東京都日野市にある八王子自動車教習所が10月31日破産申立を東京地裁にし,事実上倒産しました。前日には従業員,教官らも解雇通告されたほか,11月3日には受講生約1700人に対し,債権者説明会を開催し,受講料返金についての説明をしました。しかし,全額返金は事実上難しい見込みです。
八王子自動車教習所が倒産 東京(産経新聞) - goo ニュース
学校の債権者と一般企業の債権者は同列かなあ??
先日,海外留学をあっせんしている企業も倒産し,債権者集会では予想どおり怒号が飛び交ってしました。また,今日の教習所の債権者集会においてもかなり激しい罵声を浴びせられていました。さらには,大手英会話学校も破産し,生徒が路頭に迷うなどということがあったことも記憶に新しいと思います。
そりゃあそうだと思います。学生側にしてみたら,学校選びの際に学校の資金力,経営能力まで調べ上げて入学する人は少なく,通常は「カリキュラム」「教育方針」「教員の質」「学費」など,教育効果を踏まえて選ぶからです。また,教習所に至っては,八王子周辺はまだしも,少し田舎に行けば「周辺に1件」しかないわけで,選択の自由すらないという現状もあります。
一方で,学生は学費を払えば,その対価として授業を受けるので,学校から見たら立派な「債権者」となります。
そして,現行破産法では,債権には「優先」「一般」「劣後」とありますが,優先債権は被担保債権や従業員の生活維持のために認められた給与債権などであり,学生の授業を受ける債権は一般債権にすぎません。当然,他の学校に自動的に振り返るという規定は破産法にはなく,あとは同業者間での紳士協定になっている場合が多いです。
確かに,一般論として,破産した以上,債権者に優劣をつけるのは相当ではありません。また,従業員もある面では立派な被害者でもあるわけですから,「従業員に1円たりとも払うな」というのも乱暴な議論です(逆の立場になって考えてみれば理解しやすいでしょう。)。
ただ,ジャンルは問わずおよそ学校における学生については,前述のとおり,通常の取引業者とは異なった発想で学校選び,つまり取引先選びを行っているため,単純に自己責任論でしかたないと切り捨てるのはいかがなものかと思います。まして,通常の取引業者であれば,相手の経営が怪しいと思えば,取引を辞めたりとか,担保を取ってみたりとか,取引単価を上げてみたり等という防衛策を講じることもできます。しかし,学生にはそのような手だては全くありません。そうすると,なおのこと,一般債権者同様の責任を取らせるのはどうなのでしょうか。
といいながら,一方で受講料返還というのは,現実的に不可能です。それだけのキャッシュフローがあれば,倒産はしないからです。
学生側からすれば,「とにかく授業が受けられればよい」というところがすべてでしょう。そうであれば,振替授業が受けられるようなシステムを構築する必要があります。これは,破産法で規定しても難しいので,業界ルールをはっきりと明文化することで対処するしかありません。当然,受講期限などは若干猶予をすることや,教材費程度の追加徴収はあり,ということももめないように明確にするべきです。
もちろん,その学校が当初予定していたカリキュラムや教育方針を維持できない可能性がありますが,最低限,受けるべき内容を受けられれば御の字のはずです。この程度のリスクは甘受してもよいでしょう。授業もなし,返金もなしよりはましのはずです。
学校の延命も選択肢として考えられますが,給料もでないで学生が卒業までの数ヶ月間教えてくれるような教官はいないでしょう。彼らだって,自分の生活のために新たな仕事を探さなければならないわけですから。
いずれにせよ,これから学校倒産時代は本格的にやってきます。いずれは,私立高校や大学などだって倒産する可能性があります(短大が倒産した,っていうこともありましたね。)。英会話学校や教習所であればまだどうにかなるかもしれませんが,高校や大学では学生の一生に関わる話になります。こうした点も踏まえ,学校破産時対応を考える必要があります。
そこで問題です。これを考えるのはどこの省庁でしょうか?
1 破産法などを主管する法務省
2 学校関係を主管する文部科学省
3 各種学校を主管する経済産業省
4 保育園を主管する厚生労働省
5 消費者保護を主管する消費者庁
6 とりあえず総務省
正解は・・・分かりません!!当然,国会も全部が別委員会ですから,国会議員も場合によっては他人事になります。
したがって,ちゃんとした旗振り役がいなければ,この話,永久に先に進みません。同じような「可哀想な学生」が町中にあふれかえるだけです。選挙公約には弱いですが,旗振り役を買って出る議員が出てくるでしょうか?
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TB先一覧
http://uesama.antena.ne.jp/archives/article/50328.html
八王子自動車教習所が倒産 東京(産経新聞) - goo ニュース
学校の債権者と一般企業の債権者は同列かなあ??
先日,海外留学をあっせんしている企業も倒産し,債権者集会では予想どおり怒号が飛び交ってしました。また,今日の教習所の債権者集会においてもかなり激しい罵声を浴びせられていました。さらには,大手英会話学校も破産し,生徒が路頭に迷うなどということがあったことも記憶に新しいと思います。
そりゃあそうだと思います。学生側にしてみたら,学校選びの際に学校の資金力,経営能力まで調べ上げて入学する人は少なく,通常は「カリキュラム」「教育方針」「教員の質」「学費」など,教育効果を踏まえて選ぶからです。また,教習所に至っては,八王子周辺はまだしも,少し田舎に行けば「周辺に1件」しかないわけで,選択の自由すらないという現状もあります。
一方で,学生は学費を払えば,その対価として授業を受けるので,学校から見たら立派な「債権者」となります。
そして,現行破産法では,債権には「優先」「一般」「劣後」とありますが,優先債権は被担保債権や従業員の生活維持のために認められた給与債権などであり,学生の授業を受ける債権は一般債権にすぎません。当然,他の学校に自動的に振り返るという規定は破産法にはなく,あとは同業者間での紳士協定になっている場合が多いです。
確かに,一般論として,破産した以上,債権者に優劣をつけるのは相当ではありません。また,従業員もある面では立派な被害者でもあるわけですから,「従業員に1円たりとも払うな」というのも乱暴な議論です(逆の立場になって考えてみれば理解しやすいでしょう。)。
ただ,ジャンルは問わずおよそ学校における学生については,前述のとおり,通常の取引業者とは異なった発想で学校選び,つまり取引先選びを行っているため,単純に自己責任論でしかたないと切り捨てるのはいかがなものかと思います。まして,通常の取引業者であれば,相手の経営が怪しいと思えば,取引を辞めたりとか,担保を取ってみたりとか,取引単価を上げてみたり等という防衛策を講じることもできます。しかし,学生にはそのような手だては全くありません。そうすると,なおのこと,一般債権者同様の責任を取らせるのはどうなのでしょうか。
といいながら,一方で受講料返還というのは,現実的に不可能です。それだけのキャッシュフローがあれば,倒産はしないからです。
学生側からすれば,「とにかく授業が受けられればよい」というところがすべてでしょう。そうであれば,振替授業が受けられるようなシステムを構築する必要があります。これは,破産法で規定しても難しいので,業界ルールをはっきりと明文化することで対処するしかありません。当然,受講期限などは若干猶予をすることや,教材費程度の追加徴収はあり,ということももめないように明確にするべきです。
もちろん,その学校が当初予定していたカリキュラムや教育方針を維持できない可能性がありますが,最低限,受けるべき内容を受けられれば御の字のはずです。この程度のリスクは甘受してもよいでしょう。授業もなし,返金もなしよりはましのはずです。
学校の延命も選択肢として考えられますが,給料もでないで学生が卒業までの数ヶ月間教えてくれるような教官はいないでしょう。彼らだって,自分の生活のために新たな仕事を探さなければならないわけですから。
いずれにせよ,これから学校倒産時代は本格的にやってきます。いずれは,私立高校や大学などだって倒産する可能性があります(短大が倒産した,っていうこともありましたね。)。英会話学校や教習所であればまだどうにかなるかもしれませんが,高校や大学では学生の一生に関わる話になります。こうした点も踏まえ,学校破産時対応を考える必要があります。
そこで問題です。これを考えるのはどこの省庁でしょうか?
1 破産法などを主管する法務省
2 学校関係を主管する文部科学省
3 各種学校を主管する経済産業省
4 保育園を主管する厚生労働省
5 消費者保護を主管する消費者庁
6 とりあえず総務省
正解は・・・分かりません!!当然,国会も全部が別委員会ですから,国会議員も場合によっては他人事になります。
したがって,ちゃんとした旗振り役がいなければ,この話,永久に先に進みません。同じような「可哀想な学生」が町中にあふれかえるだけです。選挙公約には弱いですが,旗振り役を買って出る議員が出てくるでしょうか?
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自動車教習所の「公認」は,あくまでも「実地試験免除」っていうだけで,「東京都とかが経営内容についてお墨付きを与えた」っていう意味ではないんですよね。
似たようなものに,「認可保育園」と「無認可保育園」っていうものがあります。活字だけ見ると,「無認可って怪しそう」っていうイメージがありますが,実際はそういう意味ではなく,単に「法律上の要件を満たしているかどうか」だけの違いなのです。
言葉にだまされちゃいけないよ,っていうことですね。
あの「東京都公認」というのは、
経営もとか内容も、都がお墨付きで“公認”かと、
勘違いしました。
免許の実地試験が、免除されるだけなんですね
この教習所,人集めの一環として,リムジン送迎や,外車教習などを行い,それがメディアに紹介されていた,っていう経緯もあるみたいですね。
ニュース放送で流すことも,宣伝になる一面がありますから,逆に視聴者側としても,「ニュースで紹介されたから問題ないだろう」と鵜呑みにしないことも大切なのかもしれませんね。
とはいえ,それはなかなか難しいでしょうが・・。
さてさて,この問題,確かに英会話学校を中心に問題となった,「一括支払方式」を「単価払い方式」に変えれば,授業料返還問題自体は回避できそうです。ただ,当然のリスクとして,総額は今より高くなるでしょう。
ただ,学生が求めるのは,「知識」であり,「資格」であるといえます。とすると,「授業債権」(仮称)については,非金銭的債権とも言えるわけですから,これを担保できる手だてが必要なわけです。授業料単価方式の場合,逆に言うと,「倒産したらすぐに見捨てます」となりかねず,特に高校や大学だと,偉い騒ぎになってしまいます(もっとも,この辺は別途法律で保護されているらしいですが。)。
いずれにせよ,学習塾もつぶれたりしているので,いくつかの手だてをちゃんと考える必要がありそうだなあ,って思ったりします(ロダンの地獄の門汗)。
ん~、問題は、授業料先払のシステム(契約)にもあるように感じますね。
労働債権は法定の(一般)先取特権なのでアレですけれども、債権自体は物権とは異なり原則として公示方法がありませんから、現状の”債権者平等の原則”からするといろいろ難題が残るような気がしますね(難題汗)
おかにゃんさんの案(業界に依る?”振替授業が受けられるようなシステム”)も一つの案ですが、むしろそうした一括先払契約ではなく、”同時履行の抗弁権”を以ってする、授業単位毎にその代金を支払う契約様式を業界に求めた方が、純然たる債務不履行リスクは低くなる可能性があります(リスキーな汗)
尤も債務者(学校)側からすれば、授業単位毎の支払契約は、設備投資に比して経営リスクが大きいといった反作用もあるでしょうから、経営責任と言う点で衡平を図るべきところかもしれません(衡平汗)
加えて本件のような、資格に関わるものでそれまで受けた授業の業界内での共用(転用)制度も、業界内あるいは法制度の整備において必要でしょうか。まぁそれが担保されなければ、債権者リスク(本件では教習生が”授業を受ける”という債権)は五十歩百歩かもしれません。ただ少なくとも将来における債務不履行を回避する余地はあるかと考えます(リスクヘッジ汗)