あれは,あれで良いのかなPART2

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ぼちぼち墓地の法整備も必要ですね

2009年02月23日 00時15分03秒 | 法律問題
大阪府内の霊園があいつで競売になり,結果,永代使用料を支払ったはずの墓地利用者に対し,落札者が使用料を再度請求するという事案が続出しているようです。

永代料払ろうたのに何でや!墓地競売、落札企業が再請求(読売新聞) - goo ニュース

これ,全国的な問題になるのは時間の問題かも

この問題,簡単そうで面倒な問題が結構あります。まず,どういうことなのか簡単にまとめてみます。

1 墓地の土地を所有して,墓地経営している宗教法人(お寺だと思ってください)は,墓地利用者(檀家さんだと思ってください)に対し,「うちにお墓作って良いよ。その代わり,使用料払ってね」というオファーを出します(もっとストレートに言うと,「お寺の和尚に対して,私が「お金払うからお墓作らせて」という,ってことです。)。
2 宗教法人は,使用料をもらう代わりに,墓地1区画の使用を認めます。この際,墓地はそうそう引っ越すものではないので,「ずーっとつかっていいよ」ということから永代使用料として墓地利用者は宗教法人に支払います(つまり,宗教法人と墓地利用者との間で契約が成立した,ってことになります。)。
3 これで普通にお墓が使用です。

この流れが普通のパターンでした。
ところが,宗教法人も不況の波には勝てず,経営が悪化するところが出てきました。そこで,銀行から借金をすることもやむなしという状況になるのですが,銀行は当然「担保」を求めてきます。ここからが悲劇の始まりです。
4 宗教法人は,担保として「墓地の土地」に抵当権を設定します。
5 しかし,どうにも資金繰りのめどが立たなくなり,ついに銀行にお金を返済できなくなりました。
6 すると,銀行は担保として押さえていた「墓地の土地」を裁判所に競売の申立をします。
7 裁判所は「墓地の土地」を売り,誰かが買います。
8 墓地の土地を買った人は,基本的には墓地の土地を自由に使うことができます。当然,「お墓を撤去する」こともできます
(もちろん,墓地の土地をマンションにするなどは制約があるので難しいですが。)。
9 さて,ここからですが,墓地の土地を買った人は,もともと墓地を利用していた人に「そのまま墓地使うなら,今度は私と使用についての契約を結びましょう。だからお金頂戴ね。いやなら,撤去するよ。」となるのです。これが今問題となっている部分なのです。

さて,ここに素朴な疑問が出てきた人がいるかもしれません。「あれ,私は賃貸マンションに住んでいて,なんか大家が競売で変わったっていう通知がきたけど,出ていけとか家賃増やすなんて言われなかったよ。」とか,「住んでる人は強いって弁護士から聞いたことがあるよ」などという話を耳にしたことがあるかもしれません。
そのとおり。実は,「住居用の土地や建物」については,「借地借家法」や「法定地上権」などの規定から,「地主や家主が変わっても,以前から住んでいる人にその影響を与えない」という手厚い保護規定があります。だから,競売になっても基本的には問題がないのです。
なぜ,手厚い保護規定があるのかというと,「住んでいる人に関係ない事情でホームレスになることはよろしくない」っていう理由によります。まあ,常識的に考えても分かるとは思います。
ところが,地は「住居」ではありません。したがって,借地借家法や法定地上権などの規定は一切適用されません。すると,原則に戻り,「土地の利用権原は所有者にある」っていうことになるのです。当然,前の所有者との契約は,あくまでも「前の所有者」に対してのみの効力しかありませんから,「こういう契約があるんだ」と新たな所有者に主張しても,「そんなの関係ねぇ,ハイ,オッパッピー,ピアー」と言われてしまうのです。
つまり,お寺と檀家との間の関係は,それ以外の人たちには一切影響しないので,永代使用料を払ったということを一生懸命説明しても,「だからそれが何?」ということになるのです。
こうなった場合,現状の法律では,理論上,お寺に対して「使用継続ができなくなったことを原因とする債務不履行による損害賠償」が請求できます。しかし,担保実行したということは,お寺にはお金がない訳ですから,実際はお金を取ることはできないでしょう。

このように,実は墓地についての法整備」がほとんどされていないのです。もっと言うと,「永代使用料」の法的性格も結構疑義があるほか,そもそも「墓地を利用している法的根拠」が過去の慣習に委ねられていることから結構不明確な場合も多いのです。ストレートに言うと,「賃貸借」なのか「使用貸借」なのか,はたまた無名契約であるのか分からないケースが多いのです。

「仏のことなのであいまいに」という気持ちは分かりますし,すべてのことに法的理屈をつけることはナンセンスだとは思います。しかし,宗教法人が破綻するという時代になった今,少なくとも「お寺がつぶれたらどうなるのだろう」っていう点については法整備を進める必要があるのではないでしょうか。さもないと,「自分に関係ない理由で先祖代々の墓がある日突然消えてなくなる」っていう事態に見舞われかねません。
そもそも「お寺がつぶれる」っていうこと自体,過去の慣習でも想定されていないでしょうし,廃寺の場合も,今までは「新たなお寺」への引継がちゃんとしていたので問題はなかったはずです。しかし,「リーマンの影響がお寺まで」となった以上,安心してお墓参りができるような法整備はもはや必須といえるでしょう。
お寺側から見ても,その方が経営しやすいのではないでしょうか。

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4 コメント

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墓地イラネ (滑稽本)
2009-02-23 10:47:56
という方向で整備すれば問題無し。


結局の所、今まで死んだ人全員の墓を建ててたら生きてる人が生活する地面が無くなるのが道理ですから、どこかで墓を統廃合してやってきたワケですよ。
鎌倉なんて、土地が無いですから庶民は死んだら海岸に捨ててたワケですし(でもって、海岸に地下駐車場を作ろうとして、骸骨の山を発掘)。


結局墓作って儲かるのは生臭坊主だけなんだから
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競売,来てもらいたくないです (ぴえる)
2009-02-23 12:13:26
こんにちは。
これからは,墓を建てるときにも,①墓地の登記簿を確認して担保権の存在の有無を確認する,②担保権の登記があったら,その寺の檀家から脱退し,別の安全な檀家,墓地を探す,③担保権がなかったら,墓地使用契約だけでなく,土地賃借権登記もさせた上で契約する…といったことも考えなければなりませんね。
でも,みんなそんな賃借権登記を付けられて競売に出されたら,物明書く書記官はたいへんそうですな…
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滑稽本さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2009-02-24 00:27:43
こんばんは。
都心では,マンション型墓地まで誕生していますね。
さてさて,ちゃんとしたお寺だと,永代使用料を払った以上,しっかりと管理し,供養をしていますが(うちの菩提寺は一応ちゃんとやってくれてます。),一部どう考えてもむむむ?なところもありますよね。
まあ,一方で,地球環境のことを考えると,アンデスのような「鳥葬」もありなんだろうなあ,って思ったりします。
返信する
ぴえるさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2009-02-24 00:30:24
こんばんは。
墓地を買うのに登記簿を確認する,なんていうことを今まで考えた人はいないでしょうね。なんか,それだけでも罰が当たりそうな感じがします。
とはいえ,現行の法整備を前提とすると,本当に登記簿を定期的に確認したり,宗教法人の出納報告書を定期的にチェックするなどを怠ってはならないのかもしれません。
なんか,「うっとうしい世の中」になってしまいそうですね。
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