加,給料増加,物価上昇,貨幣量(マネーサプライ)増加,金利上昇という感じになります。

(2) 不景気への道
  みんなが金持ちになると,上島帽子店以外にも「そうか,帽子って儲かるんだなあ」っていうことで,帽子店がたくさんできてきました。肥後帽子店,寺門帽子店,有吉帽子店,土田帽子店などができてきました。
  ライバル店が増えてくることで,帽子の値段を上げ続けていくと,買ってくれる人が減ってきてしまい,上島帽子店は売り上げが減ってきました。そこで,上島帽子店は帽子の値段を値下げすることで,ライバル店との競争を始めました。そうすると,ライバル店も帽子の値段を下げてきたため,帽子代はみるみる下がっていきました。
  また,みんな帽子をたくさん買ったので,「もう,帽子いらねーや」っていうことになり,そもそも帽子を買おうという人自体減少してしまいました。結果,たくさんあった帽子屋は相次いで倒産し始めました。
  上島帽子店は,倒産を避けるため,工場をどんどん閉鎖し,労働者を解雇し,さらに働いている人の給料を下げていくことで,なんとか会社を維持しようとしていきました。
  労働者は,失業し,または給料が下がったため,生活必需品すら満足に買えなくなりました。そうすると,物が全く売れなくなり,帽子店以外もどんどん倒産していくことになりました。各お店とも,なんとか買ってもらおうということで,物の値段をどんどん下げたため,物価は下がりました。しかし,そうすると,売り上げも減少するため,給料がますます減少し,ますます物を買わなくなってしまいました。
そして,お金持ちがいなくなり,お金が余ってしまったことから,銀行はお金を引き取らざるを得なくなりました。
  これが不景気です。
  傾向として,需要減少,雇用減少,給料減少,物価下降,マネーサプライ減少,金利下降という感じになります。

(3) 景気回復

  しかし,しばらくすると,帽子が古くなってきたため,みんな「そろそろ帽子買うか」と思うようになりました。そこで,徐々に帽子を買う人が増えてきました。
  そうすると,上島帽子店は売り上げが徐々に戻ってきて,以下(1)の流れになってきます。
  これが景気回復です。以後,この波を繰り返すことになります。

以上が伝統的な景気の波になります。大きな傾向として,「需要のあるなしが景気に反映する」ということになります。

2 バブル景気とは
  バブル景気も基本的には,この流れと同じです。でも,大きな違いは,「需要があったというよりも,需要の先行き間だけが走っていた」ということです。つまり,「将来の期待感」だけが大きく膨らんでしまったというところがこれまでの景気の波との違いです。
  具体的にはこんな感じです。
(1) バブル景気はじまり
  上島帽子店は帽子が売れることで景気良くなりました。ここまではこれまで通りです。
  そこで,上島はこう考えました。「うちの帽子は今1つ1000円で売っている。これ,10年後には1万円で売れるんじゃねーか。」と。
  そこで,上島は肥後にこうけしかけました。「俺の帽子は将来1万円で売れる。だから,今3千円で買わないか。」と。肥後は,10年後に2万円になると踏んでいたため,その話に乗り,帽子を3千円で買いました。そして,すぐに同じく寺門に「帽子6千円で買わないか」とけしかけ,寺門もその話に乗りました。そうこうしているうちに,1000円の帽子は,あっという間に3万円で売り買いされるようになりました。
  この帽子は,使うためではなく,「将来高くなるだろう」という儲けの道具として使われたにすぎません。実際のところ,帽子の需要はそんなに増えておらず,その時の時価としては,2千円くらいのものでした。
  とはいえ,帽子が高値で売れるということから,有吉帽子店や土田帽子店も同様のことを始めたため,結果的に帽子代は高騰し,労働者の給料はもちろん高くなりました。
  しかし,あまりに帽子が高すぎたため,労働者の給料ではとても帽子が買えるほどではありませんでした。そこで,お金を持っている労働者は高すぎる帽子の代わりに,ネクタイやワイシャツ,スーツなどを買うようになりました。これらも将来高くなるかもという思惑があったことから,通常の数倍の価格で取引され,中には実際に着る目的ではなく転売目的で売り買いする労働者も増えてきました。
  こうなると,需要なんてどうでもよく,売り買いすることだけが目的になってしまいました。当然ながら,世の中のお金がないため,銀行はじゃんじゃん貨幣を発行し,じゃんじゃんばらまきました。こんな状況なので,物価は上がる一方。もはや世の中,「お金がお金を生む」と信じて疑わない状況となりました。中には,帽子店での労働を辞め,ひたすら帽子の売り買いに没頭する人なども現れたくらいです。のみならず,手元にお金がなくても,銀行から借りればあっという間に借りたお金も返せるということで,借金しながらどんどん帽子を売り買いするという人たちが横行し始めました。銀行も,帽子を担保にすれば,貸した金は回収できるだろうとたかをくくっていましたので,じゃんじゃん貸しました。
  これがバブルです。要素は需要以上に物価が上がったということで,お金がお金を生む構造といえます

(2) バブル崩壊
  しかし,世の中「これじゃちょっとやばいね」っていう動きになりました。一番の要素は「帽子って,本来かぶるためだよね。なのに,帽子をかぶりたい人が買えないのはおかしいよ。」っていうことで,帽子の値段上昇を抑制しようということになりました。
  そこで,政府は銀行に対して「お金ばらまくの少し控えてね」という規制(総量規制)を出しました。
  すると,まず困った人は,「借金して帽子を買っている人」でした。銀行がお金貸さなくなったからです。借金してどんどん帽子を買って利ざやを稼いでいたのに,それができなくなってしまったのです。そうすると,自分はこれ以上稼げないということで,借金の返済を始めざるを得なくなりました。つまり,帽子を買う人が減ったのです。
  次に困ったのは,利ざや稼ぎの人です。4万円で買った帽子を5万円で売ろうと思っていたところ,買う人がいなくなり,5万円どころか,4万円でも買ってくれなくなったのです。
  そこで,仕方がないので,4万円の帽子を3万円で売らざるを得なくなりました。1万円損したのです。この損を穴埋めするために,他の帽子を売るなどしまいたが,とにかく帽子を買ってくれる人がどんどん減り始めたので,帽子の値段もどんどん下がっていきました。結果,損がどんどん大きくなってしまい,破産してしまいました。
  破産者が増え始めたことで,帽子の値段が一気に暴落しました。破産者が帽子を市場に一気にばらまいたからです。しかも買う人がいない帽子。そうなると,みるみる帽子の値段が減少し,ついには,原価の1000円にまで戻ってしまいました。
  そうすると,たまらないのは,帽子を大量に持っていた人です。4万円で100個買った人,つまり400万円払った人は,今や1000円の帽子が100個,つまり10万円になってしまったわけですから,390万円損したのです。
  こうして,どんどん破産してしまいました。これがバブル崩壊です。
  町中失業者があふれかえり,帽子どころからだれも物を買えなくなりました。物価はどんどん下がり,物が売れないため,帽子店以外もどんどん倒産し,ますます失業者があふれかえりました。
  銀行も困っています。担保として取っておいた帽子が1000円にしかならないため,貸したお金の回収が不可能となりました。結果,銀行も経営破たんし,倒産に追い込まれました。
  こうなると,市中にお金をばらまいても,誰も手にすることができません。結果,お金は市中から消えてなくなりました。
  では,誰が儲けたのでしょうか。実は,だれも儲かっていないのです。上島も最初に儲けたお金でさらに帽子を売り続けたため,儲かったように見えますが,それが一気に下落したため,結局は投資した工場や労働者給料に全部消えてしまったのです。
  このように,結局「金が金を生む」という構造だったことから,不景気になった瞬間,そのお金がすべて泡のように消えてしまったため,「バブル」と後に呼ばれるようになったのです

3 まとめ
  バブル景気とは,これまでのように「物の需要が増えたから景気が良くなる」というものではなく,「きっと需要が増えるだろう」という「思惑自体が取引材料」となり,「その思惑への需要が増えた」だけにすぎないというもので,経済的裏付けが乏しいものだったといえます。
  そして,経済的裏付けが乏しいままに思惑だけが急成長したため,それが破たんした時は,実経済に即したところにまで縮んでしまったことで,予想以上の損失が発生したといえます。これがバブル崩壊なのです。

以上が,バブル景気の超ざっくり版でした。冒頭にも書きました通り,実際のバブルはこんな単純ではなく,もっといろんな要素が複雑に絡み合っており,誰が犯人だったのかは学者の間でも未だに特定されていないくらいです。とはいえ,一つの考え方として参考になればと思いますし,またこれを踏まえて,アベノミクスが本当にバブルなのかどうか,っていう点を考える一つの材料としてもらえるとよろしいかと思います。

資本主義とはおそろしいものです。

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