酒気帯び運転の上で事故を起こし,その後救助活動をしないで逃走したことなどから3名の子供が亡くなった事故について,福岡地裁は危険運転致死罪の成立を認めず,業務上過失致死罪及び道路交通法違反の併合罪として懲役7年6ヶ月の判決を言い渡しました。
「過失」の判断、やりきれなさ残す 福岡3児死亡判決(朝日新聞) - goo ニュース
裁判官の苦悩が見える
この判決については,多くの方が批判的に論じています。もちろん,感情論としては十分に分かります。
しかし,裁判はあくまでも法に基づいて行われるものです。したがって,法が決めたこと以上の判決をすることは許されませんし,裁判所が勝手に法律を作ってもいけません。
また,裁判は,法廷に出された証拠だけがすべてです。ワイドショーや評論家のごたくは一切判決の資料にはなりません。
という前提の元で,今回の判決を検証すると,裁判所は「危険運転致死罪の構成要件を充たす証拠がなかった」と判断したといえます。すなわち,「飲酒」自体はもちろん認定できたものの,もう一つの要件である「正常な運転ができない状態」についての認定が難しい」と考えたのです。もう少し具体的に言うと,「正常な運転ができない状態」の認定を「できなかっただろう」では足らず,「確かにできなかった」という確実な証拠がなければこの要件を具備しないと判断したのです。
すなわち「疑わしきは被告人の利益」という刑事裁判の大原則に則ったのです。
しかしながら,裁判所はこの被告人に対する憤りはかなり強く感じていたものと思われます。それは,業務上過失致死罪と道路交通法違反の併合罪の最高刑である7年6月を言い渡したからです。
通常の量刑相場の場合,言い渡せる罪の上限を言うというのは相当に悪質と判断される事例のみです。そして,交通事犯の場合,上限いっぱいとなるケースは結構少ないものです。そんな中で量刑上限を言い渡したというのは,本件事例がものすごい悪質と判断したことに他なりません。
以上を踏まえると,この判決に含まれるメッセージは「危険運転致死罪は適用したくてもハードルが高すぎてこの事例では認定できない。ここは被告人の利益を考える憲法上仕方がない。しかし,なんとしてでも厳罰を科したい。ならば,できる範囲内で最高刑にしよう。」というものではないでしょうか。
もちろん,この事例で「危険運転致死罪は認定できる」と判断する裁判官もいるかも知れません。この辺は,裁判官が法廷でどのような心証が作られるかによります。
そう考えると,仮に本件が控訴された場合,高裁で逆転判決になる可能性は十分あり得ます。高裁では,事実認定は基本的に行わず,もっぱら法解釈が中心となります。今回認定された事実を高裁の裁判官がどう解釈するのか,これは蓋を開けてみなければ分かりません。
ちなみに,個人的見解としては,以前も書きましたとおり,危険運転致死傷罪の構成要件をもう少し明確化かつ簡略化するべきであろうと思います。具体的には,飲酒運転による事故はすべて危険運転致死傷罪にするという位にしてもよいのかなあ,って思います。
いずれにしても,立法や行政サイドがこの判決をどう評価するか,そこが注目点かもしれません。すべては飲酒運転による事故0の為です。
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TB先一覧
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http://backy.blog.ocn.ne.jp/kazu/2008/01/post_dcd7.html
http://blog.goo.ne.jp/sunafukin-0101/e/b691995e0cc88cec5481effbb0273cd2
http://blog.so-net.ne.jp/joeden/2008-01-08
http://imprezza-inada-1973.seesaa.net/article/77230666.html
http://blog.livedoor.jp/yononakakoubou/archives/51284326.html
http://tetorayade.exblog.jp/7917762/
http://blog.goo.ne.jp/d_d-/e/6487235320b8be420b4f86ae5f5450f4
http://blog.goo.ne.jp/hiroharikun/e/f97a34e34d8ef1ce5abae546e74c447d
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-790.html
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この判決については,多くの方が批判的に論じています。もちろん,感情論としては十分に分かります。
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また,裁判は,法廷に出された証拠だけがすべてです。ワイドショーや評論家のごたくは一切判決の資料にはなりません。
という前提の元で,今回の判決を検証すると,裁判所は「危険運転致死罪の構成要件を充たす証拠がなかった」と判断したといえます。すなわち,「飲酒」自体はもちろん認定できたものの,もう一つの要件である「正常な運転ができない状態」についての認定が難しい」と考えたのです。もう少し具体的に言うと,「正常な運転ができない状態」の認定を「できなかっただろう」では足らず,「確かにできなかった」という確実な証拠がなければこの要件を具備しないと判断したのです。
すなわち「疑わしきは被告人の利益」という刑事裁判の大原則に則ったのです。
しかしながら,裁判所はこの被告人に対する憤りはかなり強く感じていたものと思われます。それは,業務上過失致死罪と道路交通法違反の併合罪の最高刑である7年6月を言い渡したからです。
通常の量刑相場の場合,言い渡せる罪の上限を言うというのは相当に悪質と判断される事例のみです。そして,交通事犯の場合,上限いっぱいとなるケースは結構少ないものです。そんな中で量刑上限を言い渡したというのは,本件事例がものすごい悪質と判断したことに他なりません。
以上を踏まえると,この判決に含まれるメッセージは「危険運転致死罪は適用したくてもハードルが高すぎてこの事例では認定できない。ここは被告人の利益を考える憲法上仕方がない。しかし,なんとしてでも厳罰を科したい。ならば,できる範囲内で最高刑にしよう。」というものではないでしょうか。
もちろん,この事例で「危険運転致死罪は認定できる」と判断する裁判官もいるかも知れません。この辺は,裁判官が法廷でどのような心証が作られるかによります。
そう考えると,仮に本件が控訴された場合,高裁で逆転判決になる可能性は十分あり得ます。高裁では,事実認定は基本的に行わず,もっぱら法解釈が中心となります。今回認定された事実を高裁の裁判官がどう解釈するのか,これは蓋を開けてみなければ分かりません。
ちなみに,個人的見解としては,以前も書きましたとおり,危険運転致死傷罪の構成要件をもう少し明確化かつ簡略化するべきであろうと思います。具体的には,飲酒運転による事故はすべて危険運転致死傷罪にするという位にしてもよいのかなあ,って思います。
いずれにしても,立法や行政サイドがこの判決をどう評価するか,そこが注目点かもしれません。すべては飲酒運転による事故0の為です。
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すればよいのでは?と思うのは素人でしょうか.
法律では立証がないと罪を課せられないものですね。
例の「正常な運転ができない状態」ですが、
これが交通事故ではなく、殺人事件だとすれば、「正常な運転ができる」=「殺意があった」という意味に取れると思います。50km/h制限の道路を100km/hのスピードで、しかも12秒間もわき見していたというなら、車を利用した悪質な犯罪ですよ。そして事故を起こした後の行動についても悪意極まりない。むしろ泥酔していて、記憶がないほうが、ある意味、悪気がないと取れるかと思いますが、いかがでしょうか?
今の法律では飲酒運転はこんなものか、逃げたら勝ちや、みたいな感じでしかとらわれないので、このままではいけないですね?
おっしゃるとおり飲酒運転=危険運転・・・にすべきですね。また裁判員制度のこともあるので、国民にも納得のいく、分かりやすい法律にしてもらわないと困りますね。
私は常々、日本にも終身刑を取り入れるべきだと考えています。物事が風化されやすい現代、1度死んだらその後は・・・では刑の意味がありません。
「生かさず殺さず」のこの刑に処せられたくなければ、ドライバーに限らず、少しはしゃんとするのではないでしょうか。
以上、個人的な意見を述べさせて頂きました。
法律用語は,法律を勉強していない一般の方にはかなり分かり難いと思います。過失という言葉も,普通は「ついうっかり」みたいにとらえられますが,法律上は「予見可能性がありながら結果回避義務を怠った」みたいに表現しますから,何のことやら状態になりますね。
だからこそ,マスコミとしては,このような難解な言葉をうまくかみ砕いて広く伝えるべきなのかなあ,と思います。そうすることで,今回の判決についても,「単なる感情論的批判」から「論理的批判」が可能になり,それが将来的には法令改正等につながりうると思います。
場当たり的なコメントは,単なるバラエティ番組と同じですよね。
この2つの量刑を同じにすると,法律を作った意味がなくなってしまいます。
やはり,事案に応じて使い分けられるようにした方が望ましいと思います。過失にも軽重ありますからねえ。
むしろ,法律の適用要件(構成要件)が妥当か否か考えるべきなのかなあ,って個人的には思います。
正直,現状のシステムでは,飲酒運転の事故は「逃げたもの勝ち」の部分は否めないと思います。飲酒については覚せい剤と違って,体内残留期間が短いため,半日も逃げれば飲酒運転の証拠が残らないからです。
もちろん,検察もバカではなくて,そういう場合は「飲酒をしていた事実」を積み上げて飲酒運転を立証しますが,これも実際はかなり大変です。居酒屋にいて酒を注文した事実までは立証はできますが,これを飲んでどの程度酔っていたのかを立証することは困難だからです。
個人的には,逃げ得を許さないため,「酩酊の程度を問わず飲酒運転をしていたことが立証できて,しかもそれによって事故を起こしながら逃げてしまった場合は,飲酒運転による通常の事故よりも重い量刑を設ける」ということでもよいのかな,と思います。もちろん,これはこれで問題もありますが,とにかく「逃げたら勝ち」ということだけは絶対に防ぐ必要があるでしょうね。
過失致死にはそれこそ軽重さまざまですから,やはりいろいろな選択肢があってよいと思います。
ただ,一方で終身刑の導入は検討の余地は十分あろうと思います。
この点は,死刑廃止論と常に抱き合わせで議論になりますが,「税金で犯罪者の面倒を一生見るのはおかしい」とか「終身刑は生きる屍となり死刑以上に残虐だ」などの反対意見も多く,なかなか議論が先に進まないというのが現状のようです。
諸外国ではいろいろな形で取り入れられておりますので,その点をいろいろ研究して日本で導入できるものを取り入れると良いでしょうね。
本件では被害者が幼い子供3名で、加害者が証拠隠滅をはかった悪質さがあるとは思いますが、残念ながら要件にはひっかからなかった、と思います。どうも、その辺が判決に反映されているのだけど、世論は納得いかない結果となったと思います。厳罰化が近年叫ばれていますが、厳罰化で全てが解決するかといえば、難しいとも思うし、かといって、被害者の感情をどう裁判に反映させるのか。。。とも感じてしまいました。。。
330メートルの間、前を見ずに運転することができる人はいまい。これを危険運転でないとする裁判官の常識が疑われる。速度というものの危険性が分かっていない。