あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ,ネット選挙について

2013年06月17日 02時20分04秒 | よく分かる(?)シリーズ
すごーく久々の記事になります。
いよいよ次の参院選からネット選挙が解禁されます。もちろん,ネット選挙といっても,ネットで投票できるというものではなく,ネットを用いた選挙運動ができるというものです。今までできなかったのが不思議なくらいです。
とはいうものの,候補者はもちろん,有権者としても,具体的に何がどう改正されたのか,また特に有権者側は何ができて何がダメなのかなどという点については,情報が十分伝わっていない部分も多々あります。
そこで,今回は,総務省見解をベースにしながら,ネット選挙の基本及びやっていいこと悪いことなどを簡単にまとめたいと思います。
もちろん,冒頭にも書きましたとおり,適用されるのは参院選からですから,現在公示中の都議会議員選挙や各地方自治体における選挙ではまだネットを用いることはできませんので,十分ご注意ください。

1 そもそもネット選挙とは
  これまでは,公職選挙法で定められた「図画」しか配布できないとされていたことから,ネット上の各種書き込み(ホームページ,ブログ,FB等)はすべて法に規定のない「図画」として扱われてしまったため,選挙期間中にネットの表示や更新等は一切許されておりませんでした。
  しかし,これは時代錯誤も甚だしいということから,インターネットを利用した選挙運動を許容することにしました。
  具体的には,ホームページによる表示,SNSの活用(双方向通信を含む),電子メールの利用(ただしこれは候補者に限る)を原則選挙期間中も自由にできるとしたものです。

2 具体的にやれることは(候補者編)
  この辺りは,細かいことを書くと分かりにくくなるので,簡単に整理する程度にとどめます。
  候補者および政党は,ざっくり次のことができます。
(1) HPにおける政策の説明等を表示する
(2) ツイッターやフェイスブック等のSNSに政策等を表示する(ツイッターのリツイートやフェイスブックのイイね!やシェアもOK)。
(3) 電子メールにより投票依頼をする
(4) 有権者との双方向のやり取りや議論を行うことができる


3 具体的にやれること(有権者編)
  2で記載したもののうち,(3)の電子メールによる投票依頼以外です。
  したがって,たとえば有権者が,ツイッターで「私は,ありが党の大江千里候補を応援します。みんな,投票してね。」と書き込むことはOKですが,電子メールで友人に「今度の選挙,ありが党の水前寺清子候補に投票してね。」などということはできません。また,メールを転送することもできませんので,前述の例では,仮にありが党本部が有権者に送ってきたメールを,さわやかに転送することはできません。
  なぜ禁止されたかというと,いわゆるなりすましメールを抑制するためとのことです(個人的にはここを禁止している点は非常に疑問を感じているところです。)
  ただし,ツイッターのDMやフェイスブックのメッセージなど,SNSサイトに搭載されているメールっぽい機能を用いて投票依頼を行うことは,一応グレーに近いですがOKとされています。これは,電子メールではなく,SNSの機能を用いているからとのことです(しかし,この点も,個人的には電子メールとの違いを十分に説明していないため,納得しがたい部分ではあります。)。

4 ネット選挙で禁止されていること
  基本的には,「通常の選挙運動で禁止していることはすべてだめ」ということになります。ネット特有というわけではありません。
  とはいえ,この部分が非常に分かりにくかったり誤解を招く部分なので,簡単にまとめてみます。
(1) 未成年者がネットで特定政党や候補者を応援することはできない(つまり,未成年者はネット選挙不可)
  これは,現行法で,未成年者の選挙運動が禁止されているからです。
  したがって,未成年者がツイッターで「今度の選挙,絶対おめで党の染太郎候補に当選してもらいたいから,有権者の人は投票よろしく!」などと書くことはできません。
  ただし,未成年者の有権者が,候補者のSNSやHP等に質問をすること自体は禁止されておりません。これは選挙運動ではないからです。あとは,票にならない未成年者に対し,候補者がどのような態度をとるかは,その候補者の考え方如何でしょう。
(2) 公務員のネット選挙も制限される
  これも,現行法で公務員の選挙運動が禁止または制限されているからです。
(3) 落選運動(ネガティブキャンペーン)は,「別の候補者の当選活動の一貫として行う」場合ならOKだが,単なる落選目的だけであれば許されない。
  これも,現行法で規定されているからです。
  したがって,例えば「なっ党の水戸泉候補は,言うほど粘りがないから政治家にむいていない。」だけを記載するのは禁止だが,「だけど,怒り新党のマツコ候補は,粘り強いから,政治家に向いていると思う。」みたいに加えれば,これはマツコ候補の当選活動となるためOKとなります。
(4) なりすましはもちろん禁止
  これはネットならではの規定です。候補者になりすましてネット上の書き込みを行った場合,たとえポジティブな内容の記載であったとしても,刑事罰の対象となります。
(5) ネットの記事を紙で印刷して配布してはならない
  今回の法改正では「ネット上の表記を法定の図画とする」こととしたため,それを紙にして印刷して配ることは,逆に法律上規定された図画とみなされなくなります。
  したがって,候補者がネット上の表記を印刷して配布するのはもちろんですが,有権者も印刷してほかの人に配ることは禁止されております。
  ネット上のことはすべてネット上で解決しましょう。
(6) いわゆる丸投げ掲載は買収行為とみなされる
  これは有権者には関係ありませんが,候補者がネットを使うことで業者を使用することもあるでしょうが,発信内容の起案も含めてすべてを丸投げにして発注した場合,この行為は「買収」とみなされるため,許されません。
  あくまでも,候補者は「自分の頭で考える」必要があります。業者に依頼できるのは,「みやすい表示のアドバイスや提案」や「技術的な掲載行為」等がメインになるでしょう。


5 ネット選挙はどう影響するか
  ネット選挙の影響は未知数ですが,個人的な意見としては,ざっくり次のような使い方が期待されます。
(1) ひたすら情報発信
  主にHP掲載や,後援会中心にスパムっぽくメールを垂れ流すやり方です。まあ,ネット初心者がやりそうな手法ですが,これだと正直ビラまきとそんなに変わらないため,ネットを使う意味合いはかなり低いでしょう。
(2) ひたすら情報収集

  主にSNSを用いて,有権者の意見を聞くというもの。ネット中級者がやる手法です。
  ただし,これもやり方如何では,「単なる売名行為」だけになり,肝心な政策を売り込まずイメージだけで票稼ぎをするということにもなりかねません。たとえば,「今日のお昼ご飯はこれだ」とか「差し入れにおいしいおまんじゅうもらった」みたいな,およそ選挙とは無関係だが一般の人の興味を引くようなことばかり書いて,そこでコメントやイイねをもらうなどを繰り返すうちに,その候補者に親近感を抱かせる,っていう戦術です。政策の合間にこれがあるならいいのですが,こっちしかなければ,本来的意味合いを失います。
(3) 双方向議論
  これはネット上級者の戦術ですし,ネット選挙が目指すべき姿です。
  候補者が政策を提案し,それに対して有権者が意見や質問をぶつけ,それに対して有権者が直接回答や説明をするというものです
  いわば,「戸別訪問の禁止」をネットでフォローしてきめ細かな政策提言を行い,理解を求めていくというものです。まさに,どぶ板選挙の究極といえるでしょう。
  有権者も,これまでは敷居の高かった政治家や候補者に直接疑問を投げかけることで,疑問の解消や候補者の人となりが理解でき,政治が身近になることで投票率の向上にもつながるということが期待できます。


6 ネット選挙の問題点
  以上がネット選挙の概要及びあるべき姿ですが,今後さらに検討するべき点を少しまとめてみました。ただし,あくまでも個人の感想です。
(1) 電子メールの活用を広げる
  有権者も電子メールで投票依頼を可能とする必要があります。なりすまし対策としては,有権者が電子メールを使うのは,不特定多数ではなく特定の人間に限るなど,「知ってる者どうし」みたいにすればある程度は回避できるはずです。
  また,電話や街頭で会った場合に依頼するのもOKですから,メールを使うのは問題ないはずです。
(2) 未成年者のネット選挙の活動緩和
  未成年者が選挙運動を禁止する趣旨は,学業優先と有権者ではない人を選挙に巻き込まないという保護思想によります。
  しかし,ネット上では,未成年者もかなりユーザはおり,かつ大人顔負けな議論をする人もかなりいます。
  そこで,通常の選挙運動の禁止は当然維持するにしても,少なくともネット選挙に関しては,一定のガイドラインを設けたうえで,多少は緩和する必要があるかもしれません。


以上,つかみ程度ではありますが,ネット選挙についてまとめてみました。
是非,次回の参院選から,ネット選挙を最大限活用し,投票に行きましょう

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