あれは,あれで良いのかなPART2

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精神障害は責任無能力に非ず

2008年04月29日 16時13分46秒 | 裁判・犯罪
夫を殺害してバラバラにして遺棄したとして殺人等の罪に問われていた三橋被告に対する判決が東京地裁であり,三橋被告に懲役15年を言い渡しました。東京地裁は,三橋被告に責任能力があると認定し,法律上の減刑をしませんでした。一方で,一定の精神障害があったこと,その原因の一部に夫の暴力があったことは認定し,その点を量刑に考慮したとのことです。

「別人格は現れず」三橋歌織被告に懲役15年(朝日新聞) - goo ニュース

教科書どおりの判決

この裁判を通じて,今まで一般に誤解があった次の2点が理解できたのではないでしょうか。
1 精神障害=責任能力ではなく,責任能力の有無は自分の意思で犯罪をしたのかどうかという点が重要であること
2 医師の鑑定=責任能力の絶対的資料ではなく,責任能力の有無はあくまでも裁判官の判断であり,医師の鑑定はその判断資料の一つにすぎないこと

ちなみに,責任能力とは,ものすごく簡単に言うと「これはけしからんこと」という認識ができる能力のことをいいます。

一部コメンテーターはこの点をごっちゃにして,「精神障害を認定しながら責任能力があるとするのは,論理に無理がある」とか,「2人の医師の見解を素人がないがしろにした」などと述べている方もいましたが,残念ながらその方が勉強不足です。
責任能力はあくまでも「裁判官判断事項」なのです。いわば,今回の判決は,訴訟法の教科書どおり,裁判官が自分の考えをしっかり出したものといえるでしょう。

さて,今回の判決で,なぜ裁判所は被告人の責任能力を認めたでしょうか。それは,「犯行時の記憶」と「犯行後の対応」から「通常の人間と同じことをしている」と認定したからです。
すなわち,被告人は警察や検察官での取調や公判廷において,犯行時の状況や心情をきちんと説明していました。「謎の声が聞こえた」など,医師の鑑定で出てきた発言については,当初の取調段階では出ていなかったことに着目し,「もし責任能力がない状態であれば,事件時の記憶がないか,取調段階からもっと意味不明な発言をしたはず」と考えたものと思われます。
また,犯行後の対応については,バラバラにした理由が犯行の隠蔽工作であったことのほか,その後メールの偽装工作を行うなど,「普通の人間ならやりそうな隠蔽行為」をしていた点から,「自分はけしからんことをした」という認識があったと判断したものと思われます。
一方で,裁判所は精神障害を認定しましたが,この点はやはり医師の鑑定をしっかりと読み込んで認識したものと思われます。そして,この鑑定をないがしろにすることなく,量刑の資料,すなわち情状としての減刑事由に採用したことによります。つまり,この鑑定がなければ,もう少し重い刑(例えば,求刑どおりの懲役20年)になった可能性もあります。そう考えると,弁護側としてはやはり鑑定を行った意味はあったと言えるでしょう。

さて,この裁判,控訴するかどうかは分かりませんが,仮に控訴になった場合,やはり「責任能力の有無」が大きな争点となります。はたして,高裁ではどのように判断されるでしょうか。もし控訴された場合は注目です。

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