テレビ朝日「サタデースクランブル」で,夕張市の問題を取り上げていました。
そこでは,観光都市とするために多額の税金を費やして様々な「無駄施設」を建設したことがけしからんという論調で報じており,夕張市の政策の甘さを指摘していました。
livedoor ニュース
本当に夕張市だけの責任かなあ?
番組を見終わった感想でした。
もちろん,夕張市が無責任であるとは全く思いません。ただ,番組の中でちょろっとだけ触れていた「これらの施設は補助金で作られた」という点,ここが実はこの問題の肝なのです。しかし,残念ながら,この点についてメスは全く入れられていませんでした。
夕張市の場合,炭鉱が閉鎖したこと及びそれに伴う人口減少によって,急激な財政難に陥ってきました。そこで,この場合の対応として,国や北海道が「各種事業に対する大規模な補助金交付」と「特別地方交付税」によって,市に対し,新たな産業支援及び財政支援を行っていました。
それを踏まえて(なのか,それとも押しつけられたのかは不明ですが),夕張市は「これからは観光だなあ」ということで,観光拠点を整備するために様々な施設を整備した,という構造になっています。
したがって,まず第1に注意しておくべきことは,「無駄施設と報じられた施設の多くは,実は市独自のお金は思っているほど投入されていない」ということです。
また,この補助金,実に面倒なものです。簡単に言ってしまうと,「使わなければいけない」お金なのです。
したがって,例えば,夕張市が1億円の施設を作りたいと思っていたとしても,国からの補助金が2億円出るという制度になっていた場合は,2億円以上のもの(普通は半額補助という場合が多いから,この例では4億円)を作らなければいけないのです。まして,補助金を余らせて返還するなんてもってのほか,そんなことをした日には,「おめーに渡す補助金はねー!」と次長課長の河本のように国や北海道から言われてしまい,今後の補助金は大幅に削られてしまいます。
つまり,補助金を使う事業の場合,「絶対に補助金を使い切る」ということが制度上求められているのです。
そして,もちろん,この補助金,原資は税金ですが,もとを正すと夕張市民以外の税金がかなりを占めていることになります。
夕張市に限りませんが,このような国の「補助金行政」,これが財政を圧迫している要素の一つといえます。
次に,市の借金がふくれた事情として,補助金を利用できない事業については,市債により事業を行っていたが,その返済として「地方交付税交付金」が利用されていたため,市は「わずかな負担で大丈夫」と思いこんでしまっていた点にあります。
すなわち,観光施設建設事業については,すべてが国庫補助の対象になるわけではありませんから,ある程度は市単独事業として整備せざるを得ないことになります。ところが,当然夕張市に限らずすべての市町村ではそんなお金を持っているわけありません。したがって,金を借りる(市債発行)ということになります。
ところが,バブル期には国の「地方の借金じゃぶじゃぶ政策」によって,市町村の大きなプロジェクトに対して,75%の借金を可能とし,その返済原資として半分近くまでは交付税を投入することとしたのです。
そうすると,例えば,1億円の事業を行った場合,その年の市の持ち出し金は2500万円となり,残り7500万円は20年くらいかけて返済するため,1年あたり375万円の返済額になります。そして,その半分が交付税とすれば,市の負担は1年あたり188万円+金利となります。
おお,こりゃ便利だ,と思っていろんな事業を手がけてしまったことになりますが,ちりも積もればなんとやらで,あるところで「あれ,借金多いなあ」ということになってしまったわけです。こうなると,いわゆる多重債務者と構造は同じです。
しかし,こうならないように,この制度を使うためには,必ず北海道が間に入り調整を行います。北海道は,「借りすぎに注意しましょう」と警告を発する責任があり,場合によっては,制度の適用を見送らせるくらいの指導権を持っていたはずなのです。
ところが,北海道がそこまで強権に出たということはなかったようで,むしろ逆に「じゃぶじゃぶ借りましょう」的な指導をしていたようです。
とすると,多重債務者となった夕張市を後押ししていたのは,実は北海道だ,ということになるでしょう。
さらに,炭鉱閉山に伴う特別交付税等も減額されてきているため,税収の減額と相まって,収入も激減してしまいました。そして,それを補うための減税補填債の返済が増加してきました。その点も財政破たんの大きな要因であったといえます。
もちろん,「観光都市」を看板に,今後のしっかりした検証をすることなく事業を計画した夕張市に責任があることは言うまでもありません。まして,財政破たんを隠すために,決算までごまかしていたという点に弁解の余地はないでしょう。
しかし,夕張市の財政破たんは,防ごうと思えば防げたところ,現行の財政制度によって逆に国や北海道が夕張市の財政破たんを後押ししてしまった,いやむしろ財政破たんの主犯格であるともいえるのです。
現在のところ,国も北海道も,そして各マスコミも,みんな「悪いのは夕張市1人だけ」というスタンスで臨んでいます。しかし,本当にそうなのでしょうか。
私は,以上のとおり「夕張市を破綻に追い込んだのは,国の制度と政策,そして北海道の国から市町村へのスルーパス政策の姿勢」に大きな問題があったと考えます。
そして,もっというと,今後破たんする市町村は確実に増えます。また,国の14兆円財政削減を検討していると言いますが,今のような補助金行政自体を見直さない限り,根本的な無駄遣いを減らすことは不可能です。
補助金行政や公共事業自体を悪いとはいいません。夕張市だって,うまく活用できれば,むしろ町の復興になったかもしれません。
しかし,夕張市は現在の制度によって破綻に追い込まれたといえます。
第2,第3の夕張市が発生しないよう,国や都道府県は,「そもそも論」の部分をしっかり見直すべきでしょう。
そう言う意味では,このテレビ朝日の番組,ちょっとつっこみが弱かったし,見方によっては,政府広報状態だったなあ,と思い,ちょっとばかり残念でした。ただ,どこもボーナス問題ばかりに終始している中,多少切り込んだ点は評価できる番組でした。
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http://ameblo.jp/takeyan/entry-10014446366.html
そこでは,観光都市とするために多額の税金を費やして様々な「無駄施設」を建設したことがけしからんという論調で報じており,夕張市の政策の甘さを指摘していました。
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本当に夕張市だけの責任かなあ?
番組を見終わった感想でした。
もちろん,夕張市が無責任であるとは全く思いません。ただ,番組の中でちょろっとだけ触れていた「これらの施設は補助金で作られた」という点,ここが実はこの問題の肝なのです。しかし,残念ながら,この点についてメスは全く入れられていませんでした。
夕張市の場合,炭鉱が閉鎖したこと及びそれに伴う人口減少によって,急激な財政難に陥ってきました。そこで,この場合の対応として,国や北海道が「各種事業に対する大規模な補助金交付」と「特別地方交付税」によって,市に対し,新たな産業支援及び財政支援を行っていました。
それを踏まえて(なのか,それとも押しつけられたのかは不明ですが),夕張市は「これからは観光だなあ」ということで,観光拠点を整備するために様々な施設を整備した,という構造になっています。
したがって,まず第1に注意しておくべきことは,「無駄施設と報じられた施設の多くは,実は市独自のお金は思っているほど投入されていない」ということです。
また,この補助金,実に面倒なものです。簡単に言ってしまうと,「使わなければいけない」お金なのです。
したがって,例えば,夕張市が1億円の施設を作りたいと思っていたとしても,国からの補助金が2億円出るという制度になっていた場合は,2億円以上のもの(普通は半額補助という場合が多いから,この例では4億円)を作らなければいけないのです。まして,補助金を余らせて返還するなんてもってのほか,そんなことをした日には,「おめーに渡す補助金はねー!」と次長課長の河本のように国や北海道から言われてしまい,今後の補助金は大幅に削られてしまいます。
つまり,補助金を使う事業の場合,「絶対に補助金を使い切る」ということが制度上求められているのです。
そして,もちろん,この補助金,原資は税金ですが,もとを正すと夕張市民以外の税金がかなりを占めていることになります。
夕張市に限りませんが,このような国の「補助金行政」,これが財政を圧迫している要素の一つといえます。
次に,市の借金がふくれた事情として,補助金を利用できない事業については,市債により事業を行っていたが,その返済として「地方交付税交付金」が利用されていたため,市は「わずかな負担で大丈夫」と思いこんでしまっていた点にあります。
すなわち,観光施設建設事業については,すべてが国庫補助の対象になるわけではありませんから,ある程度は市単独事業として整備せざるを得ないことになります。ところが,当然夕張市に限らずすべての市町村ではそんなお金を持っているわけありません。したがって,金を借りる(市債発行)ということになります。
ところが,バブル期には国の「地方の借金じゃぶじゃぶ政策」によって,市町村の大きなプロジェクトに対して,75%の借金を可能とし,その返済原資として半分近くまでは交付税を投入することとしたのです。
そうすると,例えば,1億円の事業を行った場合,その年の市の持ち出し金は2500万円となり,残り7500万円は20年くらいかけて返済するため,1年あたり375万円の返済額になります。そして,その半分が交付税とすれば,市の負担は1年あたり188万円+金利となります。
おお,こりゃ便利だ,と思っていろんな事業を手がけてしまったことになりますが,ちりも積もればなんとやらで,あるところで「あれ,借金多いなあ」ということになってしまったわけです。こうなると,いわゆる多重債務者と構造は同じです。
しかし,こうならないように,この制度を使うためには,必ず北海道が間に入り調整を行います。北海道は,「借りすぎに注意しましょう」と警告を発する責任があり,場合によっては,制度の適用を見送らせるくらいの指導権を持っていたはずなのです。
ところが,北海道がそこまで強権に出たということはなかったようで,むしろ逆に「じゃぶじゃぶ借りましょう」的な指導をしていたようです。
とすると,多重債務者となった夕張市を後押ししていたのは,実は北海道だ,ということになるでしょう。
さらに,炭鉱閉山に伴う特別交付税等も減額されてきているため,税収の減額と相まって,収入も激減してしまいました。そして,それを補うための減税補填債の返済が増加してきました。その点も財政破たんの大きな要因であったといえます。
もちろん,「観光都市」を看板に,今後のしっかりした検証をすることなく事業を計画した夕張市に責任があることは言うまでもありません。まして,財政破たんを隠すために,決算までごまかしていたという点に弁解の余地はないでしょう。
しかし,夕張市の財政破たんは,防ごうと思えば防げたところ,現行の財政制度によって逆に国や北海道が夕張市の財政破たんを後押ししてしまった,いやむしろ財政破たんの主犯格であるともいえるのです。
現在のところ,国も北海道も,そして各マスコミも,みんな「悪いのは夕張市1人だけ」というスタンスで臨んでいます。しかし,本当にそうなのでしょうか。
私は,以上のとおり「夕張市を破綻に追い込んだのは,国の制度と政策,そして北海道の国から市町村へのスルーパス政策の姿勢」に大きな問題があったと考えます。
そして,もっというと,今後破たんする市町村は確実に増えます。また,国の14兆円財政削減を検討していると言いますが,今のような補助金行政自体を見直さない限り,根本的な無駄遣いを減らすことは不可能です。
補助金行政や公共事業自体を悪いとはいいません。夕張市だって,うまく活用できれば,むしろ町の復興になったかもしれません。
しかし,夕張市は現在の制度によって破綻に追い込まれたといえます。
第2,第3の夕張市が発生しないよう,国や都道府県は,「そもそも論」の部分をしっかり見直すべきでしょう。
そう言う意味では,このテレビ朝日の番組,ちょっとつっこみが弱かったし,見方によっては,政府広報状態だったなあ,と思い,ちょっとばかり残念でした。ただ,どこもボーナス問題ばかりに終始している中,多少切り込んだ点は評価できる番組でした。
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