ずいぶん前に「東久留米市地域防災計画」を読んだ旨の記事を書きましたが,その中で気になった点についていくつか指摘したいと思います。
なお,東久留米市の名誉のために,最初にお断りしますと,この計画,全体的には問題はないと思いますので,有事の時にはこの計画通り動けば,私たちは安心して行動ができる代物であると思います。
また,計画書を熟読したわけではないため,私の指摘点は実は他で記載済みであるとか別の要綱等が作成済みであるという可能性もあります(つまり織り込み済みである可能性がある。)。
さらに,今回指摘したい点は,東久留米市だけの問題ではなく,おそらく多くの市町村で作成された地域防災計画共通の問題点ではないかと思う点を中心に記載したつもりです。したがって,ここでの指摘は,東久留米市だけではなく,全市町村を対象にしているという前提でお読みいただければと思います。
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第1 災害本部の活動について
1 設置基準が不明確である。
災害本部は「大きな災害があり,市長が認めるとき」に設置するとあります。
これは,イメージ的には分かりますが,大きな災害の定義が実は曖昧です。
したがって,大きな災害について,具体的な基準を設けるべきです。
例えば,「震度5強以上の地震が発生した場合」等と明記するべきです。
実際に災害がなければ,本部は解散する条項が盛り込まれているため,実際に被害がなければ,すぐ本部を解散すればよいだけのことです。もちろん,逆に基準以下の災害でも大きな被害が発生した場合は,これまでどおりその時点で本部を設置すればよいわけです。
これは,住民がいつ避難場所に行くべきか,避難場所に行ったけど,その後誰も来ない等という問題を回避するためにも重要ではないかと思われます。
2 市長に権限が集中しすぎる
本部設置後,基本権限はすべて市長にあります。これは,当然なのですが,市長権限の代行は,「市長に事故ある時」に限られています。
つまり,市長に事故がない限り,市長がすべての最終判断を有することになります。
ところが,災害の場合,即座に市長と連絡が取れるとは限りません。また,偉い順に市役所に人が集まるとも限りません。一方で,即座に災害に対する対応を取らなければならない場合もあり得ます。その時に,「まだ市長と連絡が取れないので,判断できません。」では通用しません。
そこで,市長に事故ある時という部分をもっと緩やかにして,本部にいる一番偉い人がその都度判断ができるようにするべきです。もちろん,この偉い順は,何らかの形で決めておく必要があります(実際は,例規上で序列が決まっているので,それに従えばよいと思われます。)。
3 現場責任者の権限を拡大する
災害現場では,予想以上の被害や混乱が想定されます。時には,現場での判断が最善策であることも想定されます。
そこで,現場責任者の権限を拡大します。具体的には,避難用品の他の避難所への分配数量や病人のランク付けなどです。
もちろん,最高責任者はあくまでも市長なので,事後報告を行うことはいうまでもありませんし,場合によってはその時点で市長が責任者に対して是正命令などを出せばよいわけです。
ここで注意したいのは,すべての市長は防災対策に対して有能であるとは限らない,ということです。机上の空論(場合によっては無能もありうる)よりも,現場責任者の方が,防災対策について詳しいことは十分あり得ます。
4 死傷者情報の把握が不十分である
尼崎での脱線事故の際も問題になりましたが,死傷者がどこにいるのかを一元的に管理している人がいませんでした。したがって,被害者の家族は,病院を転々として初めて確認できるということになりました。
災害時は,交通網の寸断などにより,病院を転々とすること自体が困難になると思われます。また,個人情報保護法により,入院患者の氏名をすぐに明らかにしない病院なども出てくる可能性があります。
そこで,これらの情報を本部が一元的に管理し,本部に来れば死傷者の氏名や入院先が分かるようにします。もちろん,個人情報保護との調和は考える必要があります。
第2 避難場所のあり方について
1 広さと収容人口がアンバランス
これは,物理的にやむを得ない点があります。駅前には空き地が少なく,郊外には空き地が多いため,当然避難場所も郊外の方が大きくなります。
しかし,駅前もかなりの避難人口がいるわけですから,可能な限り彼らを収容する方法を検討しなければいけません。
2 避難用品がアンバランス
避難用の食料などが豊富にある避難場所と少ない(全くない)避難場所があります。一応,多くある避難場所から他の避難場所にこれらを配布するという想定になっていますが,実際,それが十分機能するかは疑問があります。
やはり,各避難場所にはそれなりの用品を備えるべきでしょう(もちろん,住民一人一人が平素から防災用品を備えておくべきであることはいうまでもありませんが。)。
3 避難場所担当者が職種別になっている
実際,避難場所に行く職員が,防災担当職員となっています。しかし,仕事中の災害であればまだしも,休日や夜間の災害の場合,そもそもその職員が避難場所に行ける保証がありません。
避難場所の担当者は,基本的にはその地域又は近隣に住む職員にするべきでしょう。
なお,他の市町村に住む職員については,大規模災害時には,一時的にその町の職員と共にそちらの市町村で災害対策の活動をするという協定を結んでおくと,なお良いかと思います。例えば,東久留米市の職員が西東京市に住んでいる場合,災害時には,西東京市で災害対策の活動を行うということにします。もちろん,逆もあります。
第3 想定外災害の対応について
1 道路が使えない場合の輸送ルートについて
地震では,道路の陥没などにより,交通網が寸断されることが想定されます。
そこで,各避難場所への非常食などの運搬ルートについては,複数想定しておく必要があります。
また,前述の避難所間での融通を円滑にするため,自動車以外での大量運搬方法も検討しておく必要があります。
例えば,リヤカーなどは,一見馬鹿にしてそうですが,道路の寸断でもある程度対応ができ,それなりに輸送力があるため,有用ではないでしょうか。
2 避難訓練に「想定外」の内容を加える
避難訓練は,地域防災計画通り行動できるかを確認する意味で,非常に重要なものといえます。
しかし,やはり何が起こるか分かりません。
そこで,どっきり企画というと不謹慎ですが,「想定外災害」を訓練時に加え,適切に行動できるかを確認することが大事でしょう。
そのためには,この想定外訓練の内容については,ごく一部の担当者以外は,例え市長であっても知らないで行うべきでしょう。
以上になります。とにかく必要なことは,迅速かつ適格に職員が行動できるか,住民一人一人が災害時の行動内容を把握して,混乱なく行動できるかが大切です。そう言う意味では,これは市役所任せではなく,私たちも熟知しなければならないでしょう。
皆様も,災害時の行動について,今一度確認,検討をされてみたらいかがでしょうか。
なお,東久留米市の名誉のために,最初にお断りしますと,この計画,全体的には問題はないと思いますので,有事の時にはこの計画通り動けば,私たちは安心して行動ができる代物であると思います。
また,計画書を熟読したわけではないため,私の指摘点は実は他で記載済みであるとか別の要綱等が作成済みであるという可能性もあります(つまり織り込み済みである可能性がある。)。
さらに,今回指摘したい点は,東久留米市だけの問題ではなく,おそらく多くの市町村で作成された地域防災計画共通の問題点ではないかと思う点を中心に記載したつもりです。したがって,ここでの指摘は,東久留米市だけではなく,全市町村を対象にしているという前提でお読みいただければと思います。
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第1 災害本部の活動について
1 設置基準が不明確である。
災害本部は「大きな災害があり,市長が認めるとき」に設置するとあります。
これは,イメージ的には分かりますが,大きな災害の定義が実は曖昧です。
したがって,大きな災害について,具体的な基準を設けるべきです。
例えば,「震度5強以上の地震が発生した場合」等と明記するべきです。
実際に災害がなければ,本部は解散する条項が盛り込まれているため,実際に被害がなければ,すぐ本部を解散すればよいだけのことです。もちろん,逆に基準以下の災害でも大きな被害が発生した場合は,これまでどおりその時点で本部を設置すればよいわけです。
これは,住民がいつ避難場所に行くべきか,避難場所に行ったけど,その後誰も来ない等という問題を回避するためにも重要ではないかと思われます。
2 市長に権限が集中しすぎる
本部設置後,基本権限はすべて市長にあります。これは,当然なのですが,市長権限の代行は,「市長に事故ある時」に限られています。
つまり,市長に事故がない限り,市長がすべての最終判断を有することになります。
ところが,災害の場合,即座に市長と連絡が取れるとは限りません。また,偉い順に市役所に人が集まるとも限りません。一方で,即座に災害に対する対応を取らなければならない場合もあり得ます。その時に,「まだ市長と連絡が取れないので,判断できません。」では通用しません。
そこで,市長に事故ある時という部分をもっと緩やかにして,本部にいる一番偉い人がその都度判断ができるようにするべきです。もちろん,この偉い順は,何らかの形で決めておく必要があります(実際は,例規上で序列が決まっているので,それに従えばよいと思われます。)。
3 現場責任者の権限を拡大する
災害現場では,予想以上の被害や混乱が想定されます。時には,現場での判断が最善策であることも想定されます。
そこで,現場責任者の権限を拡大します。具体的には,避難用品の他の避難所への分配数量や病人のランク付けなどです。
もちろん,最高責任者はあくまでも市長なので,事後報告を行うことはいうまでもありませんし,場合によってはその時点で市長が責任者に対して是正命令などを出せばよいわけです。
ここで注意したいのは,すべての市長は防災対策に対して有能であるとは限らない,ということです。机上の空論(場合によっては無能もありうる)よりも,現場責任者の方が,防災対策について詳しいことは十分あり得ます。
4 死傷者情報の把握が不十分である
尼崎での脱線事故の際も問題になりましたが,死傷者がどこにいるのかを一元的に管理している人がいませんでした。したがって,被害者の家族は,病院を転々として初めて確認できるということになりました。
災害時は,交通網の寸断などにより,病院を転々とすること自体が困難になると思われます。また,個人情報保護法により,入院患者の氏名をすぐに明らかにしない病院なども出てくる可能性があります。
そこで,これらの情報を本部が一元的に管理し,本部に来れば死傷者の氏名や入院先が分かるようにします。もちろん,個人情報保護との調和は考える必要があります。
第2 避難場所のあり方について
1 広さと収容人口がアンバランス
これは,物理的にやむを得ない点があります。駅前には空き地が少なく,郊外には空き地が多いため,当然避難場所も郊外の方が大きくなります。
しかし,駅前もかなりの避難人口がいるわけですから,可能な限り彼らを収容する方法を検討しなければいけません。
2 避難用品がアンバランス
避難用の食料などが豊富にある避難場所と少ない(全くない)避難場所があります。一応,多くある避難場所から他の避難場所にこれらを配布するという想定になっていますが,実際,それが十分機能するかは疑問があります。
やはり,各避難場所にはそれなりの用品を備えるべきでしょう(もちろん,住民一人一人が平素から防災用品を備えておくべきであることはいうまでもありませんが。)。
3 避難場所担当者が職種別になっている
実際,避難場所に行く職員が,防災担当職員となっています。しかし,仕事中の災害であればまだしも,休日や夜間の災害の場合,そもそもその職員が避難場所に行ける保証がありません。
避難場所の担当者は,基本的にはその地域又は近隣に住む職員にするべきでしょう。
なお,他の市町村に住む職員については,大規模災害時には,一時的にその町の職員と共にそちらの市町村で災害対策の活動をするという協定を結んでおくと,なお良いかと思います。例えば,東久留米市の職員が西東京市に住んでいる場合,災害時には,西東京市で災害対策の活動を行うということにします。もちろん,逆もあります。
第3 想定外災害の対応について
1 道路が使えない場合の輸送ルートについて
地震では,道路の陥没などにより,交通網が寸断されることが想定されます。
そこで,各避難場所への非常食などの運搬ルートについては,複数想定しておく必要があります。
また,前述の避難所間での融通を円滑にするため,自動車以外での大量運搬方法も検討しておく必要があります。
例えば,リヤカーなどは,一見馬鹿にしてそうですが,道路の寸断でもある程度対応ができ,それなりに輸送力があるため,有用ではないでしょうか。
2 避難訓練に「想定外」の内容を加える
避難訓練は,地域防災計画通り行動できるかを確認する意味で,非常に重要なものといえます。
しかし,やはり何が起こるか分かりません。
そこで,どっきり企画というと不謹慎ですが,「想定外災害」を訓練時に加え,適切に行動できるかを確認することが大事でしょう。
そのためには,この想定外訓練の内容については,ごく一部の担当者以外は,例え市長であっても知らないで行うべきでしょう。
以上になります。とにかく必要なことは,迅速かつ適格に職員が行動できるか,住民一人一人が災害時の行動内容を把握して,混乱なく行動できるかが大切です。そう言う意味では,これは市役所任せではなく,私たちも熟知しなければならないでしょう。
皆様も,災害時の行動について,今一度確認,検討をされてみたらいかがでしょうか。
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